私立中高進学通信
2020年9月号
コロナに負けない!私学のアクション
神田女学園中学校
学校は“居場所”
離れていても双方向で
深まるつながりと学習
生徒の悩みや相談に応じて、図書館司書がお薦めの図書をセレクト、郵送で貸し出す『バーチャルライブラリー』。
どんな本が届くのか、生徒にとってはうれしいサプライズとなりました。
迅速で正確だった
留学中の生徒への対応
こだわりポイント
- 卒業式などの重要イベントへの対応は
ポリシーを持って迅速に - さまざまな工夫で生徒や先生との
「つながり」を深める - オンラインの特性を活かした
次世代の授業を創造する
今年3月2日からの学校一斉休校要請を受け、同校がいち早く動いたのは、行事の日程調整や、海外留学中の生徒へのフォローでした。その中で最初に対応したのは、3月上旬の卒業式です。感染防止対策をしたうえで挙行しました。宗像諭校長先生は次のように話します。
「卒業式は本人のみならず保護者にとっても、学校生活の節目です。生徒たちは学校生活を通して精いっぱい、力を尽くしました。学校として各ご家庭にその気持ちをお返しする場が卒業式だと考えています。例年通り無事に執り行うことができて良かったです」
また、海外留学中の生徒への対応は、2年間留学と3カ月間留学の生徒は帰国、半年から1年間留学の生徒は現地の状況を見て判断すると決定し、方針を本人と家族に説明しました。帰国の場合は旅行代理店と連携を取りながら対応したことで、迅速かつ正確な対応により、帰国した生徒は全員無事でした。
「新型コロナに限らず、今後、リスクの高い事態が起きたとき、海外で学んでいる生徒に対して、学校の姿勢、方針に基づく迅速な判断が問われる時代になると思います」
と宗像先生は話します。さらに1学期に実施予定だったいくつかの行事は中止とせず、年内に開催できるよう、すべて延期したとのことです。こうした対応にも生徒にとって生涯に一度の行事を大切にしたいという学校の姿勢が表われています。
「学習面のフォローでは、生徒にも教員にも過度な負担がかからないよう配慮して進めていきました。3月は学習習慣を維持するため課題を出し、一般に公開されているオンライン教材の視聴を指示しました。4月前半は、「Google Meet」(※)を用いた双方向のオンライン・オリエンテーションを実施し、クラスの担任紹介や生徒の自己紹介、校長からのメッセージや教員の紹介など、「つながり」を作る期間としました。
4月後半からオンライン授業を開始し、5月には『探究』の授業も加えました。『おしゃれマスクコンテスト』をしよう、『マンガに出ているレシピ通りの料理』を作ってみようなど、生徒が興味を持ち、主体的に活動できるテーマを投げかけました」
学校は6月に再開しましたが、すぐに毎日登校ではなく、自宅でのオンライン学習の日を残して、少しずつ学校生活に復帰できるよう配慮したそうです。
※ Google Meet…Googleアカウントを利用して使えるWeb会議サービス。Googleの授業支援ツール「Google Classroom」と連携して使用します。
生徒同士、生徒と教員の
つながりが学ぶ意欲に
休校時の生徒同士や先生と生徒の「つながり」の維持は、学習面と同じ、もしくはそれ以上に同校が大切にしてきたことです。
「一人でいても独りにさせない」というコンセプトのもと、休校の長期化が懸念された5月には、生徒のストレスを軽減するため、図書館、保健室、カウンセリングルームを、オンライン上にオープンしました。学習アドバイスは図書館、身体のことは保健室、生活や人間関係はカウンセリングルームと窓口を決めたことで生徒は不安なく過ごすことができたそうです。
学習面や生活面での悩みを聞いたうえで司書の先生がセレクトするお薦めの本を生徒の自宅に送付する『バーチャルライブラリー』の取り組みは、多くの生徒から「励みになった」と大好評でした。ほかにもオンライン上で教員と生徒が食事を共にする『オンラインランチ会』や、『オンライン部活動』など、さまざまな取り組みが展開されました。
こうしたきめ細かな「つながり作り」は、学校再開後にうれしい成果として表れました。中2有志の生徒がウェルカム・スピーチのために中1の教室を訪ねたり、自主的に3密にならないクラブ紹介イベントを企画したりするなど、人と人とのつながりをより大切にする雰囲気が生まれたのです。
「今回の休校で、生徒たちは自分で考え、試してみる時間が持てたはずです。この経験の一つひとつの積み重ねを活かして、今後も主体的に考えて行動できるように成長を続けていってほしいと願っています」
コロナ対策事例1
「一人でいても独りにさせない」つながりを深める取り組み
友達や先生と日々顔を合わせ、話したり、活動したりする学校生活は、社会性や豊かな人間性を育むうえで不可欠なものです。休校中「どうすれば生徒とのつながりを保てるか」をコンセプトに、先生方がアイデアを出し、実現させていきました。
担任の先生によるオンラインHR、生徒全員との『オンライン個別面談』、『オンラインランチ会』や『オンラインおやつ会』など、つながりを深める工夫はすぐに実行。発展形として、学年の垣根を越えて自分の興味・関心に沿って集まる『テーマ別のランチ会』まで開かれるようになり、生徒は他クラスや他学年の生徒、担任や教科以外の教員とも交流を深めることができました。オンラインの特性を活かし、つながりを保ち続けた結果、再開後の学校生活にスムーズに移ることができたといいます。
コロナ対策事例2
オンラインの特性を活かして
多様な形式の授業を展開
学習習慣を維持しながら、授業のオンライン化を推進、生徒にかかる心身のストレスを考慮しながら学習意欲を高めます。これらの条件をクリアすべく、バリエーション豊かなオンライン授業が実践されました。対話型授業、スライドと教科書を活かした授業、アプリを活用した授業など、その様子は同校のホームページ上で動画配信されています。
生徒は全員がChromebookを購入しているため、端末の心配はありません。新入生には1日だけ登校してもらい、学校でChromebookを手渡しました。受け取りと同時にアカウント設定やネットリテラシーを指導し、オンラインのホームルームや授業に対応できるようにしました。
5月下旬には課題確認期間として、各教科とも自宅学習中の振り返りや課題提出を行い、休校期間中の学習に一区切りを付ける意識を持たせました。今年は中間テストは行わず、課題の提出状況や取り組み方などを加味して評価しています。
高3生には、マンツーマンの個別指導をオンライン上で行うことも。
共有ファイルを画面上に示し、Zoomで対面し、問題を解かせながら理解度を確認しました。
先生から一言
休校中であっても
オンライン上に
生徒の「居場所」を創造
今回の休校中、どうやって生徒たちの不安や焦りをなくしていけるのかを考えて、ライブで授業やホームルームをする、メールで課題を出す、チャットで生徒からの質問を受けるなど、オンラインでできるほとんどのことにトライしました。そのような経験の蓄積を活かして、学校での生活を大切にしながらも、オンラインでできることはオンライン化し、次年度以降も活用を続けたいと思います。
学校は生徒にとって「居場所」です。また、個人のモチベーションを引き出す場でもあります。生徒たちには思いきり学校生活を楽しんでほしいと思いますし、学校が自分の成長のためだけでなく「誰かのために役立てる場所」であることにも気付いてほしいのです。友達や家族、先生、まだ見ぬ誰かのためかもしれません。それを見つける場として、学校の存在意義はこれから大きくなっていくと思います。
(この記事は『私立中高進学通信2020年9月号』に掲載しました。)
神田女学園中学校
〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-3-6
TEL:03-6383-3751
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