私立中高進学通信
2020年10月号
コロナに負けない!私学のアクション
多摩大学目黒中学校
先生同士が団結し
生徒の不安を取り除く
きめ細かなケア態勢

Zoomで行われた国語の双方向授業の様子。教員はZoomの画面共有の機能を使って、
資料を画面に映し、生徒たちと共有し、解説を行いました。
4月4日に休校が決まった直後、Wi-Fi環境に関するアンケートを実施。
教員が一致団結し、4月13日からオンライン授業を始めました。
不安を募らせる生徒の
心のケアを第一に
こだわりポイント
- 複数の教員が生徒の様子を見守る
オンライン授業 - 生徒の様子を
教員同士がオンラインで随時共有 - のびのびと体を動かせる
広大なグラウンドを有効活用
『文武両道』をモットーに、生徒の個性と可能性を伸ばしている同校。コロナ禍においてもその姿勢は変わらず、生徒一人ひとりに寄り添う指導に力を入れています。
4月4日に休校が決まり、まず対策を講じたのは生徒の心のケアでした。中3生にはわずか3日後の4月7日からZoomを使ったオンラインホームルームを始めました。
「迅速に動くため、全校一斉ではなく、学年ごとに対策を考えました。重視したのは生徒に安心感を与えることです。前年度から授業を先取りしていたので、学習の遅れよりも、まずは生徒の不安を取り除き、人間的な成長を維持できるよう意識しました。
3月以降、生徒に会えていませんでしたし、保護者が在宅勤務をするなどさまざまな変化に直面しているご家庭もあったと思います。そこで、まずはオンラインホームルームでお互いの顔を見ながら状況を確認し、その翌週からZoomによるオンライン授業を開始しました」(入試広報部長/井上卓三先生)
オンライン授業でも際立つのは、きめ細かなフォローです。午前中は授業、午後は課題学習の時間に充て、曜日によっては夜8時まで教員がオンライン上に『質問部屋』を設け、勉強に関する質問や生活相談を受け付けました。オンライン授業においても、教壇に立つ教員のほかに、2人の教員が授業での生徒たちの様子を見守ることに。例えば、授業中にオフラインになる生徒がいた時は、教員同士が別のオンラインツールで情報を随時共有し、担任から生徒や保護者に連絡をして、なぜオフラインになったのか、事情を確認したそうです。
「慣れないオンライン授業ですから、授業担当の教員は、生徒一人ひとりの様子まで把握する余裕がありません。見守ることを別の教員に任せられれば授業に集中できます。
授業中に生徒の姿が見えなくなった時も、『なぜ途中でいなくなったんだ』と頭ごなしに叱るのではなく、生徒たちがどのような状況に置かれ、どんな心境にあるかを最優先で考えることが大切です。そこで、教員間のチームワークを高め、連携を取りながら生徒たちをフォローしました。『Wi-Fiがつながらなくなった』『父親のオンライン会議が始まったので、Wi-Fiの容量が足りなくなった』『弟の面倒を見るため、一時的にオフラインになった』など、生徒に聞いてみるとさまざまな事情がありました」
一人も取りこぼさず
全生徒を細かにフォロー
入学したばかりの中1生に対しては、Zoomを介した二者面談を行ったほか、クラスごとにオンラインルームを設け、担任教員と生徒、保護者がいつでも会話できる環境を整えたそうです。その結果、7割近い保護者がアクセスし、担任教員との会話により学校生活の不安を解消しました。
6月から分散登校が始まり、生徒と再会した井上先生は、彼らの成長を強く感じたそうです。
「生徒たちは、休校期間中は一人の時間が増え、今後について考えることもあったようです。登校を再開してからは、ていねいにゴミを分別する生徒、カリキュラムの進行について前向きに話し合う生徒が増え、成長を実感しています」
通常通りの授業が始まった7月現在も、生徒一人ひとりの学校生活に目を配っています。
「休校期間を経て、授業のオンライン化をさらに促進する学校もありますが、より細かにフォローするためにも、本校は学校の教室に集まる従来の授業スタイルに戻したいと考えています。どの生徒もないがしろにすることなく、一人ひとりの学力、コミュニケーション能力の向上をめざしたい。そのために、教員一丸となって努力していきます」
コロナ対策事例1
どんな状況でも、生徒を取り残さない
複数の目で生徒を見守るオンライン授業
オンライン授業では、教員・生徒双方にとって負担がかかってしまいがちです。そこで、複数の教員が生徒の様子を見守ることにしました。
「授業中、生徒たちにはWebカメラで顔を映してもらい、しっかり話を聞けているか、オフラインになることはないかなど、複数の教員で見守りました。授業を担当する教員も、慣れないことばかりで余裕がありません。私たち教員が冷静でいるためにも、授業に集中する教員、生徒の反応を見る教員と役割分担すべきだと考えました。
何かあれば保護者にも報告していたため、安心していただけたようです」(井上先生)


コロナ対策事例2
あざみ野の広大なグラウンドで
「密」を気にせずのびのび運動
同校は目黒キャンパスだけでなく、豊かな自然環境に恵まれた『あざみ野セミナーハウス』を備えています。中学生はこれまで週1回同施設で授業を受けてきました。登校再開後もこのカリキュラムを変えず、広々としたグラウンドで「密」を気にせず体を動かしています。
「休校中に運動できなかった生徒、体力が落ちてしまった生徒も多かったため、あえて週1日はあざみ野で授業を行っています。熱中症に注意しつつ大いに体を動かし、生徒たちのストレスも発散されたようです」(井上先生)
もちろん普段の学校生活でも登校時の検温、校内設備の消毒など、生徒の健康管理や衛生指導に余念がありません。万全の体制で、生徒たちが過ごせるよう心を配っています。


先生から一言
コロナ禍においても、多様な価値観を学ぶ機会を設けたい

本校では、オーストラリア修学旅行などの国際教育、多摩大学と連携したアクティブラーニング、地域の方々とのイベントなど、生徒たちの視野を広げる多彩なプログラムを提供しています。こうした体験重視のプログラムを行ってきたからこそ、今回のような事態に陥っても教員同士の協力、教員と生徒の連携、生徒間のコミュニケーションがスムーズだったのだと実感し、我々の方針は間違っていなかったと改めて感じました。
コロナ禍では海外へ渡航できず、大学生や地域の方ともなかなか触れ合うことができません。それでも海外経験豊富な方を招いて話を聞いたり、オンラインで文化や年代の違う方々と接したりすることは可能です。形は変わるかもしれませんが、ブレることなく生徒たちに多様な価値観を知ってもらう機会を設けていきたいと思います。
(この記事は『私立中高進学通信2020年10月号』に掲載しました。)
多摩大学目黒中学校
〒153-0064 東京都目黒区下目黒4-10-24
TEL:03-3714-2661
進学通信掲載情報

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