私立中高進学通信
2020年11月号
実践!未来の学び「SSHと探究学習」
芝浦工業大学柏中学校
SSH実績を探究学習へ
ICTによる協働でさらに進化
Googleのツールを使ってWebサイトの作り方を生徒相手にプレゼンテーションする中3生。
日頃の学習の中で、説明する力、プレゼンを構成する力を磨いています。
課題研究や探究学習に
取り組むSSH指定校
2018年度より、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)(※1)の指定を受けている同校。SSHへの指定は、今回で2度目です。1度目は2004年度から5年間。この指定の際には、理数の課外講座や課題研究、高大連携、先取り教育を実施。これらの取り組みは現在『芝浦サイエンスクラス』として授業や課外講座に引き継がれ、同校ならではの教育活動として定着しています。
さまざまな教科において、課題研究や探究学習を行うことが当たり前となっている同校では、生徒が積極的かつ主体的に取り組めるよう、中1から準備を始めています。日頃の授業からレポートを書いたり、実験で確かめたりする機会を多く設け、文化祭では中学生全員がテーマごとにプレゼンテーションを行います。夏の自由研究の優秀作品は、1日かけて一般公開で実施される生徒探究発表会で発表します。
「レポート作成などを繰り返すなかで、興味を持って学ぶ姿勢が身につき、探究する力を養っていきます。自由研究としてプログラミングを提出するなど、教科の枠に縛られない研究をする生徒もいます。
芽生えた探究意欲を引き出すよう、できるだけ各教員が得意分野を活かしてサポートしています。“楽しそう” “面白そう”と気持ちが動いて研究に夢中になるところが中学生の良さです」(理科/辻󠄀奈美恵先生)
※1 SSH(スーパーサイエンスハイスクール)…文部科学省が指定する理数教育研究校。
Googleのサービスで
学びの協働が進化
中2からは探究学習の一環として生徒全員が「全国中学高校Webコンテスト」に参加。Web制作のノウハウや情報活用力が身につくだけでなく、問いを見つける力を養い、仲間と協働して一つのものを作り上げる経験を積む、またとない機会になっています。
高校に進むと、探究学習はより本格的になります。生徒それぞれが自ら決めたテーマを研究し、その成果を生徒探究発表会で、ポスターセッションやプレゼンテーションとして発表します。テーマは理系にとどまらず人文・社会科学分野まで幅広く、研究は外部の発表会でも行います。また、大学や企業と連携する特別講座も幅広く企画されています。
こうした活動を支えているのが、中学開校以来となる、1人1台コンピュータを使うICT教育です。2018年からはGoogleのサービス『G Suite』(※2)を導入し、授業や探究学習で大いに活用しています。G Suiteによって情報共有がよりスムーズになり、研究成果を出すまでのスピードや質も、ぐっと上がったそうです。
また、現在の中2生以上はWin-dows OSのノートパソコンを使用していますが、今年入学した中1生からは、Googleのサービスと親和性の高いChromebookに切り替えました。手書き入力にも対応するため、さらなる活用が期待されます。
生徒全員が探究活動に取り組む同校の6年間は中学時代から積み重ねてきた、自らテーマを設定し学ぶ力、仲間と協働して刺激を受ける環境を活かして、オリジナリティあふれる研究を生み出し続けています。
※2 G Suite…Google Meet、Google Chatなどが使える、Google社が提供するクラウド型グループウェアサービス。さまざまなツールを内包している。
プリントもノートもこれ1台
「1人1台のChromebook」
1人1台のノートPCを所有している同校では、コロナ禍による休校期間中、全学年が通常のカリキュラムを変更することなく、スムーズにオンライン授業へと移行。新中1生には、4月の登校日にChromebookを一人ひとりに配付し、自宅に持ち帰ってもらいました。
通常の授業でも、パソコンで授業のノートを取る、紙のノートに書く、どちらのやり方も認めています。生徒のやりやすい方法を選択できるのが同校の方針なのです。
中1の数学の授業では、クラウド学習支援サービス「school Takt(スクールタクト)」(※3)を活用して、クラス全員の問題の解き方を共有することで理解を深めています。英語の授業では「Google ドキュメント」(※4)を使って、問題や例文に取り組み、生徒はキーボードで解答を入力するなど、Chromebookを大いに役立てています。プリント配付やノート提出もできることから、生徒の学びがこれ一つで完結するようになりました。
「教科書や副教材、ノートなど紙媒体を持つ必要がなくなって、中学生の荷物がとても軽くなり、身体への負担も減りました」(芝辻󠄀先生)
※3 school Takt(スクールタクト)…共有機能を備えた、Webブラウザを使った協働学習・アクティブラーニングのための教育システム。
※4 Google ドキュメント…G Suiteのツールの1つで、クラウド上に文書を保存し、簡単にクラスで共有したり編集を加えたりできるWebサービス。
伝えたいテーマを探究し発信する
「Webコンテスト」
中2から、生徒全員が「全国中学高校Webコンテスト」に参加。グループで探究したいテーマを決めて情報を集め、どのように表現すれば情報をアピールできるかを練り上げていきます。
このコンテストの目的は、誰かの役に立つ「教材」としてWebサイトを作ることです。スタイリッシュな見た目よりも、伝える立場に立って、何をどう表現したらよいかを徹底的に考える訓練になります。
同校はこの大会の20年来の常連校として知られています。とくに中学生は大活躍で、2018年度、2019年度と2年連続で最優秀賞・文部科学大臣賞・プラチナ賞を受賞しています。
最優秀賞・文部科学大臣賞・プラチナ賞を受賞した作品。
「LGBT~個性を尊重しあえる社会~」(2018年度、第21回大会)と、
「発酵半端ないって!!」(2019年度、第22回大会)
SSHを発展!
SSHから広がる
「理数プロジェクトへの参加」
SSHの指定校として認定されると、他のSSH指定校と連携した研究活動や発表会、海外の理数重点校との交流など、理数教育を軸に多彩な交流が広がります。
同校ではこれをさらに発展させ、生徒が主体的に参加できるオリジナルプログラムを実施。ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章先生の特別講演や、芝浦工業大学との高大連携、PCR法実験講座など内容も多彩です。企業が開催するプロジェクトに参加し、先進の技術に触れる交流も実現しています。
先生からの一言
新しい学び「協働」ができる生徒に
芝辻󠄀 正 先生
G Suiteやクラウド型の学習支援ツールのメリットは、情報を大勢で共有し協働できる点にあります。今、生徒たちは、グループ全員が「Google スライド」(※5)にログインして、互いの意見を取り入れながらプレゼンテーションのスライドを作成するようになりました。意見がすぐに反映できるので仕上がりも速くなります。1学期の休校中、高校生はグループごとにオンラインで集まり、テーマ設定や文献研究、担当教員とのディスカッションを行っていました。今後は他の授業や活動に、この共有機能を活用し、より質の高いものにしていきたいです。
※5 Google スライド…G Suiteのツールの1つ。Web上で共有しながらパワーポイントのようなプレゼンテーション資料が作成できるWebアプリ。
(この記事は『私立中高進学通信2020年11月号』に掲載しました。)
芝浦工業大学柏中学校
〒277-0033 千葉県柏市増尾700
TEL:04-7174-3100
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