私立中高進学通信
2020年2・3月合併号
授業
神田女学園中学校
革新的女子教育の推進
社会の最適解を探究するために学ぶリベラルアーツ教育

ニコルプロジェクト(探究学習)の一環で行われている『地球市民』の授業風景。
伝統に裏打ちされたリベラルアーツ教育と言語教育。それらを軸に展開する実社会での諸問題の最適解を探究する学びなど「革新的女子教育」の今とこれらの展望を紹介します。
社会の最適解を考えるための
リベラルアーツ教育
同校では、教科の枠を超えて学ぶリベラルアーツ教育を実践しています。ただ漫然と知識・教養を習得する学びではなく、「教科の枠を超え実社会とのつながりを考えながら社会の最適解を考える」ことに重きを置く学びであると、校長の宗像諭先生は話します。
「“誰かのため、社会のために、自分ができることはなんだろう。自分も社会も幸せな状態にするためにできることは何だろう”と考えて取り組むことで、自ずと教科の枠に捉われず、知識をどう活かすのかを考えながら学ぶようになります。そうした視点で学ぶからこそ、生徒たちにとって授業は楽しく、学問は面白いと感じられるようになります」(宗像先生)
そうした同校ならではのリベラルアーツ教育で、生徒たちの意識づけに重要な役割を担うのが中高で取り組む『ニコルプロジェクト』。自然(Nature)・文化(Culture)・生命(Life)をメインテーマに、生徒たちが自らテーマを決め、1年間を通じて主体的で協働的な学びを実践する探究学習です。
「ニコルプロジェクトでは、まずは、生徒たちの身近な興味・関心や疑問を課題にすることからスタートし、学年が上がるにつれ課題解決に向けたプロセスを段階的に学んでいきます。中学から、外の世界に視野を広げることを始め、大使館や外務省、環境省、テレビ局、区役所などに取材し、企画書を出してアポイントメントをとり、話を聞く方法なども学びます。
インターネットでは得られない、生きた情報に触れたときの感動やワクワク感。それこそが、探究の原点となります」(池田先生)
こうして探究学習を重ねていくうちに、生徒たちのテーマは身近なことから、社会や世界の問題へと広がっていくそうです。この日に取材した高1の『ニコルプロジェクト/地球市民』の授業でも、日韓関係や発展途上国についてなど、世界の問題をテーマとするグループが多く見られました。
「高1では1学期に調べ方、まとめ方、企画書の作り方、アポイントの取り方や電話のかけ方などを学んできました。中間発表を経て、2学期はテーマを再構築し、より多角的な視点で見ていきます」(池田先生)
3月には学校全体でニコルプロジェクトの発表を行う『ニコルウィーク』が開催される予定です。
「発表形式は自由です。講堂でパワーポイントを使ってプレゼンテーションをしてもいいし、研究論文でも、劇や歌などで発表してもいいのです」(池田先生)
「詩の朗読などもいいですね。生徒たちがどんな発表を披露してくれるのか楽しみです」(宗像先生)
感性と自分の価値観を大切にし
品格ある個人としての成長
『ニコルウィーク』で発表形式を自由にしているのは、表現力や創造性は人としての価値の一つであるという同校の考え方に基づきます。
「抜群のプレゼンテーションで非のうちどころのない解決法を提示するだけでは、人の心を動かすことはできません。創造性やパーソナリティが肝心であり、それこそ本校が大切にしたいものです。
本校が育てたいのは、他人の立場を思いやることのできる『品格ある個人』です。創立から130年重ねてきた文化や作法を学ぶことはもちろんですが、加えて芸術や哲学的なアプローチも学んでほしいと考えています。
また、これからの解が一つでない社会では、さまざまな価値観や正義があり、どれが絶対に正しいというものではありません。一人ひとりが自分の価値観や正義に基づいて、世の中のあらゆる物事を判断していかなくてはなりません。自分の価値観を形成するためには、物事を理解し、考えていくための哲学的視点を持つことは大切です。そのためにも、教科の枠を超えて芸術分野も意識する幅広い英知に触れるリベラルアーツ教育や、物事を哲学的に深く考える探究学習が必要なのです。
生徒たちには、自分の価値観や正義をしっかりと持った個人として、最適解を導いていける人物になってほしい。そして、スキルだけではなく、女性ならではの品格ある振る舞いや豊かな感性を活かした方法で、グローバルに活躍できる人になってほしいと願っています」(宗像先生)
さらに宗像先生は、社会の未来を見据え、リベラルアーツや言語教育をより活用できる新たな教育をスタートさせる予定だと言います。
「AI(人工知能)が多くの仕事を担うようになると言われるこれからの社会において、教育や医療などに代表されるような、人にしかできない職業の分野で、豊かな感性や人間性にあふれた『品格ある個人』がいっそう求められていくでしょう。そうした活躍に結びつく新たな教育プログラムを構想しています」




