私立中高進学通信
2020年10月号
コロナに負けない!私学のアクション
聖徳学園中学校
簡潔な解説動画と
Zoomによる双方向授業で
効果的な学びを展開

ポイントを絞った解説動画が生徒たちに大好評。解説動画を見た後に行われるZoomでの双方向授業でも、
工夫を凝らした展開で、生徒を飽きさせない授業を行いました。
iPadを全員が所有
校内SNSも大活躍
早くから在校生全員が1人1台のiPadを所有し、ビジネス向けコミュニケーションツール「Talknote」を使って学校専用のSNSを開設するなど、同校では以前から先進的なICT環境が整備されていました。コロナ禍の休校中はWeb会議サービスの「Zoom」のほか、中学生は「ロイロノート」(※1)、高校生は「MetaMoJi ClassRoom」(※2)など、もともと利用していたアプリを活用し、スムーズにオンライン授業に移行できました。Zoomに関しても、本格的な授業が始まる前に、全学年で使い方の講習をオンラインで行いました。
ただ、ICT活用担当の品田健先生が懸念していたのは、Zoomを使った講義型授業に頼り過ぎてしまうことでした。品田先生は次のように話します。
「Zoomの画面をずっと見ているだけという授業では、中高生の集中力は保てませんし、理解も深まりません。そこで教員向けにガイドラインを作り、先生方にはZoomでただ授業を流すだけではなく、生徒に解説動画を見せてから課題に取り組む、あるいは課題を与えてからZoomで授業など、さまざまな方法を組み合わせて授業を進めることをお願いしました。解説動画も理想は1つにつき5分、長くても15分に制限しました。
オンライン用の時間割のため授業時間も短くなり、教員は遅れを取り戻そうと、内容を詰め込みがちになります。その点も気を付けて準備しました」
※1 ロイロノート…授業支援のためのクラウドツール。課題配布や宿題の提出に利用できるほか、思考力やプレゼンテーション力を育てるための機能も備えている。
※2 MetaMoJi ClassRoom…あらゆる端末で利用できる手書きメモアプリ。学校教育に特化した「学校版」もリリースされており、写真やWebページ、表組みなどを貼り付けてプレゼンテーション資料の作成なども行える。
解説動画で不明点を何度でも確かめられる
一方、休校スタート時にまだiPadが配布されていなかった新中1生には、どのように対応したのでしょうか。中1学年主任の亀田裕康先生に聞きました。
「まずiPadを中1生一人ひとりに送付し、ご家庭でインターネットへの接続設定をしていただきました。もちろん、わからない時には教員が電話でサポートをしました。
最初は難しいことはせず、まずはロイロノートを使って課題を配信し、全教科でiPadを使うことに慣れるところから始めました。取り組みやすい課題から出し、Talknoteを使って自由に質問ができる時間を設け、『使い方がわからない』などちょっとした質問に答えることで、生徒との距離を徐々に縮めていきました」
課題提出でiPadに慣れたところで、Zoomを使ったオンラインホームルームを導入。生徒たちはすぐにツールに慣れ、生徒同士で教え合う姿も見られたそうです。
オンライン授業では、教員にも多くの発見があったと品田先生は言います。
「私が担当する情報科の授業では、普段は50分の授業を6回行って指導している単元を、休校中は効率化して40分の授業を3回行うペースで指導してみました。
説明をもう一回聞きたい時はYouTubeにアップした解説動画を見てもらう。それでもわからない生徒には、Talknoteで質問してもらう。そうした方法で効率化して学習を進めると、実は生徒も取り組みやすく、質問もしやすいことがわかりました。生徒が提出する課題のクオリティも例年より目に見えて上がり、その効果に驚きました」
登校再開後も、休校中に使用した解説動画は、継続してオンライン上にアップし、自由に見ることができるようにしています。
「制約があることで、教員もその授業で何を伝えたいかを今まで以上に明確にすることができました。コロナの流行は決して良いことではないのですが、授業の進め方を見直す大きなきっかけになりました。ここで得たメリットは活かしていきたいですね」(品田先生)
新時代のオンライン学習
生徒同士、教員と生徒をつなぐ「Talknote」を学校専用SNSとして活用
同校では、ビジネス向けのコミュニケーションツール「Talknote」を、学校専用SNSとして導入。教員と生徒、保護者で「LINE」のようにチャット形式でコメントのやり取りができるメッセージ機能のほか、課題の配布や連絡事項をクラスごと、学年ごとに伝えるなど伝達ツールとしても活用しています。ICTを使ったコミュニケーションの取り方を、Talknoteを通して生徒に学ばせることも、導入の目的の一つです。
研修旅行などでもTalknoteは活用しており、生徒が訪問先の休館情報を他のグループに知らせるなど、有効的に活用されていました。
また、休校中に新中1生にも使い方をていねいに教え、配布した課題やiPadの使い方でわからないことがあれば、自由に質問できるツールとして使用されていました。


学級通信や月ごとの予定などの配布や、教科学習に関連したアンケートの実施など、
教員と生徒をつなぐ伝達ツールとしても活用されています。
コロナ対策事例1
休校での経験を活かして学習の効率化を図る
休校中のオンライン授業を通じて授業の進め方が変化したと、社会科を担当する新宿仁洋先生は言います。
「休校中、生徒たちは、解説動画や課題を通して授業内容を事前に頭に入れ、その後で教員と対面するZoomの授業を受けていました。その日の授業内容に関する知識を得てから授業を受けることで、理解力が高まることがよくわかりました」
実際、休校時の授業中には質問が増え、生徒も能動的になったそうです。
「一概には比べられない面もありますが、実際に登校再開後に行った1学期の定期考査では、昨年と同等の難易度となる問題を出しましたが、全体の平均点は上がりました。この手応えを、今後の学びにも活かしていきたいです」
品田先生も、休校中のオンライン授業が、教員にとってプラスの体験になったと言います。
「教員同士が互いの解説動画やZoomの授業を見学し合ったり、ツールの使い方を教え合ったりするなど、授業研究をする機会にもなりました。Talknoteを通じて、教員それぞれが生徒にどんな課題を出しているかが可視化されたことも良かったようです。ほかの教員の課題の出し方を参考にするなど、登校再開後にもその効果が表れています」


コロナ対策事例2
『+αの学びオンライン講座』を実施
自宅にいながらの国際交流も
課外活動や部活動が休止となった休校中。そんな状況だからこそ、普段はできない取り組みをしようと、同校は『+αの学びオンライン講座』を企画しました。オンライン授業が終わった放課後の時間に、同校の教員や外部からの講師、OBなどが、海外での体験や大学での過ごし方についての講演を行いました。
また、同校の国際交流ボランティア活動を担当する教員が主宰して、スロベニアの学校とのオンライン交流会も開かれました。現地の学生とのコミュニケーションはすべて英語でしたが、生徒たちはしっかり事前準備をして、交流を図っていました。


2021年度のAO入試における同校のコロナ対応
同校の中学入試では、例年、同校を第一希望とする受験生には、「個性」「創造性」を大切にした人物重視型のAO入試を実施しています。これまでのAO入試は、小学校の調査書に加え、英語・国語・算数の中から2科目を選択する学科試験と、面接という形で実施していましたが、2021年度は新型コロナウイルスの流行を鑑み、AO入試での学科試験ではなく、課題作文の事前提出と面接による入試を行います。
(この記事は『私立中高進学通信2020年10月号』に掲載しました。)
聖徳学園中学校
〒180-8601 東京都武蔵野市境南町2-11-8
TEL:0422-31-5121
進学通信掲載情報

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