私立中高進学通信
2019年11月号
先達の意志
玉川学園(中)
本物に触れながら人間の本質を
バランスよく伸ばす教育
創立者である小原國芳が提唱した『全人教育」を教育理念に据える同校。
人間の本質に必要な“6つの価値”を備えた人材の育成をめざした教育を実施しています。

創立者 小原國芳
1929年、小原國芳は私財で東京都町田市の緑豊かな丘陵地を購入し、同校を設立しました。当時、その地には小田急線の駅はありませんでしたが、小原國芳は「良い教育をすれば電車も停まる」と考え、小田急電鉄に駅舎を寄付し、停車にこぎつけました。
生徒111人と教職員18人が教育活動を行いながら一丸となって道路を開き校舎を建築。 “寺子屋”から出発した同校は、現在、幼稚部から大学院まで約1万人が通うキャンパスに発展し、総合学園として教育研究活動を展開しています。
6つの価値を備え持つ
“全人”を育てる教育活動

1887年に鹿児島県で生まれた小原國芳は、鹿児島師範、広島高等師範を卒業しました。1913年、香川師範教諭。京都帝国大学に進み、1918年に哲学科を卒業。広島高師教諭となりました。翌年、成城小学校の主事、1926年に七年制成城高等学校校長を務めた後、「全人教育」の理念に基づき同校を創立しました。
全人教育は大正時代に生まれた思想で、小原國芳は「人間の形成には、真(学問)・善(道徳)・美(芸術)・聖(宗教)・健(身体)・富(生活)の6つの価値を調和的に創造することを必要とし、それらを有する人間(全人)を育てることが教育の理想」と提唱しました。この理想を実現するため、同校は12の教育信条 (①全人教育、②個性尊重、③自学自律、④能率高き教育、⑤学的根拠に立てる教育、⑥自然の尊重、⑦師弟間の温情、⑧労作教育、⑨反対の合一、⑩第二里行者と人生の開拓者、⑪24時間の教育、⑫国際教育)を掲げた教育活動を行っています。
小原國芳は、生徒たちに「大きな夢を持つこと」の大切さを説きました。生前、彼が最も多くしたためた書の一つが「夢」という文字で、 “タ”の部分が一画多いことが特徴です。ここには「ほかの人より一つでも多くの夢を持ってほしい」という願いが込められています。
形を変えながらも
普遍の教育理念

戦前より小原國芳は、スキー教室の指導者として第一人者を招聘したり、礼拝堂にオルガン製作世界一の企業のパイプオルガンを購入・設置したり、教育に対して何も惜しまず、新しいことに挑みました。現在もSTEAM教育を取り入れて最先端の科学技術を実践的に学ぶなど、創立者の姿勢は、同校に脈々と受け継がれています。また、子どもの心身の発達段階に合わせて採用している、幼稚部(年少〜年長)・小1〜小4・小5〜中2・中3〜高3の4・4・4制も、小原國芳が生前すでに提言していたものです。
自らも同校で学んだ学園教学部長の渡瀬恵一先生は、次のように話します。
「全人教育と12の教育信条はこれからも変わりませんが、その一つひとつのアプローチは時代に則して変えていかなければなりません。例えば師弟がともに常時学ぶ『24時間の教育』については、20年以上前からネットワーク化を進め、生徒・親・教員が学校以外の時間もコミュニケーションを取れるようにしています。また、自学自律の姿勢を身につけるために、自由研究などの探究型学習を取り入れています」
時代や環境に合わせて教育を変えながらも、子どもたちの本質は変わらないと渡瀬先生は言います。
「今の子どもたちは冷めていると言う人がいます。それは、現代は多くの情報が手に入りやすく、子どもたちがいろいろなことを知っているからです。でも、心を揺さぶられる体験をした時、子どもたちは本気で感動します。小原先生は “本物に触れる”教育を重視していました。本校ではさまざまな行事や正課外のプログラムなどを用意しています。心が動くことで、自学自律に結びつくのです」
創立90周年を迎え、今後は創立100周年に向けて新たなる「夢」にもチャレンジし、教育・研究活動のさらなる充実を図ります。この先も生徒と教員が一体となり、新たな歴史を刻んでいくことでしょう。


サイエンスクラブの生徒が、日本学生科学賞中央最終審査で環境大臣賞を受賞。
世界大会のWorld Robot Summitでも優勝しました。
理科教育拠点サイテックセンターでの学年を越えた活動は技術だけではなく研究に対する姿勢も学びます。


