私立中高進学通信
2020年特別号
コロナに負けない!私学のアクション
鷗友学園女子中学校
鷗友生の仲間たちが休校中に強めていった絆
オンライン授業で改めて知った学校の楽しさ
“幕の内弁当”のような鷗友学園女子の奮戦記

新型コロナウイルス感染拡大防止の影響を受けて、3月2日以降は休校となってしまった鷗友学園女子中学校。そんな中、先生方はピンチをチャンスに変えるべく、手探り状態ながらもていねいなオンライン授業で生徒との信頼関係を構築。上級生も新入生を心から励まそうと、心温まる動画でエールを送ってくれました。コロナ禍の完全収束にはもう少し時間がかかりそうですが、信頼感で結ばれた鷗友生は誰一人欠くことのできないピースとなって、著しく変化した“Withコロナ”の時代を走り続けています。
人とのつながりを重視した
オンライン授業
2020年4月27日、鷗友学園女子中学校では今年初めての中1の授業がオンラインでスタートしました。そして6月5日、分散登校が始まりました。奇数クラスは登校しての対面授業、偶数クラスは登校しないオンライン授業での分散型でしたが、先生方にとっても手応えを感じる第一歩だったようです。
「4月18日にZoomを用いた『オンライン入学式』(高校は『進学式』として別開催)を行い、実質的な“クラス開き”となる4月21日からは、毎朝8:35からのオンラインによる朝礼を含めた学校生活が始まりました。しかし、本校は人とのつながりをとても大切にする学校ですので、画面上で会話をすることができても、微妙な言葉のやり取りについては難しいことを痛感した数カ月でもありました。教員たちは生徒一人ひとりの顔を思い浮かべながら、教材発送からオンライン授業の製作にいたるまで、手探り状態の中でも一つひとつていねいに取り組んで迎えた6月5日でした。その分感慨もひとしおです」(大井正智校長先生)

朝礼は毎朝8:35にスタート。学校に行くことができなくても、いつもと同じ時間から新しい1日がスタートします。

こちらはZoomによる英語のオンライン授業の様子。「勉強時間が増えた」との生徒たちの声に先生方はやりがいを感じています。
文系・理系のどちらかに偏ることなく、生徒の個性も豊かに多様な進学実績を誇る同校では「主要5教科」という言葉は使わず、すべての教科で生徒との触れ合いを意識しながらの授業を展開しています。オンライン授業でもその考えは変わりません。
「その具体例の一つが、中1と高1にある『園芸』の授業です。オンライン授業が始まる前に教材が生徒のもとに届くよう、ラディッシュの種や鉢の発送にも教職員が一丸となって取り組みました。本校には『鷗友徒然草』という学園ブログがあり、四季折々に成長する植物たちを紹介する『学園の植物』と連動させながら、ラディッシュの成長を楽しんでいる生徒もいます。一方、オンラインを通じた『体育』では動画を視聴し、まずはダンボールで卓球のラケットを作りました。その後、送られてきたピンポン玉で家族と一緒に卓球を楽しみました。登校して体育館で汗を流す感覚とは異なるものですが、クラスメートも教員もそして家族もみんなでこの時間を共有する喜びにあふれていました」

『園芸』は中1と高1が取り組む同校の伝統授業。今年度もラディッシュの種まきから新しい春が始まりました。

園芸Web授業用の園芸キット。自宅に届いた箱を開ける際の様子を、愉快なリアクション付きの動画にして送ってくれた生徒もいたそうです。
オンライン上の「クラスづくり」で
双方の信頼感がUp!
生徒たちはオンライン授業について、どのような感想を持っているのでしょうか。高2の担任を受け持っている広報部の若井由佳先生にお話をうかがいました。
「休校中もZoomを活用した個人面談を通して、一人ひとりの状況をヒアリングし、場合によっては心のケアなどにも努めてきました。その中で興味深かったのは、『勉強時間が減った』という声は予想に反して少なく、むしろ『勉強時間が増えた』という声が数多くありました。私が受け持つ生徒が中学生ではなく、高2ということもあるとは思いますが、学校で顔を合わすことができない分、“友達はもっとがんばっているのではないか だから私もがんばろう”という不安と前向きな気持ちが入り混じっていたのではないかと見ています」
オンラインで学校や友達とつながっているとはいっても、登校できない環境下では、心理的に孤独になりがちです。そのような中で、新年度が始まってから数カ月間、若井先生たちはとくに“クラスづくり”を意識し、オンライン環境の整備に努めてきました。
「例えば、いくつかのオンライン授業を体験した後、WebサービスのGoogle Classroomを使い『オンライン授業の感想を聞かせてください』と投げかけると、生徒たちはすぐに“もっとここはこうしたほうがいい”などと、建設的な意見を返してくれました。時には、『首が痛くなった』『早く友達に会いたい』など、弱音のような言葉が返ってくることもありましたが、そんな時には、『本当だね』などと共感して現実を共有したうえで、『もう少しがんばってみようか』などと励ましながら、少しずつクラスづくりをしてきました。顔を合わせて話ができないので、互いにコミュニケーションを取ることは難しかったのですが、そのような小さなことを積み重ねて、双方の信頼感が強くなった印象です」

