私立中高進学通信
2020年11月号
実践!未来の学び「思考と表現」
トキワ松学園中学校
探究学習『思考と表現』で
論理的思考力と表現力を修得
中1と高1では、それぞれ週1時間図書室での探究学習『思考と表現』の授業があります。
『VTS』の授業では、絵画をじっくり鑑賞し、議論を重ねながら読み解くことで、思考力と表現力を育みます。
司書教諭による探究学習で
学習の土台を作る
グローバルな視点を持ち、多様な価値観を持つ人々と共に未来の社会を創造する『探究女子』の育成をめざしている同校。そのために力を入れているのが、「思考力」「国際力」「美」を育む授業です。なかでも特徴的なのが、2017年度からスタートしたオリジナル授業『思考と表現』。中1と高1を対象に、専任の司書教諭2名が週1時間、チームティーチング形式で授業を担当しています。
「本校では、数十年にわたって図書室を使った探究学習に積極的に取り組んできました。国語や社会科だけでなく、美術や英語、家庭科で図書室を使うこともあります。私たち司書教諭は、各教科の授業をサポートしているので、何年生がどの教科でどのような探究学習をするのか全体を把握しています。
そのようななかで、論理的思考力や表現力を高めるために新たな授業『思考と表現』を始めることになり、探究学習のノウハウを持つ司書教諭が、授業を受け持つことになりました」(司書教諭/勝見浩代先生)
絵画鑑賞と対話を通じて
互いの考えを理解する
『思考と表現』の授業では「新聞について知ろう」「人気ランキング下位の都道府県の魅力を探そう」などテーマを決めて調べ学習を行い、考えを深め、意見を共有しています。なかでも注目は、ニューヨーク近代美術館が開発した教育プログラム「VTS(Visual Think-ing Strategies)」です。絵画を鑑賞し、絵の中で何が起こっているのかを述べ合い、対話を通じて作品を読み解いていく授業です。常に絵の中に根拠を求めて発言するよう促し、感じたことを論理的に考え、表現する力を養います。
「絵から感じたことを言葉で表現するのは、大人でも難しいことです。生徒たちは自分で言葉を探し、懸命に考えを伝えようとします。生徒の意見を否定することはないので、『自分の考えをわかってもらえた』という成功体験につながりますし、他の人の意見を聞くことで生徒間の理解も得られ、鑑賞も深まります。視野が開ける感覚、感性が豊かになる喜びを感じるようで、授業を終えた生徒たちは輝いた顔を見せてくれます」(司書教諭/小澤慶子先生)
中1・高1の『思考と表現』で論理的思考力の基礎を築いた後、それ以降の学年では各教科の中でさらに発展した探究学習を行います。こうした学びを通じ、未来を創る力を育てています。
「女性の人生には、さまざまな分岐点があります。この授業で確かな思考力、表現力を養い自分自身で進む道を選び、社会課題を解決できるようになってほしいと考えています」(勝見先生)
論理的思考力と表現力を育む
ココに注目!
探究学習『思考と表現』
『思考と表現』では、ビブリオバトル(※)、新聞の社説要約、VTSなど、さまざまな取り組みを通じて論理的思考力・調べるスキル・表現力を育てています。
「大切なのは、楽しむことです。楽しく学んだことは定着率が高いので、難しい課題を設定しつつも、楽しさも伴うように工夫しています」(勝見先生)
授業の最後には、感想や新たに気付いたことを短い文章にまとめます。読書感想文を書く機会も多く、司書教諭と何度もやりとりしながら、ブラッシュアップしていくそうです。
「生徒たちには、どんなに拙くても自分の言葉で書くように伝えています。大切なのは、何かに頼るのではなく、自力で自分の中からわき出た考えを言語化することです。徹底して指導し続けた結果、生徒たちも書くことに抵抗がなくなったようです」(小澤先生)
大学受験での推薦の自己PR文も、『思考と表現』導入後は完成度が高くなったという声を学年の教員からも聞くそうです。
※ビブリオバトル…数人の発表者がおすすめの本を5分間で発表し、その後質問に答えます。すべての発表後に「一番読みたいと思った本」を多数決で決める書評合戦。
VTS(Visual Thinking Strategies)
1分間ほど絵画を鑑賞したあと、何が描かれているか、何を感じたか語り合います。
司書教諭がファシリテーターとなり、生徒の意見を否定することなく、
より考えを深める問いを投げかけたり、適切な言葉に言い換えたりして表現力を高めていきます。
都道府県の魅力をアピールしよう
都道府県の認知度についてインターネットや本を使って調べて魅力を紹介し、
その場所に行きたくなるようアピールするグループワーク。
パワーポイントを使って発表するだけでなく、演劇を取り入れるなど発表の工夫にも生徒たちの個性が表れます。
新聞について知ろう
調べる力を養うため、新聞の読み方を指導します。
新聞の読み方の基本を理解したあと、各紙の記事を比較したり、社説を要約したりする授業を行います。
生徒からの一言
自分と違う意見を聞くことで新たな発見も
この『思考と表現』は、グループでの調べ学習が多く、プレゼンテーションの機会も豊富です。読書感想文を書くことも多いため、文章力や表現力が身につき、レポートのまとめ方も上達しました。
「VTS」で絵画について意見を述べたことも印象に残っています。絵の作者は何を伝えたかったのか、正解がない中で、みんなで話しながらイメージを膨らませていきました。自分とは違う意見も多く、新たな気付きもたくさんありました。
こうした経験は、その後も活かされています。理科の授業で惑星について2~3人で調べた時には、限られた時間の中で効率よく資料を読み込み、基本情報から豆知識までうまくまとめて発表できました。人前で話すことは苦手でしたが、授業を通じて慣れることができ、今では緊張せずに自分の意見を述べられるようになりました。自分でも昨年より成長していることを実感しています。
(この記事は『私立中高進学通信2020年11月号』に掲載しました。)
トキワ松学園中学校
〒152-0003 東京都目黒区碑文谷4-17-16
TEL:03-3713-8161
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