芸術専門棟のアートセンターに設置した3Dプリンターを使用した授業を展開しています。
3Dソフトの使用方法など最先端の技術に触れることができます。
玉川学園の歩み
1929年 | 玉川学園設立、玉川学園開校式生徒111人、教職員18人 玉川学園教育研究所(現 学術研究所)開設 |
---|---|
1947年 | 大学令による玉川大学(文農学部)設置認可、旧制最後の大学 新制中学校令による玉川学園中学部設置認可 新制小学校令による玉川学園小学部設置認可 |
1948年 | 新制高等学校令による玉川学園高等部設置認可 |
1949年 | 新制大学令による玉川大学(文学部、農学部)設置認可 |
1950年 | 通信教育部(文学部教育学科)設置認可 玉川学園幼稚部設置認可 |
1987年 | 教育博物館開館 |
2005年 | Round Square 日本初のメンバー校に認定 |
2007年 | 玉川学園国際バカロレア(IB)クラス開設 |
2008年 | 文部科学省スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定 |
2009年 | 玉川学園が国際バカロレア機構(IBO)よりミドルイヤーズプログラム(MYP)に認定 |
2010年 | 玉川学園が国際バカロレア機構(IBO)よりディプロマプログラム(DP)に認定 |
2014年 | 文部科学省スーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定 |
2019年 | 創立90周年を迎える |
不易と流行
学習のモチベーションを高める
学習支援施設

学園マルチメディアリソースセンター(学園MMRC)は、従来の図書館機能に加えて、マルチメディアシアターのほか、映像・音楽制作スペース、ワークショップスペース、マルチメディア演習室などを配置した施設です。情報の収集や検索、作成や発信、交換・共有を実現した学習情報センターとして、生徒の学習をサポートしています。施設には専門のスタッフが常駐しており、情報の収集方法やレポートのまとめ方などを相談することができます。
(この記事は『私立中高進学通信2019年11月号』に掲載しました。)
玉川学園(中)
〒194-8610 東京都町田市玉川学園6-1-1
TEL:042-739-8931
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 海外研修や多彩な行事で絆が深まり、視野が広がる実践学園中学校
- 中高合同の学園最大イベント 生徒主体で作る『星華祭』星野学園中学校
- JOSAI Future Global Leader Program 英語力を磨き自立心を養う城西大学附属城西中学校
- ICT環境の充実 ワクワクしながら主体的に学び想像力と創造力を伸ばす女子美術大学付属中学校
- 学校説明会 行くたびに中学生活への期待がふくらむ西武台新座中学校
- 福祉体験学習 教科書では学べない豊かな感性を磨く獨協埼玉中学校
- アクティブ入試 一生懸命に取り組んできたことを活かす入試武蔵野中学校
- シアターラーニング 演劇という手法を用い表現力や協働力を高める山脇学園中学校
- 午後の活動に向かう生徒を「行ってらっしゃい」とやさしく送り出す文教大学付属中学校
- 自主性を大切に 個人の意見を尊重する品川女子学院中等部
- 学業と部活動を両立させ 人としての基礎力を育てる本郷中学校
- 普段の学校生活について 在校生の"生の声"を聞く帝京大学系属帝京中学校
- 生徒たちと触れ合える 雰囲気を肌で感じる説明会日本大学第二中学校
- 恵まれた環境の中 優れた理工系の人材を育成!芝浦工業大学附属中学校
- アカデミックな世界を肌で感じる海外大学体験芝浦工業大学柏中学校
- グローバルな力を育成する『SEC』秀明中学校
- 英語を楽しく徹底育成多彩な英語宿泊研修も実施光英VERITAS中学校(現校名 聖徳大学附属女子中学校)
- 音読で4技能を磨き世界と未来に羽ばたく東京都市大学等々力中学校
- ターム留学制度を新設海外への扉を増やす日本大学豊山女子中学校
- 世界へと視野を広げる『グローバルウィーク』麗澤中学校
- とことん試行錯誤!プログラミングを体感する共立女子中学校
- 未来につながる学びを提供SGアカデミー『未来講座』昭和学院中学校
- “つなぐ”ことで思考が深まる教科横断型の授業田園調布学園中等部
- 交流 将来のキャリアに必要な“ジェネリックスキル”を育成横浜富士見丘学園中学校
- 卒業生との本音トークで知る大学受験と大学での学び東京純心女子中学校
- 父親が学校と直接かかわり生徒の世界を広げる横浜女学院中学校
- 世界の平和に貢献できる豊かな心を持ったリーダーを育成したい東洋大学京北中学校
- 家庭科実習で養う生きる力と協働の心東京家政学院中学校
- 『IB』と『グラマー』の両輪で“世界基準”の英語力を培う昌平中学校
- 実践的な英語力を高めるネイティブと学ぶ宿泊学習横浜翠陵中学校
- 将来の夢へ、一歩踏み出すための一人ひとりに目が行き届いた進路指導大宮開成中学校
- 「卒業生の言葉が受験を乗り越える励ましに」医学部進学者に聞く真摯な受験サポート東洋英和女学院中学部
- 本物に触れながら人間の本質をバランスよく伸ばす教育玉川学園(中)
- 校内見学ツアーを生徒が担当保護者にも好評な学校説明会玉川聖学院中等部
- 自主性を尊重する校風生徒会も学校行事で大活躍横浜創英中学校


