私立中高進学通信
2019年4・5月合併号
The Voice 校長インタビュー
聖望学園中学校
キリスト教に基づく教育で人格を磨き
知恵と強い信念を持つ人に

関 純彦 (せき・すみひこ)校長先生
1963年生まれ。埼玉県出身。1989年、日本ルーテル神学大学神学部神学科卒業、米・コンコーディア大学卒業。
同大学職員として勤務。2001年に起きた9・11 アメリカ同時多発テロ事件の余波でオフィスが閉鎖し、
帰国後、青山学院大学大学院で修士号を取得。
ルーテル学院大学非常勤講師を経て、2002年より聖望学園に勤務。2007年より現職に就く。
人生を豊かにする
信仰の心を糧にして

埼玉県初の私立実業学校として1918年に創立した本校は、1951年にミズーリ派ルーテル教会の支援を得て、キリスト教主義学校として新たにスタートを切りました。以降、68年間、キリスト教に基づく『敬・愛・信・義』をモットーに、温かな人格と骨太な人間力を育成し、時代とともに変革する社会で活躍できる、自立した国際感覚にあふれる世界人教育をめざしてきました。
その精神の根本にあるのはキリスト教教育です。現代の日本では、信仰についてきちんと思いを巡らせる機会はあまり多くはありません。誤解を怖れずに言ってしまえば、信仰が中高生の学力向上に直接役立つものだと、言い切ることもできません。
ですが、思春期を本校で過ごした生徒たちが社会に出た時、どんな人でも仕事や人生について思い悩む時はきます。私もそうでした。正しい道を信仰する心、キリスト教の精神が、人生の選択において真に役立つのは、まさにそういう時なのです。
それを私は、「受験勉強はすぐに効く薬。聖書は後で効く薬」だと生徒たちに伝えています。近年は人々の多様性を認め合い、愛情を持って協力し合うグローバル社会の実現が求められています。本校の『敬・愛・信・義』の精神はその意味でも、これからを担う生徒たちの大きな糧となるはずです。
生徒一人ひとりの居場所を作るために
私が校長となるまでには紆余曲折がありました。人と違う学びを得たいと神学を志し、英語がさほどできないままアメリカに留学もしました。現地で必死に英語を学び、大学職員としてキリスト教の良さを伝える広報活動を通じて、ビジネスの視点も身につけることができました。
しかし2001年のアメリカ同時多発テロ事件により仕事を失い、帰国することとなり、再び青山学院大学院で学び、母校であるルーテル学院大学の講師を経て、今に至った経緯があります。
中高時代、誰もが一度は「勉強とは何か? それが何の役に立つのか?」を疑問に思うことがあります。
そんな時、自分の経験を振り返って伝えられることがあるとすれば、「勉強はプロセス」だということです。
私自身、アメリカ留学と大学勤務経験の中で「中高生時代にもっと英語を勉強しておけば良かった」と後悔しましたし、本校の卒業生からも、同じような声を聞きます。勉強に励み、いい学校を出ればいい人生が送れるという説が説得力を失いつつある時代だからこそ、時代の先を見越した学習環境を作り、さまざまな経験をしてもらうことが、中高教育に最も必要なことだと考えるのです。
「毎日、学校に通うのが楽しい、勉強も楽しい」と思える生徒一人ひとりの居場所をしっかり作ること。それが本校のビジョンであり、私の使命だと痛感しています。
「3つの実」の学びで生徒の可能性を広げる
キリスト教に基づく聖望学園のモットー
- 『敬』……神を敬い、神がお造りになった生き物や自然すべてを敬うこと
- 『愛』……「自分を愛するように、隣人も愛しなさい」のイエス・キリストの言葉にあるように、人々を愛すること
- 『信』……神を信じること。信仰について学び、自己の人生の確かな土台を作り出すことをめざします
- 『義』……正義のこと。勇気を持ち、正義を貫く人に成長すること
学習面で、本校が力を注いでいる学びを「3つの実」に例えています。「英語教育」「ICT教育」「グローバル教育」の「3つの実」を徹底することで、世界で活躍できる人間育成をめざしています。
なかでも英語教育で最も重視しているのは、「生きた英語」です。私もアメリカ留学時代に英語をうまく話せないがために、大学の授業でディスカッションには参加させてもらえない状況に遭遇しました。あの経験は今でも忘れることができません。国内でも、今後は英語ができて当たり前の時代になります。海外留学プログラムの充実はもちろん、普段の授業でもきめ細かな英語教育を実践しています。
また、「ICT教育」にも力を入れており、生徒1人に1台、iPadを貸与し、教員が作成した誰にとってもわかりやすいデジタル教材を学習に導入しています。単にタブレットを使えるようにするだけが、ICT教育の目的ではありません。それを使いこなしたうえで、能動的に興味を広げ、いかに限りある時間を有効活用して考える力を養うか。そこからいかに人生を豊かにできるかという、将来を見据えた学びを生徒たちが身につけてくれることが目標です。
将来的には本校が培うノウハウを、学習したくてもできない環境にいる人々に活用するなど、社会に役立つシステムとして昇華していければと考えています。キリスト教教育に基づく本校の理念は、教育を通じた社会奉仕、社会貢献の精神にもつながっているのです。
本校の生徒は、みんな、穏やかでやさしい生徒ばかりです。卒業生はみんな、本校での6年間はとても楽しかったと笑顔で羽ばたいていきます。中学・高校は大学受験のためにある予備校ではありません。生徒が自分の良さ、秘めた力と可能性を120%、未来で発揮するための学園作りに、これからも努力していきます。

[沿革]
1918年、埼玉県飯能町に寿多館蚕業学校が創立。1924年、飯能実業学校を開設し、1949年に飯能暁高等学校と校名を変更、暁中学校を併設。1951年、学校法人聖望学園へと組織を変更。キリスト教教育の理念に基づき、現代の潮流を踏まえて社会を変革せんとする有意・有益なる人物の育成を期する。
(この記事は『私立中高進学通信2019年4・5月合併号』に掲載しました。)
聖望学園中学校
〒357-0006 埼玉県飯能市中山292
TEL:042-973-1500
進学通信掲載情報

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