私立中高進学通信
2020年1月号
実践報告 私学の授業
世田谷学園中学校
生物への理解を深め
命の尊さも知る解剖の授業
ICTを活用し、イカの解剖を撮影して記録

イカの筋肉を解剖バサミで切り、クチバシ状の口を摘出。その様子をiPadで動画撮影します。
画像を拡大できるので、より細かい部分まで観察できます。
2019年度から中学生全員にiPadを配布
お釈迦様の言葉「天上天下唯我独尊」に基づく「Think&Share」の精神のもと、学力の向上だけでなく、人間としての成長を大切にする同校。2019年度から中学生全員にiPadを持たせ、教育のICT化を推進しています。取材した理科の実験では、iPadを使うことで解剖後のレポートに役立てるなど、活用が進んでいました。理科を担当する古見高広先生は、次のように話します。
「理科では、夏休みの自由研究のレポートを途中経過も含めてiPadを使い、教員と生徒で共有しました。リアルタイムで生徒の進捗状況がわかり、アドバイスもスムーズにできるところが利点だと思います。
授業では、プリントなどの教材をiPadへ配信したり、実験や解剖で学んだことを文字だけでなく画像、動画として記録させレポートとして提出させたりして活用しています。
iPadを使う大きなメリットは、膨大なデータを保存できることにあります。これからの大学入試では、eポートフォリオの提出が求められます。eポートフォリオは、生徒の探究活動や課外活動、資格などの実績を蓄積していく必要があるため、iPadで作成したデータが役立ってくることでしょう」
実験で学ぶ命の大切さ
取材当日は中1生40名がスルメイカの解剖に挑戦。1学期に学んだ生物の体のしくみについて、実物を手にすることでより深く理解するとともに、命の尊さも知りました。
授業はまず、古見先生がプロジェクターを使って解剖の目的やポイントを説明。同時にiPadにもイカの画像が映し出されます。
「イカの腕にはタコと違って、角質環というギザギザした吸盤があります。これで獲物をしっかりとつかむのです」
続いて古見先生が解剖手順を実演。実験用の台にiPadを固定し、先生の手元を大型モニタに拡大して映すことで、生徒全員がどの席からでも手順とポイントが理解できるように工夫されています。
「エラや心臓を観察したら、スポイトの先をイカの口の奥まで入れて、醤油を注入してみてください。食道から胃まで醤油が入っていく様子が、色で確認できます。慎重に行えば、肛門まで醤油が入ります」
実演が終わると、4人1組になって解剖に移ります。集中する生徒たちに感想を聞くと、こんな声が返ってきました。
「イカの目から取り出した水晶体が美しく、生命の神秘を感じました」
「実物に触れることで、1学期に学んだ知識が腑に落ちました」
解剖が終わった後、水洗いしたイカを調理し、生徒たちが食します。与えられた命を大切にして、自然の恵みに感謝する同校の教えは、授業の中にも表れています。
撮影した動画は、解剖後のレポートに活用
解剖の様子はiPadで撮影して、解剖後のレポートに添付。 画像や動画を生徒同士で共有することもできます。
Step 1目的を説明

今まで学んできたことを振り返りつつ、イカの形態と確認すべきポイントについて説明がありました。
Step 2解剖の実演

イカの腕の構造や口、眼球について解説を加えながら、古見先生が解剖していきます。先生の手技を収めようと、iPadを手に撮影を始める生徒もいました。
Step 3いよいよ解剖へ

生徒は4人1組で解剖にあたります。解剖する生徒、撮影する生徒と役割分担しながら、順番に作業していきます。
Step 4内臓の観察

イカの腕についている「角質環」を観察した後、イカの胴を開きます。胴にはホック状の軟骨があることも、解剖しないとわからないことの一つ。
Step 5水晶体の観察

イカの眼球を摘出します。この眼球を注意深く開いて、透明な水晶体を取り出します。水晶体はレンズの役割をするため、新聞紙の上に置くと文字が拡大されることがわかります。
Step 6寄生虫の観察

イカに寄生するニベリニアとアニサキスを観察。ニベリニアは食べても無害ですが、アニサキスは生で食べると危険です。写真はiPadで拡大して写したニベリニアです。
Step 7命をいただく

解剖終了後は、イカを醤油で味付けして炒め、生徒みんなでいただきます。解剖の時の真剣な表情とは違い、そのおいしさに生徒たちは満面の笑顔。
ココも注目!
命をいただく大切さを授業を通して学ぶ時間

