私立中高進学通信
2019年1月号
私学だからできるオリジナル教育
昭和学院中学校
自らを「磨き」「創る」教育は新たなるステージへ
技術科と美術科で、主体性や創造力を育成。そこで培った学び方の土台を他教科へと展開していく新しい試みがスタートしています。

「生徒たちが楽しんで取り組むためには、
何よりも教員が楽しむ必要があります」と話す関先生(写真中央)。
試行錯誤をしながら自分なりの答えを創り出す

『自分を磨こう、創ろう』をモットーに、きめ細かな指導を展開する同校。2017年度には国公立大学に11名が現役合格を果たすなど、手厚い指導の成果は数字となって表れています。2015年度には、中学に『特別進学クラス』が設置されるなど、今後のさらなる飛躍が期待されています。
中学の段階では、“自ら考える力”の育成を重視し、生徒の主体的な学びを引き出すため、各教科でアクティブラーニング型授業を積極的に取り入れています。この部分をさらに強化する新たな試みが、技術科と美術科でも進められています。
「技術科と美術科は、モノづくりや表現に関わる教科。自分で構想し、試行錯誤をしながら、自分なりの答えを出すことが求められます。これは教科を問わず必要な力であり、生徒たちの将来へとつながる大切な資質だと考えています」(広報部部長/園家誠二先生)
技術科と美術科の学びを通して主体性や創造性を養い、他分野にも活かしていくという点では、世界的に注目される「STEAM教育」(※)との共通点も見いだせる実践です。
同校では全生徒にiPadが支給されていますが、こうしたツールも使いながら、生徒たちの創造力を引き出す取り組みも行っています。
※STEAM教育……科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Arts)、数学(Mathematics)を統合した教育。それぞれの頭文字を取った、理数系の科目や芸術領域に力を入れる教育方針。
新しい試みを実現するために欠かせないのは「教員力」
技術科において、そうした実践の中心的役割を担っているのが生徒指導部の関篤詞先生です。公立学校の教員を経て、2018年度から同校に赴任し、自由な校風の下、これまでとは異なる視点から授業づくりに取り組んでいます。
「教科書通りの授業では、生徒たちの自由な発想を引き出すことはできません。大切なのは、何よりも楽しみながら取り組むこと。モノづくりを通じて、主体的に取り組む姿勢を築いていきたいと考えています」
他校の見学や校外研修に出向くなど、指導に活かせそうな情報の収集にも意欲的に取り組んでいます。
美術科では庄田千華先生が、推進役を担っています。
「描くことや作ることも、普通に指示すれば、単純な作業で終わってしまいます。大切なのは『見方』や『考え方』を鍛えること。そのために、授業の冒頭で鑑賞の時間を10分間ほど設け、何が見えるか、物事を深く観察し、感じ取る力を高めるようにしています」
同校の学校改革の第一歩は「教員力の向上」。先生方がチーム一丸となって連携を進めていきます。今回の試みも学校全体へと波及していくに違いありません。
「最近は、先入観にとらわれず、イキイキと作品づくりに取り組む生徒が増えてきました。そうした生徒ほど、知識・技能の習得にもどん欲です。学びとは本来そうあるべきで、ほかの教科の学習も、そうしたスタンスで学んでいける生徒を育てていきたいです」(園家先生)
技術科
日常生活の“不便”を見つけ解決する道具を構想する

1学期、中1生は技術科で木材を使ったフォトスタンドの制作に取り組みました。フォトスタンドといっても、一般的な製品とは違い、スマートフォンを立て掛けられる仕様になっています。この“一工夫”について考えさせるのが、この課題の狙いです。
「生活に必要な物の多くが100円ショップで購入できる時代に、既存の製品を仕様通りに作るだけでは意味はありません。生徒には、課題を通じてモノづくりの意味を考えてほしいのです」
と、関先生は話します。
フォトスタンドの完成後、生徒たちは振り返りを行い、「どうすればもっと便利になるか」などを考えます。そうした経験を土台として、2学期は日常生活の中の“不便”を見つけ、それを解決する製品の構想に取り組みました。
「ある生徒は、ロッカーの上部がデッドスペースになるのを不便だと感じ、上下に仕切る棚を考えました。モノづくりにおいて大切なのは、実社会や日常生活とのつながりを意識しながら、作りたい物を作ることだと考えます」
と、関先生。来年度以降は、iPadを利用した動画制作などにも取り組んでいく予定です。
美術科
「見方・考え方」を重視した「友人画」と「手の塑像」の制作
2018年度、中1生は美術科で「友人画」と「手の塑像」の制作に取り組みました。課題としては一般的ですが、通常と異なるのは「見方・考え方」を深めながら、作り上げていく点です。
「例えば、顔の形は丸い卵型、肌の色はベージュと多くの生徒が思い込んでいますが、よく見れば違います。
固定概念にとらわれないためにも、観察を通じて『見方・考え方』を鍛え、何かを感じ取りながら取り組んでほしいのです」
と、庄田先生はその狙いを話します。
彩色の導入として、赤・青・黄の絵の具をペットボトル内で混ぜて新しい色を作る課題や、2つの課題の合間には美術科の授業に使うスケッチブックの表紙を自作する課題などにも取り組みました。
「スケッチブックの表紙づくりでは、ズボンの布を張り付けて、ポケット付きにした生徒もいました。
美術の課題は、何も考えずに取り組むと、作るだけで終わってしまいます。色づくりも含め、生徒たちが表現の可能性を広げ、創造力を膨らませられるような授業づくりを心がけています」(庄田先生)


