私立中高進学通信
2019年4・5月合併号
未来を切り拓くグローバル教育
淑徳中学校
クラス全員が1年間留学『留学コース』で大きく成長
留学体験を話し合い、理解を深めて発表する『比較文化発表会』

『比較文化発表会』では、自分たちの体験をもとに、4カ国の教育、文化、コミュニケーション、社会問題などが語られました。
1年間の留学に備え
学校のフォローも万全
浄土宗の尼僧であった輪島聞声(もんじょう)先生が、明治25年に創立した淑徳女学校を前身とする同校。仏教の教えをもとに、生徒一人ひとりを伸ばす教育に取り組んでいます。古くから英語教育に力を入れ、国際交流の場を多く設け、約30年前から1年間に及ぶ長期留学を取り入れるなど、グローバルな学びに注力。高校には1クラス約40名全員が、高1の夏休みから1年間留学する『留学コース』が設置されています。年々中学からの内進生の希望者も増え、2019年4月より2クラスへ増設します。
留学先にはアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア4カ国の現地校に新たにニュージーランドも加え全32校、いずれかで1年間学びます。留学先での学びも単位となるため、進級にも支障はなく、3年間で卒業できます。留学前には英語コミュニケーション力はもちろん、海外で生き抜く力の養成にも力を入れています。
「あいさつだけを取っても、言い方や表情で伝わるニュアンスはまったく違ってきます。表情を含めた感情表現のトレーニングや、会話に入っていくノウハウ、多文化理解の一環としてキリスト教の聖書に触れるなども授業で行っています」
と、留学コース担任の澤田翔先生は話します。
留学前には留学した先輩との勉強会も実施し、ファミリーとの関係性や友達の作り方を教わる機会も。また、留学中は日本人のサポートスタッフが付き、定期的に生徒を訪ねます。スタッフには同校の元教員もいるそうです。こうした体制が留学実績を支えています。
「1年間の留学で、英語力と人間力が大きく伸びます。親元を離れた海外生活は楽しいことばかりではないですが、ガッツのある生徒さんに、 ぜひチャレンジしてほしいですね」
高い思考力が身につき
進学実績もアップ
もちろん、留学だけで学習が完結するわけではありません。
「帰国後は、さまざまな国に留学したクラスメートとディスカッションして各国の違いを知ることで、自分たちの体験を深掘りしていきます。そして、それぞれがテーマを見つけて、留学で得た成果をプレゼンテーションするのが『比較文化発表会』です」
このような日本と海外での経験を掛け合わせたディスカッションを真剣に行い、社会的な問題への思慮を深め、自分の考えをまとめるプロセスこそが大事だと澤田先生は言います。
「こうした体験は、英語力の向上以上に大切です。自分は何を考え、何を得たのか。そこから、大学で何を学びたいのか、将来どのような分野で働きたいかを考え、語れることが大事です。『比較文化発表会』への取り組みがこれらを考えるきっかけとなり、結果的に進学実績の伸長にも結びついています」
留学で何を学んだかを独自の視点で発表
留学での体験をさらに深める『比較文化発表会』
毎年、留学コースの高2生全員が、留学の成果をグループで発表する『比較文化発表会』が行われています。「国別」「テーマ別」の2部構成で、留学経験をベースにした、外国のライフスタイルや学校生活、文化の違いなどについて多彩な研究内容が発表されます。
発表はすべて英語で行われますが、見学に訪れた保護者や中学生、同校に入学希望の生徒のために、日本語訳がスクリーンに表示されます。みんな、イキイキと発表していました。
イギリス留学グループ

イギリスのライフスタイルや寮生活、ボランティアなどについて紹介しました。クイーンズイングリッシュとアメリカ英語の違いもユニークに発表され、会場の笑いを誘っていました。
オーストラリア留学グループ

現地の制服やクラブのユニフォームを着用して、オーストラリアでの学校生活を寸劇で紹介。スクールライフの楽しさや、多様性のある社会の様子を伝えました。
テーマ別発表

テーマごとの発表では、「Education」「Lifestyle」「Communication」「Relationship」の4分野で比較文化研究が行われました。教育制度の違いや、性差別についてなど、データやアンケートに基づいた発表も行われました。
カナダ留学グループ

日本でもなじみの深いフランチャイズの名称について、日本との呼び方の違いを発表。自分たちが制作したビデオで、日本とカナダの学校の違い、コミュニケーションの違いなどを演じてみせました。
アメリカ留学グループ

アメリカの社会問題について発表。ホームレスや銃、健康問題などについて、現地でのリアルな体験も交えて発表し、自分たちの意見もしっかりと伝えていました。
海外の名門私立高校で学ぶ1年間
留学を体験して得たこととは
カナダ Surrey Christian Schoolに留学した尾崎君
留学先はESL(※)のコースがなく、最初は授業の内容がわからず大変でしたが、学校の先輩が留学した時に親しくしていた現地校の友達の1人がランチに誘ってくれて、そこから友達ができるようになりました。ディスカッションの授業が多く、自分の意見を主張するだけでなく、人の意見を聞く力もついたと思います。
※ESL…第二言語としての英語。英語を母語としない人たちを指す。
オーストラリア St Paul's Schoolに留学した丸山さん

オーストラリアの学校にはインターナショナルコースがあり、そこで英語を勉強してから、現地校の授業に入れます。日本との一番の違いは、まず授業が受け身ではないこと。生徒が発言して、生徒が授業を作っていく感じでした。留学をすることに不安を感じる人もいると思うのですが、留学がスタートすれば、あとは何事にもトライしていくしかありません。とにかく楽しむことだけを考えてがんばってほしいです。
先生から一言
人間的な成長を目に見える形に

留学した生徒たちを見ていると、人間力の伸びと英語力の伸びが密接に関係していることがわかりました。帰国後は英語力が飛躍的に伸び、英検やTOEFLにその成果は表れていましたが、人間力の成長を評価する軸がありませんでした。アンケートや面談を活用し、主体性・思考力・異文化受容度を段階的に分析し、より留学中のプログラムが精錬できないかと検討しています。人間的な成長をきちんと把握することが、さらなる英語力の向上と、これからの大学受験にも活きてくるのではないかと思います。
(この記事は『私立中高進学通信2019年4・5月合併号』に掲載しました。)
淑徳中学校
〒174-8643 東京都板橋区前野町5-14-1
TEL:03-3969-7411
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