私立中高進学通信
2019年神奈川版
THE VOICE 新校長インタビュー
森村学園中等部
『言語技術』の授業や英語力の向上で
生徒たちを世界へ羽ばたかせたい

江川 昭夫 (えがわ・あきお)校長先生
佼成学園女子中学高等学校、佼成学園中学校・高等学校で英語科教諭、
教頭などを経て、2016年4月より大阪のアサンプション国際中学校高等学校の校長に就任。
校名変更や共学化、21世紀型教育の導入など学校改革に取り組み、
入学者数の大幅増など数々の実績を残す。2019年4月より森村学園中等部・高等部の校長に就任。
どんな状況でも自分で考えて
課題を解決できる
それこそが『グローバル人財』
本校の校長に赴任して2カ月が経ちますが、自然豊かで広大なキャンパスの中で、先生も生徒ものびのびと過ごしている印象を抱きました。教員はとても熱心ですし、生徒は素直で明るく礼儀正しい。先日、体育祭の表彰式で私が副賞を授与した時も、「ありがとうございます!」と、ごく自然にお礼を返してくれました。男子生徒からも女子生徒からも、育ちの良さを感じます。
本校には100年を超える歴史によって育まれた良き伝統があります。一方で、社会の多様化やグローバル化が進む中で、「良き伝統」を越えて取り組まねばならないこともあります。学校として、来るべき未来を見据え、変化する社会に対応できる資質・能力を育てていかねばならないからです。
めざすのは、未来志向型教育による『グローバル人財』の育成。英語やICTのスキルなども大切ですが、核となるのは「どんな状況でも自分で考えて課題を解決できる力」です。
私は昨年、大阪で地震災害と豪雨災害に遭い、ライフラインが途絶えるなど、大変な状況を経験しました。そのような何が正解になるかわからないような場面でも、使命感や思いやりを持って、リーダーシップを発揮できる人間を育てたいと思います。そのためには、知識を着実に定着させつつ、「考えさせる授業」を展開していく必要性があります。
ALやPBLの土台となる
『言語技術』の授業
現在、多くの学校がAL(※1)やPBL(※2)を実施していますが、そのほとんどは苦労されているように見受けられます。その理由は、母語、とりわけ日本語での対話やプレゼンテーションに必要となる論理的思考力や分析力、説明力などが育っていないからだと思うのです。
本校ではそうした力を高める取り組みとして、『言語技術』の授業を10年近くにわたり実施してきました。生徒たちは「物語の再現・要約・創作」「意見文・小論文」「テクストや絵画の分析」「さまざまな説明スキル」「対話の技術・ディベート」などを体系的に学んでいます。そうした土台があるからこそ、本物のALやPBLの授業が行えるのです。私自身、『言語技術』に魅力を感じたからこそ、この学校に来たと言っても過言ではありません。
『言語技術』を高めれば、国語力はもちろん、英語を活用した表現力の幅も広がります。また、論理的思考力がつくことから、理数系教科の学力も高まります。『言語技術』には限りない可能性があり、その強みを最大限に活かした授業を各教科で展開していきます。また、英語を活用した『言語技術』の授業も考えています。こうした実践を今後の10年も継続していくことで、どれほどの人財が育っていくのか非常に楽しみです。
※1 AL(Active Learning)…アクティブラーニング。学習者である生徒が受け身ではなく、自ら能動的に探究し、学ぶことができる授業を行う学習法。生徒に問題を発見させ、考えさせる課題解決型学習やグループワーク、ディスカッション、体験学習、フィールドワークなどがアクティブラーニングの授業手法としてよく知られている。
※2 PBL(Problem Based Learning)…課題解決型学習。生徒自らが問題を発見し、解決する能力を養うことを目的とした教育法で、教員は助言などのサポートに徹します。アクティブラーニングの教育法として注目されています。
本校での実践を
教員人生の集大成にしたい
江川校長が考える未来志向型教育
『グローバル人財』に必要な資質
- どんな状況でも自分で考えて課題を解決できる力
- 世界共通言語である「英語力」
- どんな場所でも眠れて、好き嫌いなく
何でも食べられる「たくましさ」
海外大学への進学者を増やすことも目標の一つです。その一環として、今春に『協定校推薦入試制度』(※3)に加盟をしました。
本校の創立者である森村市左衛門は、幕末・明治という激動期にアメリカへわたり、日米貿易を切り拓いた人物です。そんな学校だからこそ、世界へ羽ばたき、いずれは日本に戻ってきて社会に貢献してくれるような人物を育てたいと考えています。
そのためには、世界共通言語である英語力の向上が不可欠です。英語力を高めるには、なるべく早い時期から英語に慣れておく必要があり、英語に「浸る」、英語イマージョン教育も必要だと思います。
もう一つ、世界で活躍するには「たくましさ」も必要です。ベースとなるのは「どんな場所でも眠れて、好き嫌いなく何でも食べられる」精神的強さです。海外研修・留学制度の充実も図りながら、そうした資質も育てていきたいと思います。
私は仏教系の学校、キリスト教系の学校を経て、本校の校長となりました。どの学校においても、共通して取り組んできたのは世界平和に貢献できる人物の育成、「未来志向型教育」であり、すなわち『グローバル人財の育成』です。これから先、本校で展開する教育の実践を、約40年にわたる教員人生の集大成にしたいと考えています。
※3 協定校推薦入試制度…海外大学が優秀な日本人学生を受け入れる目的で設けた特別入試制度。生徒は各大学が設ける成績基準を満たし、学校推薦を受けることで、協定大学へ出願できる。

[沿革]
1910年、日米貿易の先駆者・森村市左衛門により創立。自然に囲まれた広大なキャンパスを備え、同じ敷地内に併設の幼稚園と初等部(小学校)がある。特色ある実践として、2012年より実施している『言語技術』の授業、欧米諸国の生徒とともに過ごす『マルタ島グローバル研修』などがある。『獨立自營』を建学の精神に、『正直・親切・勤勉』を校訓としている。
(この記事は『私立中高進学通信2019年神奈川版』に掲載しました。)
森村学園中等部
〒226-0026 神奈川県横浜市緑区長津田町2695
TEL:045-984-2505
進学通信掲載情報

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