私立中高進学通信
2020年4・5月合併号
学校生活ハイライト
青稜中学校
歴史を感じ、戦争を見つめ直す
アウシュビッツへの修学旅行

2019年度からポーランド・ドイツ修学旅行を実施。
80名近い応募の中から抽選で40名が選ばれ、4泊6日でアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所や歴史博物館を巡りました。
高2の修学旅行先が2019年度から、「沖縄」または「ポーランド(アウシュビッツ)・ドイツ」の選択制になった同校。約40名の生徒が戦跡を巡り、歴史の重さを体感してきました。
共存共栄社会に必要な
グローバルな視野を育む
「社会に貢献できる人間の育成」をめざし、豊かな「経験」から豊かな「心」を育むため、自然体験やボランティアという『経験学習』に力を入れる同校。その集大成である高2・修学旅行の行き先に、ポーランド・ドイツが加わりました。アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所などを見学し、戦争や平和について考えることが目的です。
「これまで修学旅行は中3で広島、高2で沖縄を訪れてきましたが、それでは太平洋戦争は日本にどのような被害をもたらしたかを学ぶことに終始してしまいます。これからの共存共栄社会を生きるには、グローバルな視野が必要です。歴史と向き合い続ける2カ国を訪れることで、より深みのある平和学習ができるのではないかと考えました」(募集広報部主任/福島教聡先生)
参加者は、事前学習として『夜と霧』(※)などの課題図書を読み、小論文を作成。ユダヤ人とナチス・ドイツ、双方の視点で戦争を考察したうえで現地に赴いたそうです。
「生徒たちは、今自分が立っている場所で何百万もの人々が不本意な死を遂げたという事実を噛み締めていました。私たちが望むのは、現地で得たものを教室という小さな単位に持ち帰ること。異なる個性を持つ同級生に対してどう接すればいいか、今後多種多様な人々とどう関わっていくかを考えることで、グローバルな視点や心の豊かさが生まれるのではないかと思います」
※『夜と霧』…ナチスの強制収容所に収容され、奇跡的に生還した著者の経験に基づいた小説。




生徒インタビュー
過去を学び、今後の社会に活かしたい

――修学旅行の事前学習では、どんなことを感じましたか?
工藤駿さん
日本と同じように、ドイツやポーランドも戦争という悲劇を経験していますが、本を読むだけではその重さ、背景を把握しきれなくて、現地でそれをつかみたいと思いました。
松本直尋さん
『帰ってきたヒトラー』という本を読み、怪物のように扱われるヒトラーについての認識が変わりました。大衆がなぜ彼を支持したのか、その心理も知りたいと思いました。
――アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れた感想は?
鈴木璃子さん
写真で見た時は暗くてじめじめした場所という印象でしたが、樹木も紅葉し、とてもきれいな所でした。戦争がなければ美しい場所だったんだと思うと切なくて、かえってこの地で起きた悲劇が浮き彫りになりました。
氏家響子さん
現地ガイドの方が「社会の変化は当事者であるほど気付けない」と話していて、私たちも客観的な視点を持たねばと強く感じました。この旅行で感じたことを忘れてはいけないし、過去を風化させてはいけない。帰国後も考え続けるために、そうした視点を持って本を読んだりテレビ番組を見たりしています。
松本さん
僕は、資料を読み込んだ時に感じた疑問への答えが、現地に行けば見つかるのではないかと期待しすぎて、逆に拍子抜けしてしまいました。何が足りなかったのか、今はそれを考えているところです。
――今回の修学旅行で、内面の変化はありましたか?
鈴木さん
ビルケナウで見た、国旗を肩にかけたイスラエル人の姿が印象的でした。つらい経験を二度と繰り返さないよう意思表明としてやっていると聞き、心打たれました。今回の旅行で、「私は何も知らない」と実感したので、この世界に生きる人間として今後も学び続けたいです。
工藤さん
現地ガイドの方が、「我々は傍観者でしかない」と話していました。当時の人々は、正しいことを正しいと言えず、1人の指導者にすがりついてしまった。これは今の僕らにも通じることだと思います。今までの自分を顧みて、人任せにせず、正しいことを正しいと言えるようにならねばと思いました。
松本さん
「歴史は繰り返される」と言いますが、過去を学べば同じ失敗は避けられるのではないかと日々感じています。過去に学び、現在見られる移民排斥、自国第一主義などの動きについても考えを深めるべきだと感じました。
(この記事は『私立中高進学通信2020年4・5月合併号』に掲載しました。)
青稜中学校
〒142-8550 東京都品川区二葉1-6-6
TEL:03-3782-1502
進学通信掲載情報

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