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私立中高進学通信

2019年10月号

実践報告 私学の授業

桐朋女子中学校

多彩な授業スタイルで育てる
論理的な思考力・発想力・表現力

言葉を尽くした学び合いが深い理解と主体的に学ぶ力を育てる
数学は少人数制で進めます。グループやペアで教え合い、自分たちの言葉で理解を深めます。

数学は少人数制で進めます。
グループやペアで教え合い、自分たちの言葉で理解を深めます。

対話力があるから
内容が深く理解できる

『ことばの力を創造力に』を教育目標とする同校では、論理的な思考力、発想力、わかりやすく伝える表現力、そして主体性・協働性を養う教育活動を展開しています。

「ことば」とは日本語や英語などの言語に限らず、式や図、グラフなどの数学や理科で用いる「ことば」も含め広い概念を指します。思考力や表現力の元になるツールとしての言語力を育もうとしているのです。

 授業によって進め方や生徒の学び方が異なりますが、「ことば」という軸で見ると、めざす方向性は同じです。文系・理系といった教科の枠に捉われず、生徒の創造力を引き出そうとする授業観が背景に流れているのです。

 高1のある1日の授業を見てみると、授業スタイルが、いかに多彩かがよくわかります。

「数学A」の授業は、教員が一方的に講義をするのではなく、先に示された答えに対して「なぜそうなるのか」をさかのぼって考える授業でした。クラスメート同士で教え合い、必要な時には教員に質問する、生徒が自ら答えを探る「学び合い」です。

「理科」は、観察やデータ収集をじっくりと行う本格的な実験を多く取り入れています。「化学基礎」の授業ではワインを蒸留し、エタノールを取り出す実験に取り組んでいました。タブレット端末を活用して実験の効率を上げることで、液体の変化をじっくりと観察する時間を確保します。また、蒸留して得られた液体が何かを話し合うこともできます。

 生徒たちに共通するのは、教員とのコミュニケーションがスムーズなことです。指示がしっかり聞けるというだけでなく、問いかけられている意味が理解できる、生徒から「わかる・わからない」が発信でき、その理由も説明でき納得するまで対話し、考える習慣が身についているようです。

ことばを論理的に扱う
『言語技術』を学ぶ

 生徒の対話力が高いのには理由があります。それは、言葉を論理的思考力のツールとして伸ばす授業『言語技術』です。同校の卒業生である三森ゆりかさんが設立したつくば言語技術教育研究所のプログラムを取り入れ、言葉を使うスキルを高めています。

『言語技術』は現在、中3の「英語」、高1の「コミュニケーション英語Ⅰ」の授業の一部としてカリキュラム化されています。英語科の教員が担当していますが、その授業では英語を使いません。日本語で絵や物語を分析するように読み解き説明する、意見文や要約文の書き方などを学び、伝達の技術を身につけています。「ことば」を伝える技術を学び、身につけることで、他教科の学びを深めることができる。そうしたサイクルが、中高6年間の学びに息づいているのです。

Step 1
わかるまであきらめない
学び合いで考える「数学」

 この日の「数学A」の単元は「確率」。前回の授業で概要を学んだ生徒たち。今回の授業では、プリントを使って問題を解く演習が中心でした。齋藤裕士先生は問題や解法のヒントを与えたり、生徒の質問に答えたりとファシリテーター役に徹し、生徒たちは自由に教室を行き来して、学び合いながら問題を解いて理解を深めていきます。公式をただ覚えるのではなく、一人ひとりが言葉で説明をしながら解いていくことで、理解を深めていました。

 こうした授業が成立するには、わからないところは積極的に質問する態度が育っていないとできません。中1ではクラスを分割した少人数制で授業を行い、中2以降は習熟度別にして、一人ひとりのペースに合わせた学習進度をめざしています。

初めのうちは個人で問題を解いていました。初めのうちは個人で問題を解いていました。
解答を確認しようと教卓に集まってきた生徒同士が一緒に解き始め、解決できることも珍しくありません。解答を確認しようと教卓に集まってきた生徒同士が一緒に解き始め、解決できることも珍しくありません。
Step 2
ICT活用で考える時間を増やす
実験の多い「理科」

「理科」の授業では「本物に触れる」ことをめざし、実験や観察を多く取り入れています。高1の「化学基礎」ではワインを蒸留してエタノールを取り出す実験を行いました。デジタル温度センサーを用いながら、温度の変化をタブレット端末で記録し、効率化を図ります。ICTに任せるところは任せ、実験中に起こる変化をじっくり観察し、結果を推測し、なぜそうなったのかを話し合います。「実験に必要な広い視野や、全体的な議論をする時間的余裕が生まれることが、ICT活用の大きなメリットです」と、広報担当の山口先生は話します。

沸騰したワインから出る蒸気を冷やすと透明な液体に。これがエタノールなのですが、それを取り出す仕組みなどを考え、興味を深めながら観察を続けます。沸騰したワインから出る蒸気を冷やすと透明な液体に。これがエタノールなのですが、それを取り出す仕組みなどを考え、興味を深めながら観察を続けます。
フラスコ上部から出る蒸気の温度を測定し、加熱時間と液体の温度のグラフを作成します。従来は温度計を読み取り手書きで記録を取っていましたが、タブレット端末に接続された温度センサーを用いることで自動計測が可能になりました。フラスコ上部から出る蒸気の温度を測定し、加熱時間と液体の温度のグラフを作成します。従来は温度計を読み取り手書きで記録を取っていましたが、タブレット端末に接続された温度センサーを用いることで自動計測が可能になりました。
Step 3
「対話」「物語」「説明」「論証」「分析」の
スキルを学ぶ『言語技術』

『言語技術』の授業では、自分の意見を伝えるために、日本語で、「対話」「物語」「説明」「論証」「分析」の5つの技能を身につけます。

 例えば、1枚の風景画をその絵を見たことがない人に論理的な文章で説明するという課題で、「分析」「描写」のスキルを培います。視覚的な情報を論理的に伝える訓練です。

 相手にどんな絵かを想像してもらうためには、説明の順番にきちんと筋道が通っていなければなりません。まず、絵のテーマから始まり、描かれている要素を全体から部分へ、上から下へ、左から右へなどと順序だてて分析。その後、それを文章に書き起こしていきます。

『言語技術』を習得すると、発信力だけでなく相手の話を理解する力も身につきます。授業の中で先生と生徒との対話、生徒同士の話し合いがスムーズに進むのは、言葉を操るための技術を、トレーニングしているからなのです。

プロジェクターを使って黒板に風景画を投影し、分析していきます。どこから、どのような視点で見るのかを先生が解説していきます。プロジェクターを使って黒板に風景画を投影し、分析していきます。どこから、どのような視点で見るのかを先生が解説していきます。
絵の分析が終わったら、それを説明する文章を書きます。このとき使うのはボールペンです。頭の中でしっかりと文章を組み立ててから書くことも言葉を扱うスキルを高めます。絵の分析が終わったら、それを説明する文章を書きます。このとき使うのはボールペンです。頭の中でしっかりと文章を組み立ててから書くことも言葉を扱うスキルを高めます。
ココも注目!
授業の在り方
先生の視点
広報担当/山口舞子先生広報担当/山口舞子先生

 高1・高3の「化学」、広報も担当している山口舞子先生は、授業の在り方について「どの教員も“生徒が考える”ことを常に意識しています。理解させてもらうのを待つのではなく、自分で考えるために人の意見を聞く、知識を身につける、体験するということが重要になるのです」と話しています。

(この記事は『私立中高進学通信2019年10月号』に掲載しました。)

進学通信 2019年10月号
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