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私立中高進学通信

2019年6月号

実践報告 私学の授業

横浜創英中学校

ゲームで世界の課題を討論し
協力して解決策を導き出す

国際的なシミュレーションゲーム『ワールドピースゲーム』にトライ
相手の話をよく聞き、自分たちの提案も交渉していく生徒たち。日本国内ではまだファシリテーターが少ないため、学校でワールドピースゲームを体験できるのは関東では同校だけだそうです。

相手の話をよく聞き、自分たちの提案も交渉していく生徒たち。
日本国内ではまだファシリテーターが少ないため、
学校でワールドピースゲームを体験できるのは関東では同校だけだそうです。

アメリカ発のゲームで答えのない問いに向き合う

『考えて行動のできる人』の育成を建学の精神に掲げる同校は、1940年の開校以来、生徒自身に考えさせ、問題解決能力を育てる教育を実践してきました。この取り組みの実践として新たに導入したのが、世界の教育現場で注目されている課題解決型シミュレーションゲーム『ワールドピースゲーム』です。

 プレイヤーは仮想の4つの国の内閣、国際連合など国際機関のリーダー、世界銀行の代表などの立場となり、50以上の国際的な課題について、交渉を行うことで解決をめざします。ゲームに勝つためには、すべての課題を解決し、すべての国の資産を増やすことが条件です。5日間をかけて交渉を行い、国や国連の方針を「宣言」として発表することで課題を解決に導いていきます。

 同校では、2018年の夏期講習として導入。中1・中2の希望者25名が参加しました。ゲームの進行役でありファシリテーターを務めた堀井章子先生にお話を聞きました。

「創始者のジョン・ハンター氏の出演動画を見た直後に、日本でゲームの実演を見学する機会に恵まれ、本校の生徒にも体験させたいと考えたことがそもそものきっかけです。教員向けのファシリテーター養成講座を受講してライセンスを取得し、社会科の教科会議で紹介したところ、ほかの先生方の提案で中学校での実施を検討することになりました」

 民族紛争や深刻な環境問題など、生徒たちに与えられる課題は複雑に絡み合い困難なものばかり。最初はどうすればいいのかわからず混乱するものの、意見を出し合い協力しながら、策を見出していくそうです。

「課題に真剣に向き合い、話し合ううちに『こうしたらいいんじゃない?』という“ひらめき”が生まれます。それに従って解決策を講じていくと、また新たな壁にぶつかり、みんなで話し合う……。そのプロセスを繰り返して課題解決へと進んでいきます」

自分で考え、対話すれば解決できると実感する体験

『ワールドピースゲーム』を体験した生徒たちには、どのような変化が見られたのでしょうか。

「迷ったり、ぶつかったり、協力したりする中で、諦めない姿勢や粘り強さ、視野の広さ、考える力が身についたと思います」(入試広報部部長/松岡徹先生)

「教員が教えるのではなく、生徒が自分たちの力だけで考える体験が、最大の学びになっていると思います。この体験で得た力を伸ばせるように、主体的に考える体験を積めるようにしていきたいです」(社会科/井元秀哉先生)

 現実に生じているさまざまな課題について真剣に考え、協働して解決に導く経験をした生徒たち。この体験で得た深い学びは、将来への大きな糧となるはずです。

Step 1
4カ国に分かれて平和をめざす
4カ国が4層のタワーをモデルにして表現されます。4カ国が4層のタワーをモデルにして表現されます。

 アメリカの小学校教員ジョン・ハンター氏が1978年に考案した『ワールドピースゲーム』。ゲームの舞台は仮想の4カ国。各国の首相や外務大臣、国連や世界銀行、武器商社の社長などといった役割を担い、それぞれの立場で課題に向き合い、5日間で50以上の国際的な課題を解決していきます。

Step 2
課題の解決方法を手探りで学ぶ
他国の代表役の生徒たちと交渉する首相役の生徒。他国の代表役の生徒たちと交渉する首相役の生徒。

 初日はわからない点も多かった生徒たちですが、情報を整理していくうちに課題や解決への糸口が見えてきました。民族紛争の問題では少数民族にどのように対応するか、環境問題では出たアイデアをどう実現するかなど、現代社会を反映した課題に、真剣に向き合い、ゲームに没入していきます。

Step 3
課題解決を成し遂げた!
課題解決に貢献度の高かった2人が表彰されました。課題解決に貢献度の高かった2人が表彰されました。

 首相や国連、外務大臣など、それぞれの立場で真剣に話し合い、交渉を重ねて課題を解決。4カ国を平和へと導いてゲームは終了。答えのない学習の面白さ、やり遂げた達成感を、生徒たちの笑顔が見事に表しています。課題解決に貢献した生徒の表彰もあり、互いに認め合う一体感も生まれました。

ココも注目!
5日間で対話力や交渉力が確実に伸びる主体的な体験
総合企画室室長/堀井章子先生

『ワールドピースゲーム』でどのような課題が出されるかは、実はあまりオープンにされていません。というのも保護者や周囲の大人がヒントを与えてしまったり、生徒自身がインターネットで調べたりしてしまうと、自分たちの力で解決しようとする力が削がれてしまうからだそうです。

 ファシリテーターである堀井先生も生徒にゲームのやり方を指示しません。考える基礎を伝えることはあっても、意思決定は生徒に委ねます。この「教えない」教育活動こそが、このワールドピースゲームの最大の特徴と言えるでしょう。

「起きたことに対して“仕方がない”と諦めるのではなく、何か解決の方法があるはずだと自分たちで考えられるようになってきました。主体性のみならず対話力や交渉力も身についたようです」(総合企画室室長/堀井章子先生)

生徒の皆さんに聞きました
世界を救うゲームで初めて体験した交渉術

――『ワールドピースゲーム』をプレイしてみていかがでしたか? 楽しかったところ、難しかったところを教えてください。

『ワールドピースゲーム』で、主要な役割を担った中2の落合希美さん、石井莉玖くん、小菅翔平くん、松本亜莉沙さん(右から)。『ワールドピースゲーム』で、主要な役割を担った中2の落合希美さん、石井莉玖くん、小菅翔平くん、松本亜莉沙さん(右から)。

石井莉玖くん
ある国の首相を務めたのですが、隣の国の首相と紛争が解決できるように交渉を進めました。1つの問題を解決するには、さらにもう1つの問題を解決する必要があって、互いに良い条件となるような政策にするところで苦労しました。

松本亜莉沙さん
最初は課題が多くて大変でした。相談しながら、どうすれば相手が納得するかを考え、交渉を続けました。

小菅翔平くん
僕は国連事務総長役を務めました。国連はどの国にも関わってくるので、最初は手探り状態でしたが、2つの国が戦争に発展しかねない状況を交渉で解決できました。

落合希美さん
私は世界銀行の総裁役で、国にお金を貸したりする役割でした。普段の勉強とは違って、真剣ながらもゲーム感覚で取り組めて、とても面白い講座でした。

石井くん
話し合いが白熱したのが楽しかったです。

小菅くん
普段の生活では戦争を差し迫ったこととして感じにくいですが、『ワールドピースゲーム』は情報収集をしながらすべきことの優先順位を決めていかないと、紛争が激化してしまいます。いろいろなことを交渉して並行して解決しなければならないため、優先順位の決め方や「マルチタスク」を学べた気がします。

(この記事は『私立中高進学通信2019年6月号』に掲載しました。)

進学通信 2019年6月号
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