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私立中高進学通信

2020年特別号

憧れ校のこだわり教育

江戸川学園取手中学校

20年先、30年先を見据えた教育を

 世界型人材をめざす学園の合言葉は「初志貫徹」です。コロナ禍という逆境をバネに成長を誓う江戸取生は、20年先、30年先の自分と社会を見据え、前進を続けています。

珠玉のオンライン授業は
逆境の中で生まれた財産
校長の竹澤賢司先生校長の竹澤賢司先生

 今年度の入学者313名の内訳は、併設の小学校からの内部進学生80名と、中学受験を経て入学した生徒233名です。新型コロナウイルス感染症の予防対策についてさまざまなことを考慮した結果、4月6日に実施した入学式では、参列者は各家庭保護者1名のみとしました。当日朝の検温の実施、出席者全員のマスク着用、入場の際には手指のアルコール消毒、座席は一席ずつ間を空け、式中はホールの扉を開放して換気をするなど、万全の対策を行ったうえで実施しました。なお、参列することがかなわない家庭への配慮として、入学式の様子を、Web会議サービス『Zoom』にてライブ配信しました。

「今年度は、入学式の翌日から臨時休校にせざるを得ない異例の新年度スタートとなりました。休校中でも生徒の学びを止めないように、学習動画を配信したり、5月からはオンライン授業を行ったりして、一日6時間以上の学習を全学年に課していました。毎日通学していることをイメージしながらの、規則正しいリモート授業です」(校長/竹澤賢司先生)

 オンライン授業の一日は、毎朝8時30分のホームルームから始まります。生徒は制服に着替え、自宅のPCやタブレット端末の前に着席し、担任による出席確認の点呼を待ちます。

「画面の向こう側からは、生徒のとても元気のいい声が返ってきます。実際に学校へ通うことはできなくとも、オンラインでつながっていることがうれしくてたまらない様子が見て取れました。
 一方、各教科の先生方は入学式の翌日から2週間、オンライン授業の研修会に毎日参加し、現状のものに満足することなく、より優れた学習動画の作成に全力を注いでいました。そのなかで『道徳』『総合学習』以外の教科・科目はすべてオンラインで実施が可能となりました。生徒からの個別の質問はいつでも学習アプリを通して行い、授業内容がわからないまま取り残されるということもありませんでした」

 江戸川学園取手では、5月末日まで休校措置を取り、6月1日からの分散登校を経て、12日からは通常授業を行っています。6月中旬には例年通り中間試験も実施しました。

「ゴールデンウィーク中には2日間の質問日を設け、オンライン接続の疑問点の解消にも努めました。保護者からさまざまな質問をいただきましたが、交替で出勤する先生方のきめ細かな対応でフォローしました。ここで大事なことは、オンライン授業の技量と質を上げ続けることです。『中途半端な教育は絶対に行ってはならない』というのが本校のこだわりです。コロナ禍の逆境の中で、良質なオンライン授業の提供という財産が本校に加わりました」

先生方の間から「仕掛けが秀逸」と高く評価された物理のオンライン授業。先生方の間から「仕掛けが秀逸」と高く評価された物理のオンライン授業。
コロナ禍でも自主学習に励む生徒たち。自習室が豊富に準備されています。コロナ禍でも自主学習に励む生徒たち。自習室が豊富に準備されています。
学校が生徒に示す指針
親が子どもに示す指針

 今から42年前の1978 年に、『世界を築く礎となる人材の育成』を建学の精神に掲げて創立された江戸川学園取手。創立40周年を機に掲げた『New江戸取』の教育目標は『世界型人材の育成』です。竹澤校長先生が自ら壇上に立ち、中1の生徒たちを時に厳しく、時に温かく激励する名物授業『校長講話』は、まさに世界型人材となるべく入学してきた生徒一人ひとりの魂を揺さぶる、同校創立以来の道徳教育の一環でもあります。

