私立中高進学通信
2020年2・3月合併号
ビジョン
東邦大学付属東邦中学校
リベラルアーツで知性を育てる
完全中高一貫校としての歩み
医学部進学をめざす高1生を対象に、東邦大学医療センター佐倉病院で実施する
『ブラック・ジャックセミナー』には、毎年多くの生徒が参加。
最新の医療器具やシミュレーターを使った、外科医療の疑似体験ができます。
写真は内視鏡手術のトレーニングを体験している様子。
2017年度より完全中高一貫校となり、これまで培ってきた自主的で能動的な学びをさらに推進する同校。
松本琢司校長先生に、同校の学びについて語っていただきました。
中高6カ年一貫教育により
『東邦リベラルアーツ』を実現
分野に秀でたスペシャリストとしての専門知識と技術のみならず、生徒の可能性を大きく広げ、知性と科学的教養をバランス良く身につける人間教育に注力する同校。「自分探し学習」をテーマにしたリベラルアーツ型カリキュラムを実践してきました。その教育的ビジョンをさらに推進するため、2017年度より高校募集を停止し、完全中高一貫校化を図りました。その意図を、松本琢司校長先生は次のように話します。
「完全中高一貫化を決定した大きな理由は、主要教科の全学習範囲を、高2までに修了する『東邦リベラルアーツ』を中学から徹底して行いたいからです。中学からの入学生に絞ることでカリキュラムの一本化を図ることができ、授業の進捗はもちろんですが、さまざまな面でメリットがあります。
以前は一貫生と高入生の足並みをそろえるために高1で行っていた希望制の海外研修なども中3へと前倒しし、生徒が早い段階から視野を広げて自分の将来への道筋を考えるきっかけを作ることができます。学習以外の部分でも、一貫化は生徒の意識をさまざまに促す効果が表れます」
同校は伝統的に、医・薬・理工などの学部への進学率が高く、文系においても研究職・専門職などのスペシャリストを多く輩出しています。
「完全中高一貫化はキャリア教育の視点からも有効です。中学から保護者の職業調べを行ったり、就職の決まった大学生や医学部生の講話の機会を設け、高1で大学見学を行ったりと、将来への意識を早くから高められる利点があります。生徒も自分の可能性への意識を強く持つことで、“そのためにどんな勉強をしたらいいのか?”という学習意識を同時に高めることができます」
中高大が連携して実施する
『学問体験講座』の意義
中高一貫化によって、同校が実践する『東邦リベラルアーツ』は、『東邦アカデミック・チャレンジ』へと進化を遂げていきます。
「高い専門性は、根底に幅広い知識があってこそ完成するものです。『東邦リベラルアーツ』は、大学受験対策だけに特化せず、生徒が真に自分の成したい進路、学びを選び取るためのものでもあります。
そして、『東邦アカデミック・チャレンジ』がスタートする高2では、文系学部をめざす生徒も、本校では文系科目に加え数Ⅲの勉強も行います。同様に医学部をめざす生徒も高2で倫理を学ぶことで、医師として必要な人権意識、倫理観を得ることができます。本校の教育の本質は、生徒が社会に出たときにこそ必要とされる、生徒一人ひとりの心の成長と社会的知性の獲得に寄り添った学びなのです」
生徒それぞれの能動性を育む授業を多く設けているのも魅力です。なかでも注目されているのが、東邦大学および他大学と連携した『学問体験講座』。中学生から参加できることも大きな特徴です。
「本校の学問体験講座は、与えられた課題だけをこなすのではなく、最先端の学問を自ら体験する実験や実習を通じて、いま学校で学んでいることがどんな学問につながり、自分はそれをどう発展させられるかを、身をもって経験できることにあります。それまで意識してこなかった新たな学問や知見と向き合う機会が得られるのは、生徒にも意義深いことです」
最新の医療技術を体験する
『ブラック・ジャックセミナー』
学問体験講座の中で、東邦大学で行われる大学キャンパス講座には、薬を調合しその効果を学ぶ講座、ロボット製作とプログラミングを学ぶ講座、免疫応答の仕組みやがん治療の応用を学ぶ講座など多種多様な講座があり、毎年、多くの参加希望者を集めています。
