私立中高進学通信
2019年12月号
実践報告 私学の授業
神田女学園中学校
知識と教養、品格を身につける
『KANDA流リベラルアーツ教育』
自分と社会を幸せにするための最適解を導き出す

授業では、ディスカッションが日常的に行われています。意見を述べ合うことが当たり前の学習環境がここにはあります。
母語で考えを深め
解が一つでないテーマに挑む
『革新的女子教育』をコンセプトに掲げる同校では、自分のためだけでなく周囲や社会全体の最適解をめざすための教育を行っています。さまざまな課題を抱える社会において、「どうすれば人々は幸せになれるのか」「自分に何ができるのか」「その最適解は何か」を考える教育に力を入れているのが、同校のリベラルアーツ教育です。校長の宗像諭先生は、その学内での定義を次のように話します。
「社会における最適解を導き出すには、ただ知識を深めるだけでなく、学んだことを組み合わせたり応用したりする必要があります。まずは基礎学力をしっかりと身につけ、そのうえで教科の枠を越えた学びにより、解が一つでないテーマについて考えを深める。それが本校独自のリベラルアーツ教育です」
普段の授業の中でも、興味深いテーマを見つけたら、教科の枠を越えたトリガークエスチョンを投げかけます。例えば体育の授業で「選手を励ますために効果的な声掛けを考える」という国語的なアプローチや、古文の授業では「古典に出てくる植物が食用か否かを文献や図鑑で調べる」など、身近なところから、知識の活用に慣れていきます。
「こうした学習を進めていくと、生徒たちに、どうすれば良くなるんだろう、なぜだろうという思考が生まれます。そうした思考から、テーマについてみんなで話し合ったり、仮説を立てて自分の考えをまとめ上げたり、自分の意見を発表したりできるようになります。好奇心をくすぐられるのか、楽しそうに授業に臨んでいます」
身につけた知識を活かし、自分の意見を相手に伝えるには言語運用能力も欠かせません。英語や第二外国語の習得にも意欲的な同校。最も力を入れているのは母語、つまり日本語の使い方です。
「自分の考えを深め、相手に伝えるために重要なのは母語です。だからこそ、本校では普段から母語の運用を重視しています。プレゼンテーションやディスカッション、授業中での発言はもちろんのこと、学校生活すべてにおいて言語能力を高めるよう意識しています。そのうえで、より多くの人に意見を伝えるためのツールとして英語や第二外国語を学んでいくのです。
もちろん英語でプレゼンテーションができるレベルまで指導していますので、本校の生徒は母語でも英語でもしっかりと自分の考えを伝えることができます」
最適解を具体化するためにアクションを起こす
通常授業でのリベラルアーツ教育と並行し、週2時間の探究学習『ニコルプロジェクト』も設けています。自然科学、文化、ライフの3分野から生徒たちがテーマを設定し、1年間かけてグループで最適解を考えるプロジェクトです。
「社会の諸課題に対して、先人の取り組みや現状を受けて、我々に今何ができるのかを考えていきます。ただ考えるだけでなく、行動に結びつけるのがこのプロジェクトの特徴です。
髪の毛を寄付するヘアドネーションを研究するグループなら、活動を行う方に取材をしたり、自ら参加したりすることも。ほかにも企業訪問や実験観察など、具体的なアクションを起こします」
3月中旬には1週間にわたる『ニコルウィーク』を設け、プロジェクト学習の集大成として実際にアクションを起こし、ポスターセッションを行います。最終日には、関係者を招いたプレゼンテーションも実施。その成果を、翌年以降の研究に役立てていきます。
「不透明、不確実な社会だからこそ、一人ひとりが自分なりの答えを見つけなければなりません。そのためには、自分の哲学、価値観を持つことも必要です。
本校でのリベラルアーツ教育を通じて深い知識と広い教養、品格を備え、自信を持って自分の考えを伝える力を養ってほしいと願っています」
教科の枠を越えた学びで社会課題の最適解を導き出す
STEP1
言語運用能力をベースにしたリベラルアーツ教育

「自分と周囲を幸せにする学び」をめざす同校では、リベラルアーツ教育に力を入れ、社会の最適解を見つけるための知識と教養を培っています。そのために重視しているのが、言語運用能力です。社会課題に対し、自分なりの答えを出すには母語で考えることが重要。母語で考えを深め、自分の意見を伝えるために、学校生活全体を通じて言語教育を意識した教育を行っています。
STEP2
テーマについて調べ、行動を起こす
探究学習『ニコルプロジェクト』

中1~高2生は、週2時間の探究学習『ニコルプロジェクト』に取り組んでいます。これは、少人数グループに分かれてテーマを設定し、仮説に基づいて取材・研究をしたうえで、自分なりの考えを探るプログラム。女性の社会進出、ジェンダー、海洋ゴミなどさまざまなテーマに取り組んでいますが、なかでも宗像校長先生が面白いと感じたテーマは、シンガポールの農業だそうです。
「シンガポールは国土面積が狭く、マレーシアから農作物を輸入しています。その一方でビニールハウスをビルのように組み立て、都市型農業を行っている人もいるそうです。このシステムを日本に応用すれば、食料自給率の向上に貢献できるかもしれません。今後のアクションも楽しみなテーマです」
3月の『ニコルプロジェクト』では、1年間の成果を発表。生徒たちの課題解決力、主体的に学ぶ力を伸ばしています。



(この記事は『私立中高進学通信2019年12月号』に掲載しました。)
神田女学園中学校
〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-3-6
TEL:03-6383-3751
進学通信掲載情報

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