「通常授業が始まってすぐ、第1回目の校長講話に選んだ偉人は、世界的な医師であり、細菌学者でもあった野口英世でした。彼は医師国家試験をめざして上京する際、生家の床柱に『志を得ざれば再びこの地を踏まず』という強い言葉を刻みました。彼の生き方は、今年度の本校のスローガンとして掲げた『初志貫徹』そのものなのです。コロナがあろうとなかろうと、初心を貫きなさいということです。その強い気持ちが、きみたちの未来を創るのだと、そのために切磋琢磨するべきではないかと、私は中1の生徒一人ひとりの顔を見つめながら強く訴えました」

 こうした話ができるのも、入学するまでに、世界型人材をめざすための努力をし続ける決意を固めているからに他なりません。学校を挙げて道徳教育に力を入れており、校風が厳しいと認識されることもある同校ですが、「保護者が覚悟を決めているからこそできるのです」と竹澤校長先生は語ります。

「新入生の保護者には、入学手続きが終了した2月11日の新入生登校日に、必ず生徒と一緒に出席していただいています。そのなかでは、私から本校の教育について話をさせてもらっていますが、もし学校の教育方針に異論があれば、入学を辞退してくださいと伝えます。辞退者は誰一人おりません。なぜなら、既に保護者が本校の教育に賛同し覚悟を決めているからです。大事なのは、家庭においては、どうやって親が子どもたちに指針を示すことができるかです。学校においては、どのように生徒たちへ指針を示し、背中を押してあげられるかです。学びの骨格となる幹をどうつくるのかが、特にウィズコロナ、アフターコロナの時代に重要なのです。今年から来年にかけての本校の教育が、生徒一人ひとりの未来を確実に切り拓いていくとの信念を持ち、生徒と向き合っています」

校内の主要な出入り口に3台のサーマルカメラが設置されています。校内の主要な出入り口に3台のサーマルカメラが設置されています。
7月上旬の第2回『校長講話』の様子。座席の間隔を1席分空けて行われました。7月上旬の第2回『校長講話』の様子。座席の間隔を1席分空けて行われました。
20年先、30年先の未来へ
独立自尊の道を歩もう!

 学校創設時から江戸川学園取手では人間教育を大切にし、特に中学校を併設して一貫教育校となってからは、『道徳』を心の教育の土台として位置づけてきました。現在も中1生には年17回の道徳の授業があり、年6回の『校長講話』および「まとめ」「発表」を合わせて、一年間で計25回実施しています。すべて70分授業です。

 7月上旬、中1生にとって2回目となる『校長講話』が開催されました。テーマは『「学問のすすめ」…福澤諭吉の思想に学ぶ』で、「キーワードは20年、30年先を見据えよ」というものです。

「中1の生徒が、20年先、30年先を見据えるというのは、ものすごく意味があることです。単なる20年後、30年後ではないのです。例えば、本校には入学の段階から医師になることを志す生徒が何人もいます。では20年後、30年後に自分がどうなっているのか、具体的な自分像を描けるのかどうか、そのようなものの考え方、自分の未来設計図を描いてもらいたいのです。
 今日の講話の意味はここにあります。なぜなら、福澤諭吉は『学問に志し、独立自尊の道を歩め!』と、後世の子どもたちにメッセージを送っているからです。その姿勢は『学問のすすめ』そのものであり、彼自身が有言実行の人であったことの証明でもあります」

 この日の講話の中で、竹澤校長先生は福澤諭吉の『学問のすすめ』にまつわる『長沼事件』に触れました。長沼事件とは、明治5年に旧・印旛郡長沼村(現・千葉県成田市長沼)で起こった、長沼の利権をめぐる係争のことです。竹澤先生にその概要を解説していただきました。

