私立中高進学通信
2019年8月号
校長が語る 自立へのプロセス
十文字中学校
世のためになる
教養のある女性を送り出したい

創立者十文字ことの教えを受け継いで

2013年6月、十文字中学高等学校校長就任。国立女性教育会館情報交流課長、国連アジア太平洋経済社会委員会事務局開発と女性担当社会問題担当官。十文字学園女子大学社会情報学部教授、学部長、副学長を歴任。2011年から2017年まで国連女性の地位委員会日本代表。ライフワークは「女性のエンパワーメント」の研究と実践。
女性の地位向上や参政権運動の気運が高まりを見せていたとはいえ、まだ男尊女卑の慣習がはびこっていた大正時代。十文字ことという女性が中心になって、同校の前身となる文華高等女学校は創立されました。
「創立以来、本校に受け継がれているのが『身をきたへ 心きたへて 世の中に たちてかひある 人と生きなむ』という建学の精神です。これは校歌の歌詞でもあります。私が本学園に着任したのは、この言葉に魅了されたからです。『この学校で生徒たちを育てたい』と心から思いました」
そう語るのは、6年前に創立者以来二人目の女性校長に就任した橋本ヒロ子校長先生です。
「校長になるまでは、女性の地位向上をはじめとした女性問題について研究活動を行ってきたので、後輩を育てなければいけないという使命のようなものを感じていたのです。この校歌を聞いて、私の思いも十文字学園なら実現できるはずだと確信しました」
創立者の十文字ことは、同校が世に送り出したいと考えている人物像のモデルそのものと、橋本先生は語ります。
「創立者は、師範学校の教員を務めた後で結婚した夫とともに、ガスや水道メーターの開発にも関わり、会社経営にも携わりました。彼女はその経験を踏まえ、女子に対する理系教育の重要性を強調し、実験室、実験器具が充実した校舎をつくったのです。その伝統をもとに本校では、これからのAI社会で生き抜けるリケジョの育成を進めています」
理数教育では、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)も活用して、実験・観察・演習を行っています。
「ロボットを活用したプログラミングの授業や、探究学習の一環として、中3の統計の授業では『寝る子は育つのか』『足の大きい人は身長が高いのか』といった身近なテーマや、『第2の地球は存在するのか』『今ある職業が10年後になくなるというのは本当か』など、最新のテーマによる仮説を生徒が立てて、調査・分析をしています。そして、その結果をポスターセッションやパワーポイントなどを使って発表することによって、理数的思考力を養おうと試みています」
アクティブラーニングを重視して自立心を養う
また、建学の精神にあるように、「世の中にたちてかいある人」、つまり社会で活躍する人材を育てるために必要なのは他人との協力だと、橋本先生はおっしゃいます。
「社会は人と人とが結びついて形成されるものですから、独りよがりでは事を成そうとしてもうまくいきません。そこで本校では、たくさんの友人作りを促すため、3日から1週間に1度の席替えを実施しています」
中学入学後は、すぐに自然体験型の校外学習に出かけることによって、クラス内外の友達を作れるような取り組みを行っている同校。
「自然体験は、自分に自信を持つことや自分の意見を言えることにつながるという研究結果が発表されています。自立した女性を育てるためにも、今後も積極的に自然体験を含めたアクティブラーニングを取り入れたいと考えています」
グローバル社会を見据えた教育にも注力
自立するために大切なこと
- ICTを活用して、実験・観察・演習を実施
- 積極的にアクティブラーニングを導入
- グローバル社会を見据えて、自国理解、異文化理解を深める
同校は、グローバル社会を見据えた異文化体験にも注力しています。
「中3では約10日間の海外研修(オーストラリア)を実施しています。原則、生徒1人につき1家庭を割り当てています。それによって、異文化の中で自分の力で困難を切り抜けていく術を学んだ生徒たちは、自立心を養うことができるのです」
グローバル社会で生きるためには日本についての理解も必要です。
「海外に行った時に、自国の文化を紹介できるように、中1から作法、華道、茶道、お琴などを授業として教えています。これらは、日本社会で生き抜くための人としての教養にもなるのです。勉強だけに限らず、さまざまな体験をすることによって、自立した女性を世の中に送り出せるよう、今後も励んでまいりたいと思います」


生徒主導で今年度からリュックを導入

生徒からの要望で、今年7月からリュックサックを採用することになりました。このリュックサックは、デザイン決定も業者との交渉も、生徒会主導のもと行われたものです。リュックサックの導入は「学校は教職員だけではなく、生徒の意見や保護者の意見も取り入れて成り立つ」という創立者である十文字ことの精神を受け継いで実現しました。
(この記事は『私立中高進学通信2019年8月号』に掲載しました。)
十文字中学校
〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-10-33
TEL:03-3918-0511
進学通信掲載情報

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