私立中高進学通信
2019年9月号
グローバル特集 授業[コース]
文化学園大学杉並中学校
カナダと日本の卒業資格を同時取得
躍進する「ダブルディプロマコース」
日本にいながらにして、カナダの高校卒業資格も取得できる同校の「ダブルディプロマコース」。創設から5年、その目覚ましい成果とは?

長文読解を行う高2のDDコースの国語「Literary Studies 10」。
教員が質問を投げかけると、生徒たちが挙手で応じます。
日本とカナダの高校卒業資格を同時取得
2015年度より、日本初の『ダブルディプロマコース』(以下DDコース)を高校に開設した同校。このコースは、日本の高校とカナダ・ブリティッシュコロンビア州(以下BC州)政府が管轄する高校「Bunka Suginami Cana-dian International School(BSCIS)」の両校に在籍し、日本のカリキュラムと並行してBC州教員による授業も受講できるのが特徴です。オールイングリッシュの授業で高い語学力を養うだけでなく、卒業時には日本とカナダ両方の高校卒業資格が取得できます。国内大学はもちろん海外大学進学への道も開ける、まったく新しいグローバルプログラムです。
導入の狙いについて国際部主任で英語科の窪田淳先生にお話を聞きました。
「BC州のカリキュラムは、同州の教育省が定める学習指導要領に則った公教育です。授業で生徒がつまずいた時には教員が細かくサポートしていますが、『Composition 10』など科目名をネットで検索すればいろいろなサイトで解説されているため、生徒が自ら調べて学びを補うこともできます。
地に足がついた形でグローバルな体験ができ、日本にいながらにしてBC州の卒業資格も取得できる。そこに魅力を感じ、導入に踏み切りました」
合宿で英語の集中学習
カナダ短期留学も実施
オールイングリッシュの授業は生徒にとってハードルが高いものです。そこで高校入学前に2泊3日の合宿を行い、集中的な英語学習を実施しています。さらに、高1の7月には5週間のBC州短期留学も。高1の前半に多くの経験を凝縮させることで、英語力を一気に引き上げるのが狙いです。
「高1の1学期は日本の英語授業がまったくないため、『文法を学ばなくて大丈夫?』と不安を感じる生徒もいますが、短期留学後に語学検定試験を受けると、どの生徒も成績が大きく伸び、目に見える形で成果が表れるため、不安がなくなるようです。短期留学は、時間割に入りきらないBC州の社会科の単位を取得する目的もあります。現地で100時間の集中授業を受け、試験で合格点を取り、単位を取得する経験も大きな自信につながります」
カリキュラムが異なる2国の学びによって視野が広がり、創造力、問題解決力、表現力が身につく効果もあります。
「BC州では暗記力を競うのではなく、生徒の探究心を大事にしたプログラムが多いのです。数学のテストでは、公式を見たり電卓を使ったりして解いてもかまいません。日本とは異なり、公式の暗記ではなく、それを使って何を発見するかが重要視されるのです」
評価方法にも大きな違いがあります。BC州では「ルーブリック評価」を導入し、ある課題を生徒がどこまで達成したか、過程を追って評価しています。
「カナダでは他人との比較よりも、自分がどれだけ成長したかを重視します。テストの順位や平均点も公開せず、比較対象はあくまでも過去の自分。その結果、『努力して困難を乗り越えれば成長できる』という考えになり、自己肯定感も育まれます」
DDコースの成果は大学合格実績にも表れ、海外大学や国内の難関大学に入学する生徒を出しています。
「合格実績も見えてきたので、DDコースを志望する生徒が急増しています。本年度からは中学でも中2から『DD準備コース』が本格スタートし、BC州教員が英語で授業を行っています」
DDコースがめざすのは、「これからの時代を生きるために必要な力を身につけること」だと窪田先生。
「重要なのは知識量ではなく、本やネットの知識から、いつでも必要な情報を探し出せる力です。自分から進んで学ぶ姿勢を常に忘れず、レールの上を走るのではなくレールを作る人になってほしいと願っています」




DDコース高1の1週間の時間割

※1 Literary Studies 10、Composition 10…日本で行われる国語系の科目。言語としての英語を学ぶ授業。10は「GRADE 10」の略で、英語圏の高1にあたります。
※2 Career Ed…「Career Education」の略。キャリア教育の授業。体験学習や地域社会への参加、個人の特性を知るなど、個人的なキャリアライフの構築のために、さまざまな学びを行います。
先生より一言
2カ国のカリキュラムを通じて
多角的な視点が身につく

DDコースを続けることで、当初予想していなかった効果も生まれています。日本とカナダ、2つのカリキュラムを同時並行するため、生徒たちが『日本ではこう考えるのに、カナダではなぜ違う考え方をするのだろう』と双方を比較するようになったのです。日本の“当たり前”が通用しないため、価値観が揺さぶられ、自分を客観視し、多角的な視点で物事を見る力が身についたのだと思います。
印象的だったのは、ある大学の推薦入学試験でグループディスカッションをした生徒が、『最初はこういう考えだったけど、最終的に新しい結論が出たんだ』とうれしそうに語っていたことです。ディベートに強い生徒は相手を言い負かそうとしますが、本校の生徒は互いの意見の良い点を認め合い、新しい考え方を提示できたのです。まさに、未来に必要な力が育っていると実感しました。
(この記事は『私立中高進学通信2019年9月号』に掲載しました。)
文化学園大学杉並中学校
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南3-48-16
TEL:03-3392-6636
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