私立中高進学通信
2019年8月号
未来を切り拓くグローバル教育
昌平中学校
全生徒が世界基準で実践
“本気”のIB教育
各地の教育関係者が注目!

一歩も二歩も先を行く『IB教育』

「日本の子どもたちは、ぬるま湯に浸かっている。このままでは世界から取り残されてしまいます」
こう話すのは、同校の副教頭・国際教育部部長の前田紘平先生。幼少期をニューヨークで過ごし、商社の社員として各国で仕事をしてきた経験から、日本の教育に強い危機感を抱いています。
「発展途上国へ行くと、経済成長の速さに驚かされます。アジアから日本に来る留学生を見ても、日本の学生よりはるかにレベルが高く、意識も高い。中学校や高校が、日本の子どもたちを彼らと同じ土俵に乗せなければなりません」
そうした認識の下、同校では世界基準で活躍できる人材の育成に、強い危機感を持って取り組んできました。英語教育では『パワー・イングリッシュ・プロジェクト』を通じて多彩な実践を展開し、『プロジェクト学習』や『スペシャル・ウェンズデイ』などを通じ、グローバル人材に欠かせない課題解決力の育成を図ってきました。
2017年には先進的な教育をさらに充実させるため、日本では数少ない『IB(国際バカロレア)教育』の中等教育プログラム(MYP)(※)認定校となりました。特筆すべきは、認定校の多くがIB教育を一部のコースのみで実施している中、同校は学年の全生徒を対象に実施している点です。
「本校のIB教育を見たいと、多くの教育関係者が視察に訪れます。評判を聞きつけ、海外校でIB教育を実践していた教員が『本校の教員になりたい』と言ってくることもあります」
前田先生ご自身は、文部科学省IB教育推進コンソーシアムのファシリテーターや、IBワークショップの講師を務めるなど、IB教育を日本に普及する役割も担っています。
「IBが日本で普及したころには、昌平はさらに一歩二歩進んだ取り組みができるよう発展し続けることをめざしています」
※IB(国際バカロレア)教育…世界基準で活躍できる人材育成を目標に、国際バカロレア機構(本部・ジュネーブ)が提供する教育プログラム。IBは「International Baccalaureate」の略。同校は2017年3月に中等教育プログラム(MYP)の認定校、2019年3月には高校がディプロマプログラム(DP)の候補校となった。
アクティブラーニングも世界基準で実施
中学校の授業の約6割は、IB教育のプログラムに基づき実施されます。その特色は、学習がコミュニケーション活動を柱として組み立てられている点です。生徒たちは「勉強させられている」という重苦しさを感じないまま、生きた知識・技能を自ずと習得しています。複数教科の知識・技能をトータルに活用しながら、実社会の課題解決に向き合う学習活動も少なくありません。
そうした学習過程で身につけた知識・技能は、「ルーブリック」と呼ばれる厳格な評価規準で評価され、生徒たちは自身の成長を実感しながら、楽しく学んでいます。
2019年度には、高校にも『IB(国際バカロレア)』コースを設置しました。このコースでは、高3の11月に実施される最終試験をクリアすれば、世界共通の大学入学資格が取得できます。IB教育のフロントランナーとして、進化する同校の取り組みから目が離せません。
世界基準の人材を育てる
昌平のグローバル教育
同校が実践するグローバル教育プログラムは多岐にわたります。
ここでは、その中から中3の『コミュニティープロジェクト』とIB教育に基づく教科横断型の授業を紹介します。
IB教育の集大成となる
『コミュニティープロジェクト』
中3生が社会課題を見つけ、企業や公的機関などとの関わりを通じて解決していく奉仕活動です。「世界と働く」をテーマに、約1年間にわたって取り組みました。
4月 課題の設定

取り組む課題は、生徒が興味・関心や将来の夢などに基づいて自ら設定します。
課題例
「寄り添う社会にするために」
「楽しむ英語をめざして」
「運動の推進とつながり」
8~9月 訪問調査

課題について詳しく知るため、役所や企業、医療機関、教育機関などに自らアポイントを取り、訪問します。訪問後は、学んだ内容をレポートにまとめます。
11~12月 奉仕活動

課題の解決に向けて、自分に何ができるかを考え、計画書を作成した上で奉仕活動を行います。
奉仕活動例
・子ども食堂への野菜の寄付
・駅前での募金活動
・小学校でのスポーツ講座
1~2月 卒業論文の執筆

活動の内容、成果と課題などを卒業論文にまとめます。合わせて、全体発表用のプレゼン資料も作成します。
3月 発表会

最後は、全生徒がプレゼンテーションを行います。「人前で話すことが苦手だったのに、中学の3年間で驚くほどプレゼンが上手になった生徒もいます。発表会では、我が子の成長ぶりに感動して涙を流す保護者の方もいました」(前田先生)
IB教育プログラムに基づく教科横断型授業
物理×公民「発電とエネルギー問題」
IB教育の授業は、生徒の主体的な学びを中心に組み立てられます。生徒たちは、生涯にわたって活用できる「概念」や「スキル」などを学んでいきます。
物理(事前学習)
「火力」「水力」「原子力」などの発電方法の中から一つを選び、発電の原理、利点や欠点などを調べ、資料にまとめて発表します。
公民(事前学習)
アメリカ、中国、ドイツ、フランス、マレーシア、ブラジルの中から、班ごとに1つの国を選び、その国の主な発電方法を調べます。その上で、他国とどのような条約を結べば有利かを考えます。
地球サミット in 昌平

各国の代表が、物理と公民の事前学習で得た知識を基に、エネルギー問題の条約締結に向けて話し合いを行います。その際は、自国の経済事情、国民の支持なども踏まえる必要があります。2019年度の実践では、アメリカ代表の生徒の提案が、他国の代表者たちから猛反発を受けるなど、現実の国際会議さながらの熱い討論が繰り広げられました。
先生から一言
「やりたいこと」で社会に貢献できる大人に

前田紘平先生
グローバル化や少子高齢化、AIの進化による職業の変化など、日本社会を取り巻く未来予想図は厳しいものがあります。しかし、暗い話で終わってはいけません。その環境でも自分の「やりたいこと」を通じて社会に貢献できる、世界を舞台に活躍できる、そのような実感を持たせたいと考えています。そのために行っているのが、IB教育を核とした本校のグローバル人材育成プログラムなのです。
IB教育は、生徒の持つ力を最大限に伸ばすためにはどうすれば良いか、実によく考えられたプログラムです。どの生徒も学ぶ目的が見えているので、「勉強が面白い」「将来の役に立ちそう」と実感でき、覚えたことが自然と頭に残ります。学びに対するこうしたスタンスは、中学校の段階で築いておくことが非常に重要です。
(この記事は『私立中高進学通信2019年8月号』に掲載しました。)
昌平中学校
〒345-0044 埼玉県北葛飾郡杉戸町下野851
TEL:0480-34-3381
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