クラスのClassroom
連絡事項をきめ細やかに伝えるGoogle Classroom。オンライン授業の感想など、活発に意見交換する場にもなっています。
上級生は中1の「やりたい」「知りたい」を
全力で応援!
2カ月弱に及んだ休校中、生徒間の絆を深めることに一役買ったのは先生方ばかりではありません。校友会を中心とした上級生たちが積極的にオンラインを活用して学校生活を盛り上げました。
「4月18日に行われた『オンライン入学式』を盛り上げたのは、中高の上級生たちです。中学入学式では、毎年、管弦楽部の部員がヴィヴァルディの『春』を演奏しています。今年はオンライン配信になったため、各自が自宅で録画・録音したものを一つに合わせて演奏しました」(大井校長先生)
同校には学年ごとに「色」があり、今年度の中1の学年色は「黄色」です。上級生たちは黄色が持つ明るく自由なイメージに新入生をなぞらえ、動画で声援を送ってくれました。そんな中から生徒の声を代表して、校友会会長(高2)から“黄学年”に送られたあいさつを紹介します。
「さまざまな混乱や変化の波の中で、新入生の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。新入生ならびに保護者の皆様、ご入学おめでとうございます。新入生の皆さんが健康な状態で今を迎えられてことにホッとしています。私をはじめとする鷗友学園女子の生徒は、新入生の皆さんを歓迎します。
鷗友学園女子は、一人ひとりが自分の場所を持っていると考えています。生徒や友人の前で、班の中で、一人ひとりが笑い、安らげる場所を持っています。皆さんもこれからの学校生活の中で、自分なりの場所を見出せると思います。
私から一つ、皆さんにこれからの学校生活の中で心がけてほしいことがあります。それは、自分の『やりたい』という気持ちを、大切にしてほしいということです。鷗友学園には、皆さんの『やりたい』という気持ちを応援してくれる人や環境があります。ですからまず、その一歩目として、皆さんがこの学校のことを『知りたい』と思った時には、私や上級生に声をかけてください。私たちは皆さんと同じ鷗友生の一員として、その「知りたい」という気持ちに全力でお応えすることを約束します」
鷗友学園の学びは
唯一無二の“幕の内弁当”のようなもの⁉
本来であれば、中1は3日に1回の席替えで友人関係をつくりながら、アサーションプログラムを通して自己肯定感を養っていくというのが、同校の中1の始め方です。ほかの学年の生徒にとっても、望んでいた春とは異なるものになってしまったことでしょう。そのような中で、鷗友学園女子の生徒たちはどのように過ごしているのでしょうか。
「例えば、高2の私のクラスの生徒たちは、すでに例年通りに学園祭が開催できないことを感じ取っています。だからといって諦めることはせず、実行委員長は全校生徒に向けて、YouTubeである動画を発信しました。それは、『新しい学園祭に向けて準備を始めます!』という力強いものでした。高3からは、『感動で涙が出ました』『私たちも全力で応援するからがんばって』とのエールが届きました。同学年からは、『何ができるのですか?』という現実的な質問もあれば、『私も一緒にがんばるぞ』との声が上がりました。多くの中学生たちは戸惑っている様子でしたが、本校の学園祭に来て受験を決めたという生徒が多いこともあり、『どんな形でも学園祭を楽しみにしています』という率直なコメントが目立ちました。学園祭実行委員会の生徒たちは今、全校生徒から元気をもらって、これまでにない新しい形での学園祭を企画しています。中学受験をする皆さんにも注目していただきたいと思っています」(若井先生)
どんな状況下に置かれても、一人ひとりに居場所が与えられるからこそ切り拓かれる未来があります。今回、明るく元気な鷗友学園女子の生徒たちが、それを教えてくれたと先生方は話します。
「本校の学びは、一言で言うと“幕の内弁当”のようなものなのです。何を言い出すのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、お弁当箱の中に多種多様な学びが詰まっているからこそ味わい深いのです。英語や数学といった教科も、芸術や園芸などの実技も、席替えも学園祭などの学校行事も、部活動や委員会活動も、そして、友達とのおしゃべりもみな、お弁当をおいしくいただくための大切なメニューなのです。味付けもまた多種多様で、喜怒哀楽の出来事がたくさんあるから充実しているのです。うな丼やかつ丼もおいしいですが、本校の学校生活は、最高の食材を使って、一つひとつていねいに仕上げた唯一無二の幕の内弁当です。そのおいしさを6年間たっぷりと味わいながら、さらにその先をめざして走り続けてほしいですね」

「幕の内弁当」のイメージ
鷗友学園女子の学びは「幕の内弁当」。
個性豊かな生徒たちの多様な活動の一つひとつが凝縮されて、おいしいお弁当になるのです。
鷗友学園の休校期間中の状況と現在まで
3月2日~ | 後期期末考査中止。以降休校へ。自宅学習用の課題を配布 必要に応じて、個別に面談や補習を行う |
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3月21日 | 午前:終業式、教材・課題の配布(配布に間に合わなかった教材は自宅に配布) 午後:卒業式(規模を縮小して実施) |
4月13日~ | 中学生:オンライン授業に向けての準備。Zoom講習会などを実施 高校生:オンライン授業の先行実施 |
4月18日 | オンライン入学式 |
4月20日 | オンライン始業式 |
4月27日 | 全校オンライン授業の本格実施(朝礼は8:35開始) |
6月5日 | 分散型従業を開始 |
鷗友学園女子中学校
〒156-8551 東京都世田谷区宮坂1-5-30
TEL:03-3420-0136
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