「長沼周辺に点在する15の村が地元である長沼村の意見を聞かず、共有地にするため長沼の官有地化を県に申請したことが発端でした。県は独断でそれを了承してしまったことから、先祖代々漁業を糧としてきた長沼村の人々は困窮に陥ることになってしまったのです。ある時、長沼村の代表である小川武平という人が、長沼の利権を回復させようと役所へ請願に行った帰り道、偶然にも夜店で購入した本が『学問のすすめ』でした。彼はその内容に感銘を受け、やがて上京して福澤に事件の収拾を託しました。福澤は請願書の案文制作を指導したり、政府高官に書簡を送ったりして、献身的に支援しました。それから紆余曲折もありましたが、ついに四半世紀後の明治33年3月、内務大臣により正式に無償払い下げの許可が下り、長沼村の利権が回復したという出来事です。福沢諭吉は、村民に学問の大切さを説き、500円を寄付して長沼小学校(現在は長沼保育園)の開校を実現させています。福澤諭吉の生涯を語るとき、一般的に長沼事件はあまり知られていない一地方の話です。しかし、福澤自身が初志貫徹の人、有言実行の人であったという証明として、また本校の近くに『学問のすすめ』を土台とした歴史的事件があったという史実を、生徒たちに理解してほしいと考え、取り上げました」

規律を重視する同校。校長講話は礼で始まります。規律を重視する同校。校長講話は礼で始まります。
『校長講話』を集中して聞く生徒たち。真剣なまなざしでメモを取っています。『校長講話』を集中して聞く生徒たち。真剣なまなざしでメモを取っています。
グランドデザインを示して
New江戸取はさらなる高みへ
『Sakura Arena』の外観『Sakura Arena』の外観

 2020年4月、創立40周年記念事業の一環として3年前から建設に着手していた総合体育館『Sakura Arena』が竣工しました。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、臨時休校が延長された期間中の出来事でしたが、これまでの学校体育館とは異なるその威容は、竹澤校長先生からのビデオレターとして全生徒に向けて発信されました。

4月に竣工した『Sakura Arena』の観客席にて。4月に竣工した『Sakura Arena』の観客席にて。

「Sakura Arena の外観や内部の映像を流した後、私が最後に伝えたのは、『ピンチをチャンスに変えた時、諸君の夢は手の届くところまで来ています。頑張れ、江戸取生! 皆さんの登校を待っています』というものです。『健全なる精神は健全なる肉体に宿る』の諺のように、若い時に身体を鍛えるための最良の環境を用意することが必要です。体育系の大学施設にも劣らないSakura Arenaが本校の施設として新たに加わり、未来を力強く見据えたNew江戸取へと、さらなる成長をめざします」

「規律が人をつくる」という強い確信のもとにスタートした同校は、次の時代をどのように思い描いているのでしょうか。

「創立40周年を機に第2タームに入っている本校は今、生徒たちの主体性や自主性を育成することに重きを置くように舵を切って3年目になります。1年目、2年目と改革を進めてきたことが、今年大きな成果を出せると期待しています。今年度、世界型人材の育成を教育目標としてグランドデザイン(学校教育全体構想図)を策定したのも、本校の教育のさらなる実効性を高めるためです。世界型人材として育成すべき5つの資質・能力を「えどとり力」としてまとめました。このグランドデザインが、本校の教育の明確な道しるべになっていきます。
 一方、新型コロナウイルスのような、予測できない新たな難問に立ち向かうべく、SDGsと連動させた本校独自の探究学習(『江戸取探究学習』)にもここ数年、力を注いできています。さらに、教育改革の一環として、50分授業から45分授業への移行によって生まれた“空き時間”を有効活用した放課後の自由選択講座『アフタースクール』も、今では全157講座を用意できるまでに成長し、生徒たちはアクティブラーニングの学習者として、高大連携事業や企業とのコラボレーション事業に嬉々として参加しています。これらの取り組みの中には一朝一夕では結果があらわれないものもありますが、20年先、30年先のさらなる高みをめざす、New江戸取独自の新しい挑戦が始まっています」

■えどとり力(世界型人材の資質・能力ベースの定義)

世界型人材をめざすべく、2020年度に策定された注目の『グランドデザイン』(学校教育全体構想図)。
世界型人材として育成すべき資質・能力の根幹となるものを、『えどとり力』として定義しています。

