私立中高進学通信
2020年11月号
実践!未来の学び「新授業導入」
成城中学校
伝統ある学校だからできる
人間力を育む多彩な教育
高1の「英語表現」の授業では、ライティングに力を入れて指導しています。
中高完全一貫校化により
学業と課外活動を充実
2021年度からの中高完全一貫校化に向けて、さまざまな改革を推進中の同校。中高の6年間を「基礎学力養成期(中1〜中2)」「進路決定期(中3〜高1)」「実力完成期(高2〜高3)」と、発達段階に応じて分けている中、高3で、国公立文系/私立文系/国公立理系/私立理系の4つに分けていたコースを、文系/理系の2コースに変更しました。また、新学習指導要領の内容をふまえた新たな授業の導入も始まっています。栗原卯田子校長先生は、中高完全一貫校化を決めた背景について、「学習面の利点はもちろん、本校の伝統行事をより実りあるものにするために、中高完全一貫校化を決めました」と話します。
そのきっかけとなったのは、90年以上の歴史を誇る「臨海学校」です。
「中1が海で遠泳をするこの課外活動では、指導を補助する約50人の高2生が、補助員として後輩の安全の守り方や指導法を自分たちで考えなければなりません。その中で、高2生はリーダーシップを飛躍的に向上させ、中1生も先輩たちの姿に憧れ、多くを学ぶという、本校にとって大切な行事です。ところが補助員のうち、高校から本校に入学した生徒は、中1の時に臨海学校を体験していないのです。『自分も中1の時に臨海学校に行きたかった』という声を聞き、この伝統行事の教育効果をより高めるためにも、中高完全一貫校化が必要との思いを強くしました」(栗原校長先生)
思考力、分析力、表現力を
培う新授業導入
新学習指導要領に合わせて独自の新授業を導入します。例えば、総合的学習の中に導入された「数学統計」(中1)では、通常、中学校の「情報」は「技術」の教科に組み込まれ、パソコンの基本的な使い方などを学ぶ内容になっていますが、同校では、小学校で新たに設定された「プログラミング教育」と、高校の「情報Ⅱ」(2023年スタート)の「プログラミング」をつなぐ科目として「数学統計」を位置づけます。キーボードの扱い方などの基本的スキルだけでなく、プログラミング的思考力とビッグデータの分析に不可欠な「統計」を同時に学ぶ、まさにこれからの時代に必要な教育を実施します。
また、中3の「国語表現」では日本語で表現するための指導、高1の「英語表現」ではネイティブ教員によるライティングの指導があり、「実践」によって表現方法を学ぶことに力を入れています。グローバル社会で相手に自分の思いを正確に伝えるためには、「表現のスキル」が重要です。そのため、与えられたテーマを探究し、考えたり議論したりした結果を表現する授業を通して、生徒たちは自ら考え、行動する力を磨いていきます。
新学習指導要領をふまえた新授業
中1 「数学統計」 |
総合的学習の一環で、プログラミング的思考を伸ばし、ビッグデータ時代に対応できる基礎力を養います。 |
中3 「国語表現」 |
総合的学習の一環として、1つのテーマをグループで話し合い、発表したり文章でまとめたりする「実践」から表現方法を学びます。 |
高1 「英語表現」 |
ネイティブ教員によるライティングの授業。生徒が書いた文章を、ネイティブ教員が添削、指導します。 |
校長先生に聞きました!
もっと、詳しく教えて!
ここに注目!
変わりゆく未来を生き抜く「知・仁・勇」を備えた人に
栗原卯田子 校長先生
グローバル化が進む今こそ
学校の原点を大切に
中高完全一貫校化や新科目の設定など、未来を担う人物を育てるための新しい取り組みをさまざまな面で進めていますが、その根底にあるのは、本校の校章に示された“知・仁・勇”の「三光星」です。時代の変化とともに求められるものが変わったとしても、やはり“知”は人としての土台となりますし、グローバル化、ダイバーシティが進む社会では他者を思いやる気持ちである“仁”、そして自ら決断してチャレンジしていく“勇” がより重視されていくと思います。AIが社会の一端を担うことが当たり前になっていくからこそ、臨海学校をはじめとする行事や課外活動なども通して、「三光星」のバランスを持った人間力のある生徒を育てていきたいと思っています。
コロナ禍も「チーム成城」で対応
卒業後も誇れる学校生活を
新型コロナウイルス感染症拡大防止による緊急事態宣言を受けた、臨時休校期間中には、「チーム成城」で難局を乗り越えた教員たちの素晴らしさを感じました。新学期スタートと同時に、まずは教員同士で先生役、生徒役を担当してオンライン授業の進め方をシミュレーションしたうえで、出てきた疑問点や改善点を、情報科の教員が動画にまとめて配信。教員たちの努力の末に行われたオンライン授業は、分散登校が始まった生徒たちから「オンラインをやめてしまうのはもったいない」などの高い評価を受けました。突然の状況変化に、全力で対応してくれた教員たちの存在は、今後生徒たちが社会に出た後に、自信やこの学校で学んでよかったという思いにつながると信じています。また、実際、卒業後に学校に連絡してくれる生徒が多いところも、本校の魅力であると感じています。
文系・理系にとらわれない
自由で自立した学習環境
卒業生から、「経済学部や経営学部では、文系学部でありながら高度な数学力が欠かせない」という声もあり、「文系/理系」コースの中の「国公立/私立」の区分を本年度から廃止しました。本来の教養という意味では「文系/理系」も分けずにもっと自由に学習できることが理想です。文理融合の流れは今後も進んでいくという考えから、まずはコースを2つにしぼりました。このコース変更によって、生徒たちが自分の進路を見据えて、充実した学習方法を選択できる環境を整えていきます。
中1の「数学統計」の授業は、「数学」と「情報」の両方の教員免許を持つ教員が担当しています。
オンライン授業について
コロナ禍に素早く対応した
同校のオンライン授業
緊急事態宣言を受け、いち早く全生徒にGoogleアカウントを配布し、オンライン授業を開始した同校は、教員が30分間の授業動画を制作して対応に当たり、一定の成果を得ることができました。同時に「やっぱり男子生徒は対面のほうが元気」とも語る栗原校長先生。厳しい制限の中で再開した部活動や、高校生活最後の大会に臨んだ野球部の様子を見て、オンラインではカバーしきれない学校生活の意義も再認識したそうです。
(この記事は『私立中高進学通信2020年11月号』に掲載しました。)
成城中学校
〒162-8670 東京都新宿区原町3-87
TEL:03-3341-6141
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