私立中高進学通信
2019年4・5月合併号
私学の英語最前線
東京農業大学第三高等学校附属中学校
工夫を凝らした課題で
基礎を徹底インプット
英語4技能はしっかり身につけてこそ「使える」ようになると同校は考え、
楽しく習得する工夫をしています。
基礎を徹底する授業について聞きました。

この日の授業は接続詞の用法を例文から学びました。
徳永先生はイラストを多用したスライドで、英文の意味する内容を示し、
適切な接続詞を生徒たちから引き出していました。
単語や文法は自由なコミュニケーションの土台
幕末・明治に名を残す偉人であり、北海道開拓にも力を尽くした榎本武揚が創設した東京農業大学において、三番目の附属高校として1985年に創立した同校。2009年には中学が創設され、中高一貫校として開校しました。人間尊重の理念をもとに一人ひとりの個性を伸ばし、健全な精神と実行力に富む国際人を育成することが同校の教育方針です。これにのっとり、創立当時からグローバルな英語教育に注力してきました。
中学ではコミュニケーション主体の授業に取り組む前に、まず単語や文法の定着に力を入れています。英語の授業時間数は公立学校の1.5倍と多く設けられており、中1から習熟度別に分け、一人ひとりの実力に合わせて指導しています。
英語の基礎力をつけるために、授業では毎回、単語テストを実施。単元が終わるごとに内容を振り返る『サポートテスト』など、学んだことを定着させるための小テストをカリキュラムにふんだんに盛り込んでいます。
「基本事項は徹底して覚えてほしい」
と、英語科の徳永友里先生は話します。
「私自身、高校時代のカナダ留学で苦い経験をしました。文法構造が身についていないまま留学しましたが、現地では英語でなんとかコミュニケーションが取れたのです。ですが、そのために英語力が伸び悩み、行き詰まってしまいました。
本校の生徒たちは明るく、素直で、何事にも積極的です。海外に行けばその場に適応してコミュニケーションが取れることは間違いありません。だからこそ、正しい文法、豊かな語彙をできるだけ備えて、英語の深く広いコミュニケーションが取れるようになってほしいのです」
英語でのコミュニケーションを、確実なものにするために、基礎固めを大切にする。これが徳永先生をはじめとする英語科の先生方の願いなのです。
とはいえ、基礎の積み重ねは、どうしても単調な学びになりがちです。そのため、インパクトのあるスライドを作る、生徒自身に考えさせる、先生自身や先生の友人のエピソードを紹介するなど、楽しく注意を引き付けるように、工夫を凝らした授業で基礎力の定着を促しているそうです。
この日の授業では、徳永先生が教科書で習った文法を使った質問を繰り返し投げかけていました。ヒントのイラストや先生からの言葉かけで、生徒たちの反応はどんどん良くなっていきます。授業で培った力は、実際のコミュニケーションの場面で役立つに違いありません。
一方で、英語科では来たるべき大学入試改革に向けた準備も始めています。放課後には希望制で行うオンライン英会話を実施。マンツーマンによる1回30分のレッスンでは、「回数を重ねるごとに英語を聞く力、話す力が身につく」と生徒たちに好評です。
また、国語の授業の教材である『論理クイズ』を英語に翻訳して出題するなど、英語による論理的思考力を高めるトレーニングも始めています。英検の受検は2018年度から中高で必修となり、7時間目には学年の枠を取り払って級ごとに分かれて学ぶ『放課後サロン』を実施するなど、確実な力をつける取り組みを進めています。
生徒たちに聞く英語の授業の魅力
中2の生徒たちに、同校の英語の授業について聞いてみました。
「ポイントや大事なところをはっきり言ってくれるので、 “ここが大事なんだ”と意識できるのがいいです。自分で勉強していたのでは気がつかないので、ポイントを絞って勉強できます」 (磯田さん)
「複数形の不規則変化など、暗記事項は覚えやすいように語呂合わせで教えてくれるので、絶対に忘れないです」(鰐渕さん)
「英語は将来、自分の夢のために必要だと思ってがんばっています。僕はスノーボードをやっていて海外の山に行くことがあるのですが、授業で発音の細かいところまで教えてくれるので、現地で少しずつ英語が話せるようになってきました」(山本くん)
日常的に小テストを数多く実施している同校ですが、テストに向けて勉強する習慣がつき、英語力も確実に身につくため、生徒たちは日々の積み重ねの大切さを実感しているようです。
「英語の授業があった日は、家でノートを見直して復習しています。毎日の単語テストもとても役立っていて、英検の時に “単語テストで出たな”と思い出しました」(福田さん)
「単語テストは毎日行われているので、時間が経っても忘れません。ネイティブの先生との授業や英作文を書いている時に思い出すこともあります。がんばると結果に結びつくのがうれしいです」(鈴木さん)
英語科の先生方の思いは、生徒たちにしっかりと伝わっているのです。生徒たちの実感のこもった声に同校の英語教育の成果が表れているといえるでしょう。
POINT1
単語テストは授業の最初に集中して

単語テストは、授業の始めに行います。市販の単語帳から範囲を決めて1回16問。数分間で解きます。その場で丸つけをして点数を確認。満点の生徒も多く、14問正解でも「次はがんばらなくちゃ」という雰囲気が生まれます。
POINT2
大人気のオンライン英会話は30分間たっぷり話せる

毎週水曜の放課後に希望制で開講したオンライン英会話は、セブ島の英会話スクールとつなげています。大好評で「来年もやってほしい」という声が早くも集まっています。1回30分間とたっぷり時間があるので焦ることなく、自分のペースで話せます。
POINT3
多彩な英語関連の取り組み

授業で身につけた基礎・基本を活かし、実践的な英語力を養うために、多彩な英語関連の行事や取り組みを行っています。中2の夏休みには3日間の『グローバルイングリッシュキャンプ』で10カ国以上の国の人と生活を共にし、交流を深めます。中3の夏休みには2週間程度のホームステイ形式でニュージーランド語学研修を実施。自分が中学で培った英語力を実践で使いながら、異文化を肌で感じて理解していきます。
担当の先生より
英語のトークに英語で返せる生徒を育てたい

授業の始まりの雑談を「スモールトーク」と言いますが、これを英語で、しかも、教科書には載っていない私自身の経験を話して興味を持たせています。友人がホームステイ先で「Do you want some more bread ?」(もっとパンを食べる?)と聞かれて、「いやぁ~」と答えたら、逆にパンが次々と出てきた話とか。実はこれはホストファミリーが“Yeah !(はい!)”と聞き間違えたという笑い話なのです。そんな話に生徒たちは引き込まれるようですね。そして「何て断ったらよかったと思う?」と生徒にたずね、「No, thank you.」という表現も伝えていきます。
日本人がグローバル社会で英語をツールとして使うなら、ぱっと見たものを英語で話すのが、一番いい訓練になります。「今日は暑いな」と思ったら「It’s hot today.」とすっと出てくるように。だんだん生徒の反応も良くなってきているので、こうした練習につなげていきたいです。私が英語で話題を振って、生徒がそれに英語で返せるようになる。これが目下の目標です。
(英語科/徳永友里先生)
(この記事は『私立中高進学通信2019年4・5月合併号』に掲載しました。)
東京農業大学第三高等学校附属中学校
〒355-0005 埼玉県東松山市松山1400-1
TEL:0493-24-4611
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