さらに充実し発展を遂げる
トリリンガル教育
母語(日本語)と英語と第2外国語(韓国語・中国語・フランス語から選択)を学ぶトリリンガル教育は、同校のカリキュラムの大きな特徴です。
英語はネイティブ講師が常駐する『K-SALC』を2017年に新設。神田外語大学のノウハウを取り入れた言語習得プログラムを実践しています。
第2外国語も、よりいっそう充実させるとともに、新たな取り組みがスタートします。
国語、英語、第2外国語から母語、英語、第2外国語へ

第2外国語では、新たに「日本語」の講座が新設されます。
「こちらは、主に帰国生や外国籍の生徒を対象とするものです。言語教育に力を入れる本校が日本語教育をしっかりと行うことには大きな意味があると思います。グローバル化は双方向で考える必要があります。海外から日本に来る方々を、どのように理解し受け入れ協働するのか。そのときに言語を通して、個人の考え方を理解してもらうことは重要です。
英語教育も、伝え合うことが第一の目的です。本校の英語教育は、英語の文章を読むためのスキルを学ぶのではなく、自分が考えたことを英語にすることから学んでいきます。
また、第2外国語を学ぶことは生徒の自己肯定感や自信にもつながります。中国語、韓国語、フランス語を学習することで、例えばフランス料理や中華料理のメニューの意味がわかる、韓国語の歌詞がわかるというように、身近なところでできることが少しずつ増えていくのです。
社会や世界に出た時にアドバンテージになるような言語を学ぶことによって、興味・関心が広がり、これからの人生の核となる個性や強みとなっていくことを生徒自身が実感し、学ぶことの意義に気付くきっかけにもなります。
今後は、第2外国語教育についても英語教育と同様に、検定試験のサポートや自立学習支援などにも力を入れていきます」(宗像先生)
アイルランド・ダブルディプロマプログラム(DDP)
海外の学校に在籍して学び
現地校の卒業資格を得る
DDPは「現地で学び得たことを現地校の卒業資格として取得できる『次世代の留学制度』。留学を超えた“リュウガク”」という革新的な内容のプログラムです。アイルランドの現地校に18カ月以上籍を置いて学び、国際的に通用する現地校の卒業資格と日本の高校の卒業資格2つの資格を得ることができます。
アイルランド共和国認定のLeaving Certificate(通称LC)を受験し、基準をクリアすれば、海外大学をめざすことも可能。国内の大学進学においても帰国生向けの入試に出願できるなど、国内外の大学進学の選択肢が広がります。
本格始動は2020年を予定していますが、今年、すでにプログラムを利用してアイルランドに渡った生徒がおり、その様子が同校のホームページ内『リュウガク物語』で伝えられ、校内外に反響が広がっています。


DDPで世界への扉を開く
2020年度よりアイルランドDDPのほか、姉妹校であるニュージーランドでも開始となります。アイルランド・ニュージーランドDDPともに、留学先の現地校にはさまざまな国の留学生が在籍しており、日本人が比較的少ない環境で、異文化交流をしながら、ともに学べる環境が特徴です。
滞在中は学校近郊の家庭にホームステイ。修了後は、一定の成績基準をクリアすれば、海外大学への進学を保証する「海外大学協定校制度」を利用して、海外大学へ進学することも可能です。
(この記事は『私立中高進学通信2020年2・3月合併号』に掲載しました。)
神田女学園中学校
〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-3-6
TEL:03-6383-3751
進学通信掲載情報

紹介する学校
- 海外で活躍する女性との対話大妻嵐山中学校
- 革新的女子教育の推進神田女学園中学校
- 未来に活きる高1『探究』田園調布学園中等部
- 社会貢献を通して課題を探究目黒星美学園中学校
- 『将来構想プロジェクト』が始動跡見学園中学校
- 伝統を守りつつ柔軟に変革共立女子中学校
- 体験重視で多彩な進路を実現共立女子第二中学校
- ESDを中心に教育を再構築実践女子学園中学校
- AIに負けない人財を育てる十文字中学校
- リベラルアーツで知性を育てる東邦大学付属東邦中学校
- 先進教育委員会が改革を推進立正大学付属立正中学校
- コース、入試、制服も一新昭和学院中学校
- 2つのコースで多様な進路を実現東京純心女子中学校