「理系の講座は東邦大学の理学部、薬学部、健康科学部と連携しています。文系の講座は他大学や専門機関からも講師を招いています。大学のキャンパスで学ぶことで、生徒の学習意欲も大いに高まっています」
さらに、ほかに例を見ない同校ならではの体験講座として人気なのが、東邦大学医療センター佐倉病院と連携し、毎年多くの生徒が参加する外科医体験授業『ブラック・ジャックセミナー』です。医学部進学をめざす高1を対象に、縫合体験、超音波メスを使った最新医療機器体験、内視鏡手術トレーニング体験など最新鋭の外科医療に触れられる貴重な機会です。
「ブラック・ジャックセミナーは、最新の医療技術を体験するだけでなく、医師としての倫理観、生命の尊さ、担うべき社会的責任なども、厳しい現実とともに知ってもらいたいという願いも込めています。学問体験講座以外にも、多彩な体験型の校外学習も用意しています。本校での6年間で将来の夢を見つけ、自分を知り、何を成すべきかをしっかりと考える生徒に育ってもらいたいと思います」
中高大連携授業で未来への扉を開く
『学問体験講座』
『学問体験講座』は中高生の希望者を対象に、系列大学の東邦大学をはじめ、多くの大学との中高大連携によって、年3期開催されています。
7月と12月には、東邦大学の理学部、薬学部と連携。実際に大学の校舎を訪れ、さまざまな実験授業を体験します。また、11月には各大学からさまざまな分野の専門家を招き、講演を開催しています。
医学部進学をめざす高1を対象に、東邦大学医療センター佐倉病院と連携した外科医体験授業『ブラック・ジャックセミナー』も、最先端医療を体験できるとあって人気の高いプログラムです。
過去に行われた学問体験講座(抜粋)
講座・講演
“薬の効果”―坐薬を作って体内循環を確認してみよう― | 使い終わった水はどうなっているのだろう?―水処理と水質について学ぶ― |
がんの性格を遺伝子発現で評価する | コンピューターは不思議なフラスコ |
新薬創製のためのドラッグデザイン | 放射線の測定と生物実験への放射性物質の利用 |
遺伝子で分かる、あなたの得意な陸上種目 | 偏光を使った万華鏡を作ろう |
選挙制度の仕組み(参議院議員選挙) | 動物はどのような社会で暮らしているのか? |
ロボットを作ってみよう―ロボット製作とプログラミング― | 途中の階でも微分したい?!―1階、2階の微分から分数階微分へ― |
楽しい会議をつくるファシリテーターに挑戦 | 「犯罪」と「刑罰」について |
トリの卵を使って見える染色体の世界 | 看護学ことはじめ―看護の視点からコミュニケーションを考える― |
社会を動かす予防医学 | 総合内科医の日々の医療 |
地域医療から肝移植、緩和ケアまで | ゲノム診断と分子治療薬の開発 |
がんに対する免疫応答と治療への応用 | ロボットとそれを支える機械技術 |
2018年度より帰国生入試も開始
推薦入試には多数の志願者が!
完全中高一貫校化に続いて、同校では2018年度から帰国生入試もスタートしました。
「多様化する社会に対応すべく開始した帰国生入試により、現在、海外生活を経験した多くの生徒が学んでいます。英語のみは帰国生の取り出し授業を行っていますが、それ以外は一般生と同じクラスで勉強しており、学習面や学校行事など普段の学校生活においても、より積極的で能動的な帰国生から一般生も刺激を受けています」(松本校長先生)
また12月1日に行われる帰国生入試と同日には、毎年国内トップクラスの志願者数を集める推薦入試も行われます。2020年も倍率約25倍の難関に。より良い学びを得たいという受験生の多さが、同校の教育、独創的なカリキュラムへの期待と実績を物語ります。
2019年12月1日に行われた中学推薦入試では、
定員30名のところ752名が出願。
約25倍の志望倍率となりました。
(この記事は『私立中高進学通信2020年2・3月合併号』に掲載しました。)
東邦大学付属東邦中学校
〒275-8511 千葉県習志野市泉町2-1-37
TEL:047-472-8191
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