イカの解剖は中1の1学期に学んだ「生物の体のつくり」の集大成。内臓のつながりや眼球の構造などを、実体験と共に学ぶことができました。解剖した後のイカは、焼いて生徒に食べてもらいます。
本校では与えられた命を大切に、自然の恵みに感謝し、幸せと平和な社会に向かって一歩踏み出す教育を大切にしています。食事の前に『いただきます』というように、私たちは生き物から命をいただいて生かされています。感謝する気持ちを理科の授業という学びの場でも抱いていてほしいですね。
(この記事は『私立中高進学通信2020年1月号』に掲載しました。)
世田谷学園中学校
〒154-0005 東京都世田谷区三宿1-16-31
TEL:03-3411-8661
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 本物に触れる機会を通じて日本の歴史と文化に興味を持つ狭山ヶ丘高等学校付属中学校
- 生徒全員が主役!みんなで作り上げる『なでしこ祭』淑徳SC中等部
- 中高合同で『城北祭』を支える生徒主体の「文実」が熱い!城北中学校
- 誇りを抱いて袖を通せる90年間の伝統を受け継ぐ制服東洋英和女学院中学部
- リーダーシッププログラムの実践 一人ひとりがリーダーとして活躍する清修フェスタ白梅学園清修中学校
- 等々力ICTフェア ICT機器を駆使した最先端の授業を公開東京都市大学等々力中学校
- 体験重視の教育 グローバル社会に貢献するために3つの力を育成目白研心中学校
- 楽しく食べながら食に対する感謝の心を学んでいます駒込中学校
- 自ら考え行動する生徒たちが輝く場所に佼成学園中学校
- 作品創りを通じて豊かな人間性を育てる十文字中学校
- ひな壇状のラーニングテラスは開放的で落ち着いた空間実践学園中学校
- 「生徒のための校舎に」教育者の思いを体現桐朋女子中学校
- 本気で貢献したい!という思いが自らを成長させる聖学院中学校
- 肌で感じ、自ら学び取るグローバル感覚東京農業大学第三高等学校附属中学校
- 物事を俯瞰する力を養う全員参加のカナダ修学旅行東洋大学京北中学校
- 『DDコース』につながるカナダの学びを中1から文化学園大学杉並中学校
- 異文化への理解を深める第二外国語教育横浜女学院中学校
- キャリア教育で養う社会への探究心と課題解決力聖望学園中学校
- 生物への理解を深め命の尊さも知る解剖の授業世田谷学園中学校
- 人間と社会、人生を探究する独自カリキュラム『総合科・人間学』玉川聖学院中等部
- 生徒の創造性を引き出す教育でApple社・ADS認定校に東京成徳大学中学校
- 中高6年間の探究型学習『創学』 社会に向けた提案力を育成横浜創英中学校
- 職業体験・ミニ屏風作り日本の伝統工芸の歴史と知恵や技に触れる職業体験桜丘中学校
- 自然や文化に接し仲間との絆を強める智力の探究 自然体験学習・農工芸体験学習高輪中学校
- 国際感覚を磨く第一歩として最初の語学研修はイギリスへ多摩大学目黒中学校
- 実物に触れることで知識だけでは得られない感動を伝え理科を面白く感じる本郷中学校
- 「ニュージーランド ターム留学」が積極的に進路を切り開く機会になりました富士見中学校
- 素直で温厚な生徒たちがお互いにリスペクトし合っています八王子学園八王子中学校
- 「1教科4技能入試」でプレゼン能力を評価共栄学園中学校
- 発想力・表現力重視の個性を育む入試を実施品川女子学院中等部
- 7種類の入試形式で受験生の得意分野を評価日本工業大学駒場中学校
- 生徒の個性を伸ばす“得意”を活かす新入試文京学院大学女子中学校
- 人気の『先進コース』2月4日入試もスタート安田学園中学校
- 美と伝統に触れて今だけの感性を伸ばす共立女子第二中学校
- 部活動が社会性を身につける訓練の場に成城中学校
- 高3の夏まで続けた吹奏楽部 完全燃焼した後に受験勉強に集中国学院大学久我山中学校
- 自転車部の部長や生徒会長として活躍 独自の教育が学びの礎となった6年間日本学園中学校
- 「誠意・勤労・見識・気魄」を重んじる伝統が息づく国士舘中学校
- 生徒の中にある自主性・主体性を引き出す自由な課外活動『FLYERS』日出学園中学校
- 生徒が考え、判断して運営 学校を盛り上げる『記念祭』女子聖学院中学校