①徳性&品格 ②主体性&リーダシップ ③社会貢献&仕事力 ④コミュニケーション&コラボレーション ⑤知見&教養
資質・能力 1 思いやり 1 主体性 1 持続力 1 傾聴力 1 自己啓発力
2 規律 2 統率力 2 課題発見力 2 親和力 2 メタ認知能力
3 礼儀 3 判断力
(大局観)
3 計画力 3 協働力 3 論理的思考力
(ロジカルシンキング)
4 正義感 4 創造力 4 実行力 4 交渉力 4 批判的思考力
(クリティカルシンキング)
5 自制心 5 発信力 5 社会奉仕精神 5 社会参画力 5 市民性
(シティズンシップ)
7つの習慣 最優先事項を優先する 主体的である 終わりを思い描くことから始める Win-Winを考える まず理解に徹し、そして理解される
まず理解に徹し、そして理解される シナジーを創り出す 最優先事項を優先する まず理解に徹し、そして理解される 刃を研ぐ
刃を研ぐ シナジーを創り出す
学びみらいPASSコンピテンシー 感情制御力 統率力
自信創出力
行動持続力・課題発見力
計画立案力・実践力
親和力
協働力
行動持続力
課題発見力
学びみらいPASSリテラシー 課題発見力
構想力
情報収集力
情報分析力
■「江戸取探究学習」 6年の流れ
基礎期 中1~中2の間に探究メソッドの基礎を身に付け、課題発見・情報収集・情報分析・問題解決・表現技法までの流れを学ぶ。
充実期 中3~高1の間で、個人のテーマを決定し実習への足がかりを作る。
発展期 高2~高3の間で、具体的な実習を重ねて成果を発表する。最終的には活動報告として論文・レポートにまとめ上げる。
■自らの道を自らの力で切り開ける能力習得へ

TOPIC
両親に感謝し独立自尊の道を歩め!
~第2回校長講話より

 医科ジュニアコース79名、東大ジュニアコース80名、難関大ジュニアコース154名の計313名が、校内一の大ホール『オーディトリアム』に集合して行われた今年度第2回目の『校長講話』。竹澤校長先生が特に熱く強調したポイントの一つが、福澤諭吉を育てた母親の存在でした。

「『福翁自伝』には、父親は1歳半の時に死んでいないけれども、母親がその代わりとなって厳しく愛情を持って育ててくれたから今がある。父親は常にいるようなものだったとの趣旨の表現が出てきます。野口英世もそうでしたが、やはり親の教育への関わり方は子どもの成長にとって影響力が大きく、人間性を磨くうえでも素晴らしいものです。今年度入学した34期生は、全員が20年先、30年先の自分の未来像を思い描き、初志貫徹の志で切磋琢磨を始めたところです。これから生涯をかけて、両親に感謝しながら、自ら求めた道を独立自尊の心で歩み続けることを大いに期待しています」

先生のホンネ
困難な時こそ明確な目標を示すことが重要なのです
竹澤校長先生

 2020年6月中旬、江戸川学園取手では例年通り中間試験を実施しました。

「学校での授業は十分にできないけれども、中間試験を一つの目標に、自分で勉強しなければなりません。このような姿勢こそ、まさに1歳半で父親を亡くすという逆境にも屈せず、自らの20年、30年先を見つめ、学び続けた福澤諭吉の姿勢と重なります。コロナ禍の中で、中間試験を見送る学校も多かったようですが、本校は『こういう時だからこそやる!』のです。困難な時こそ、明確な目標を示すことが重要だからです。結果として、オンライン授業でも概ねシラバス通りに進行することができ、学習進度も特に問題ありませんでした。
 試験が終わり、その結果を見てみると、成績は全体的に高く出ていることにも驚きました。もっと言うと、普段の定期試験以上に素晴らしい内容だったのです。家庭でのオンライン授業が主となっても、誰一人その環境に甘んじるのではなく、むしろ特別な緊張感をもって学び続けていたところに、本校生徒のプライドを感じました。本校では、毎日生徒が自分の学習時間を学習アプリに入力していました。ちなみに、入学式しか出ていない中1の5月末までの自宅での平均学習時間は、一日平均7.3時間でした。また、休校期間中に一人も欠席者を出すことなく、完全勝利したところに、新入生たちの頼もしさを実感しています」

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