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私立中高進学通信

2020年9月号

コロナに負けない!私学のアクション

聖学院中学校

思考力を深める動画900本
オンライン授業を機に学びの“質”が向上

面白く、わかりやすい理科の実験動画。生徒の興味・関心を喚起する動画が目白押しです。

面白く、わかりやすい理科の実験動画。生徒の興味・関心を喚起する動画が目白押しです。

自宅学習だからこそ洞察が深まる授業を
こだわりポイント
  1. 考える力を養う900本もの授業動画を配信
  2. 対話型オンライン授業で、
    学習の成果をアウトプット
  3. 生徒の自主性を重んじつつ
    電話やアンケートで日々の不安を解消

 コロナ禍に伴う休校期間中、同校では授業動画の配信、学校向けWebサービス「Google Classroom」(※1)での課題配信、ビデオ会議ツール「Google Meet」(※2)による対話型授業を行いました。

「家庭によってICT環境が異なりますし、PCやタブレット端末を家族と共有しているため長時間使用できない生徒もいます。
 そこで、まずはオンライン授業ではなく、録画した授業動画を配信することにしました。動画配信なら、好きな時に視聴でき、何度でも見返せます。集中力を保てる時間を考慮し、1本あたり15~20分の動画を各教員が制作しました」(教育統括部長/伊藤豊先生)

 先生方の動きは非常に早く、4月中旬にはオリジナル動画を100本も作成。6月には、その数はなんと900本に達しました。

 しかも、特筆すべきは“数”だけではありません。動画を通じてさまざまな問いを投げかけ、生徒たちの興味や知的好奇心をかきたてる“質”にこだわった動画を次々に配信していきました。

「本校の教育理念は『Only one for others(他者のために生きる個人)』です。他者や社会に貢献するには、ただ知識をインプットするだけでは不十分です。公式を暗記するのではなく、問いについて考えるプロセスで、自分自身で公式に気付いてほしい。そして、そのようにして気付いた公式を使って社会課題を解決してほしい。さまざまなテーマに興味を持ち、主体的に学びを深めるための問いを、授業動画に散りばめました」
(高校新クラス統括長/田中潤先生)

 こうした問いづくりのノウハウに長けているのが、STEAM教育主担当の佐藤充恵先生です。基礎知識を身につけたうえで、知識と知識を結びつけ、課題の解決に応用するというカナダで開発された教育メソッド『ICEモデル』(※3)をベースに、生徒に投げかける問いを考えたそうです。

「物事を考えるにあたり、基礎知識を用いて『なぜだろう』『もし〇〇ならどうなるだろう』『より高い効果を得るにはどうすればいいだろう』と流れを追うことが重要です。
 そこで授業動画では、問いによって学びのストーリーを作り、生徒たちの洞察を深めていきました。その結果、テーマについて自主的に調べてレポートを書いたり、自分なりに工夫した解答を提出したりする生徒もいました。教室では他の生徒に遠慮してできなかった深い学びも、自宅学習なら自発的に取り組んでくれるのだと感じました。
 その成果を対話型授業で共有したところ、他の生徒も刺激を受け、良い循環が生まれました」

※1 Google Classroom…Googleの授業支援ツール。課題の配布や振り返りなど、教員と生徒の間の連絡をオンライン上で一括管理できます。

※2 Google Meet…「Google Classroom」と連携するWeb会議サービス。双方向授業やホームルームに活用されています。

※3 ICEモデル…「アイス」と読みます。カナダで開発・実践されてきた学習評価の方法。IはIdeas(基礎知識)、CはConnections(つながり)、EはExtensions(応用)を意味し、問いに対する答えをI・C・Eのどの段階にいるかを評価します。

個別フォローで実りある学びへと導く

 授業動画の視聴は、オンライン授業と違って、いつでも好きな時に視聴できる点がメリットですが、その一方で懸念されるのが生活リズムの乱れです。

 ミッションスクールである同校では、毎朝礼拝の動画を配信し、規則正しい生活を心掛けてもらうことに。さらに、1日をどう過ごしたかレポートを毎日提出してもらいました。電話やオンラインでの会話によるフォローも教員がきめ細かく行い、生徒から「休校中も不安なく過ごせた」という声が届いているそうです。

 教室での授業が再開した今は、生徒一人ひとりの理解度を確認しつつ、学びの質をさらに上げようと取り組んでいます。コロナ禍においても「いかに学習に遅れを生じさせないか」だけでなく、「自宅学習だからこそできる学びをどう深めるか」「社会に貢献する力をどのように身につけさせるか」を考え続けている同校。その歩みは、確実に進んでいます。

