私立中高進学通信
2020年1月号
私たち、僕たちが大好きな先生
本郷中学校
実物に触れることで
知識だけでは得られない感動を伝え理科を面白く感じる

地学/曽根 穂(そね みのる)先生
東海大学海洋学部卒業後、関東圏の公立・私立中学校・高等学校で講師として勤務。
同校には4年前から理科教員として着任し、今年から中3の副担任を受け持つ。
「恐竜のふんの化石を渡すと、においを嗅ぐ生徒がいるんです」と微笑む曽根穂先生。同校では生徒が実物に触れ、体験する授業を行っています。地学を担当する曽根穂先生に、今後の教員生活で生徒にどのようなことを伝えていきたいかを聞きました。
専任教員から学んだ
実物に触れる面白さ
―― 先生になろうと思ったきっかけを教えてください。
中学校は私立の中高一貫校へ進学しました。子どもの頃から動物や植物などが好きだった私は生物部に入部。そこで出会った生物の先生が、非常にユニークでした。
最も印象に残っているのが中1の文化祭で、クラスの出し物として、先生がもらってきたクジラの骨を骨格標本として展示したことです。これ以外にも、先生は生物部の活動のために、山で動物をとってきたりと、私たち生徒にどんどん"本物"を見せてくれました。「クジラの骨はこうやってつながっているんだ」と、図鑑だけでは学べない経験をさせていただきました。それが、さらに私を理科好きにさせました。
教科の面白さを教えてくれる教員への憧れとともに、私の微妙な表情の違いに気付き「今日はどうしたんだ?」と声をかけてくれる、そんな先生方の生徒と真摯に向き合う姿にも、感銘を受けました。その姿を目標に、私も教員をめざすようになったのです。
―― なぜ地学の教員をめざしたのですか?
理科好きだった私は、海洋学部がある大学へ進学。教育実習では母校に戻り、お世話になった生物の先生に教員をめざすことを伝えました。
いよいよ教員として社会へ羽ばたこうとする時、理科の中でも地学専門の教員が少ないことに気が付きました。
地学は天文や地球の構造などを学ぶ学問です。
私たちが暮らす日本は地震や噴火、風水害などの影響をたくさん受けますよね。日本で暮らす生徒にとって、地学は非常に大切な学問だと私は感じています。その重要さを生徒に伝えたいと思い、とくに地学を専門とする教員となりました。もちろん、化学などほかの分野を教えることもできます。
知識を実生活と結びつける学び
―― 授業で大切にしている学びはありますか?
リアルな情報を生徒に見せることを大切にしています。本校はプロジェクターを授業で活用するなどICT化が進んでいます。そういう機器を使いながら、例えば天気図を見せて「これから天気はどうなるか」、地震があった時は「震源地はどこか」を問いかけています。そうやって、知識が生活と結びついていくことを体験し、実生活でも役立ててほしいと思っています。
また、いまの時代はインターネットで映像が簡単に手に入り、それを見て満足する人が多いように感じます。もちろん、映像でしか見られない情報もありますが、五感を使って実物に触れることで、たくさんのことを学べます。まさに、「百聞は一見に如かず」。そういう映像では伝わらない面白さを授業で毎回感じてもらえるようにしています。
例えば、中1では学校周辺を歩き、高低差などを調べる地学の授業を行っています。実際に歩くことで「なんでこの場所には坂があるのだろう。昔は何だったのだろう」と疑問を感じます。それから昔の地図で確認すると、川が流れていたことがわかります。自分たちがどんなところに住んでいるのかを考えることで、知識が実生活に結びつく経験を得られます。そういうことの積み重ねをきっかけに、理科が苦手な子も興味を持ってくれたらと思っています。
生徒と本音で話すために
自らが一歩前に出る
―― 本郷にはどういう生徒が多いですか?
今年から中3の副担任を務めています。先日、修学旅行で京都と奈良へ行きました。実は教員として修学旅行へ同行するのは初めて。普段はおとなしそうにしている生徒が「電車のことは任せろ」と班の中でリーダーシップをとる姿や、誰かが声をかけないと仏像の前から離れない生徒など、普段とは違う姿を見ることができ、新鮮でしたね。
本校はスポーツが盛んで、フレンドリーな生徒が多いのですが、そういう個性豊かで、自分の好きなことに打ち込める環境があるのは、男子校ならではの良さだと思います。
―― これから、どんな先生になりたいですか?
自分の原体験と同じように、理科の面白さを生徒に知ってほしいですね。そのためにも本物に触れる時間はしっかりと確保していきたいと思います。
また、クラスメートという身近な存在にそれぞれの興味・関心があることを伝え、生徒同士の関係を深めることも大切にしたいですね。中学受験をして入学した本校の生徒は、基礎的な知識がしっかりと定着しており、なかには地学に詳しい生徒もいます。例えば、天文の授業をする時、星座に詳しい生徒がしてくれた話を伝えると、「へー! あいつはそんなことを知っているのか」と反応があります。得意なことを見せることで、クラスメート同士が尊敬の念を持って接することができるのです。
それに、生徒と本音で話し合える教員ということも大切ですね。12年間の教員生活で、"本音を話してもらうには、まず自分から素を見せる"ことが一番だと気付きました。どんどん生徒に近づいて、「え、何この先生」とちょっと思われるくらいでちょうどいいのかもしれません。時間が経つにつれて、世間話や教室での出来事、時には悩み事を生徒から打ち明けてくれるようになります。
中学・高校は心が成長していく大切な時。理科の面白さだけでなく、今の生徒にとって必要な成長の手助けをしていく教員でありたいと思います。




(この記事は『私立中高進学通信2020年1月号』に掲載しました。)
本郷中学校
〒170-0003 東京都豊島区駒込4-11-1
TEL:03-3917-1456
進学通信掲載情報

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