(この記事は『私立中高進学通信2019年1月号』に掲載しました。)
昭和学院中学校
〒272-0823 千葉県市川市東菅野2-17-1
TEL:047-323-4171
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 先輩から後輩へと“物語”を紡ぐ平成最後を飾る『桐陽祭』目白研心中学校
- AED講習帝京大学系属帝京中学校
- 「応援すること」を通して人間力を養う安田学園中学校
- 多くの本を読ませたいという創立者の思いが生き続ける図書館 国府台女子学院中学部
- 一人で学ぶのではなくみんなで“学び合う場”富士見中学校
- 「考えて行動のできる人」をめざして勉強に部活動に全力投球! 横浜創英中学校
- バンクーバー語学研修で英語が“使える”生徒を育む春日部共栄中学校
- 中2・高1が全員参加 イギリス英語研修秀明大学学校教師学部附属秀明八千代中学校
- 2019年度より『S探究コース』『LAコース』がスタート! より深い学びへ多摩大学目黒中学校
- 異文化を肌で感じるオーストラリア海外研修八王子学園八王子中学校
- 中学に来春新設 DD準備コース文化学園大学杉並中学校
- 台湾への大学進学を全面的にサポート文教大学付属中学校
- 男女別クラスによる共学化がスタート横浜富士見丘学園中学校
- 未来につながる“実践力”を多彩な探究プログラムで育む実践女子学園中学校
- 『地球思考プログラム』で世界とつながる女性を育てる東京女子学園中学校
- 1人1台のChromebook導入で主体性と興味を引き出す八千代松陰中学校
- 自らの智慧と足でたくましく生きる人材を育成世田谷学園中学校
- 伝統に息づく先人の志や願いに触れ国際社会を生きる基盤を培う麗澤中学校
- プレゼンのおかげで人前で話すことが得意になりました!和洋九段女子中学校
- 一人ひとりを伸ばして、しっかり支える伝統的な「そのつど評価」と「成績伝達」桐朋女子中学校
- 知識・思考を深め、好奇心を広げる読書経験で、生徒の成長をバックアップ東洋英和女学院中学部
- 自ら課題を設定し、探究する「自問自答プログラム」を実践 二松学舎大学附属柏中学校
- 一人ひとりの生徒をよく見てくださる先生がたくさんいらっしゃいます国士舘中学校
- 「創発学」のおかげで自主性や創造性が身についたと思います日本学園中学校
- 多彩な入試で主体的に学ぶ生徒を募る開智日本橋学園中学校
- 多様な受験生を受け入れる努力の成果を示せる入試神田女学園中学校
- 自らを「磨き」「創る」教育は新たなるステージへ昭和学院中学校
- 21世紀の国際感覚を育むグローバル留学コース昭和女子大学附属昭和中学校
- 音読を日々繰り返して英語の4技能を磨く東京都市大学等々力中学校
- “きめ細かな”指導で全生徒の英語力を伸ばす富士見丘中学校
- 超小型PCで本格的なプログラミング学習 AI時代を担う人材を育成する淑徳SC中等部
- 2019年度より『S探究コース』『LAコース』がスタート! より深い学びへ光英VERITAS中学校(現校名 聖徳大学附属女子中学校)
- 成功も失敗も成長の糧に!自律的学習者を育む学校行事成城中学校
- 思いやりや礼儀正しさ、協調性 母校での学びが卒業後も活きていると実感東京女学館中学校
- のびのびと育つ環境が自信につながり自分らしく生きる土台に日出学園中学校