コロナ対策事例1
ただ教えるのではなく、問いを提示
ユニークな授業動画で思考力を育む

 同校の授業動画には、生徒の興味を引く問いが散りばめられています。例えば高1の物理の授業では、「リオ五輪の400mリレーで、日本はなぜアメリカに勝てたのか」というテーマを提示。「各選手のタイムはアメリカのほうが速いのに、日本が勝てたのはバトンパスがうまくできたからではないか」という仮説から、「効率良くバトンを渡すにはどうすればいいか」という問いを投げかけ、運動や加速度に関する基礎を学んだうえで、どのタイミングでバトンを渡せばよいのかを生徒一人ひとりに分析してもらいました。その後、それぞれの案を検証し、最終的な結論を導き出しました。

 現代文の授業では、中世と近代の違いについて書かれたテキストを通し、深い考察を求める問いを投げかけました。

「映画を例に説明する生徒、歴史を引用して考察をする生徒。そうかと思えば課題を通して自分の悩みに向き合うなど、生徒の趣味や個性によってさまざまな解答が届きました」(伊藤先生)

「みそ汁のお椀はなぜ動くのか」「お椀のふたはなぜ開きにくいのか」など、身近な疑問をテーマに物理の法則を学ぶ授業も。「みそ汁のお椀はなぜ動くのか」「お椀のふたはなぜ開きにくいのか」など、身近な疑問をテーマに物理の法則を学ぶ授業も。
伊藤先生の現代文授業。「オンラインのほうが、生徒も壁を感じることなく闊達に意見を伝えられるのかもしれません」と先生は話します。伊藤先生の現代文授業。「オンラインのほうが、生徒も壁を感じることなく闊達に意見を伝えられるのかもしれません」と先生は話します。
高1・物理「リオ五輪の400mリレーで日本はなぜアメリカに勝てたのか」
どうすれば効率的にバトンパスができるのか、物理の知識に基づき仮説を立てます。中には、自分なりに文献を調べ、深い考察をめぐらせる生徒も。どうすれば効率的にバトンパスができるのか、物理の知識に基づき仮説を立てます。中には、自分なりに文献を調べ、深い考察をめぐらせる生徒も。
仮説に基づき、先生方がバトンパスをする動画を撮影。見知った先生が動画に登場することで、生徒たちの関心も一気に高まるそうです。仮説に基づき、先生方がバトンパスをする動画を撮影。見知った先生が動画に登場することで、生徒たちの関心も一気に高まるそうです。
等加速度運動の知識をもとにグラフを作成し、バトンを渡す瞬間の速さを予測。オンライン授業で生徒が考察を述べ、さらなる検証を行いました。等加速度運動の知識をもとにグラフを作成し、バトンを渡す瞬間の速さを予測。オンライン授業で生徒が考察を述べ、さらなる検証を行いました。
コロナ対策事例2
生活リズムが崩れないよう
モデルケースを生徒に提示

 好きな時間に自分のペースで授業を視聴できるのが、動画配信のメリットです。とはいえ、時間割に沿って授業を受けるわけではないため、生活リズムが崩れる心配も。そのため同校では、生徒たちがどのようなスタイルで勉強しているか、日々アンケートを取り、その中からモデルケースを提示しました。保護者からも「模範的な時間の使い方がわかった」と好評だったそうです。

「大人の働き方改革が進む中、生徒の学習時間を6限授業で縛るのは時代に逆行しているように感じます。学び方も、もっと自由でいい。自分自身でスケジュールを立て、結果を出せるのが、今後の社会で成功できる人物です。きめ細かくフォローしつつ、自主性を重視して生活面の指導を行いました」(田中先生)

ある高1生のオンライン学習の時間割
6:40 起床
1日のスケジュール確認
7:30 朝食・読書
8:15 家族と礼拝動画を視聴
9:00~10:20 数学Ⅰの授業動画の視聴、課題提出
10:30 クラスの友人とオンライン通話
10:40~12:40 政治経済の授業動画の視聴、課題提出
12:40 昼食
13:30~14:30 課外活動のミーティング
14:40~16:10 物理の授業動画の視聴、課題提出
16:10~ オンラインで課外活動のイベントに参加
授業動画の再視聴、翌日分の学習
先生から一言
コロナ禍で激変する社会では
戦略的学習能力が必須
左から伊藤豊先生、田中潤先生、佐藤充恵先生。この3名で、オンライン授業における『問いつくり方研修』を担当しました。左から伊藤豊先生、田中潤先生、佐藤充恵先生。この3名で、オンライン授業における『問いつくり方研修』を担当しました。

「ただでさえ変化のスピードが速い現代社会ですが、新型コロナウイルスの影響により、その動きはさらに加速しています。今までの知識やスキルは、すぐに役に立たなくなっていくでしょう。だからこそ、何をどのように学ぶべきか、自分で考える戦略的学習能力が問われます。本校の生徒は休校期間を通じ、ただ問題の解き方を教わるのではなく自分で考える習慣がすでに根付きつつあります。本校での学びによって、自分自身をアップデートする習慣、社会課題に貢献できる考え方を身につけてほしいと願っています」(田中先生)

(この記事は『私立中高進学通信2020年9月号』に掲載しました。)

進学通信 2020年9月号
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