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私立中高進学通信

2019年特別号

注目のPICK UP TOPIC!

東京成徳大学深谷中学校

失敗を恐れない「実学重視の理科教育」
~自分の意見をしっかり発信できるように~

スライムづくりの実験の様子。一人ひとりが試行錯誤しながら進めていきます。

スライムづくりの実験の様子。一人ひとりが試行錯誤しながら進めていきます。

 建学の精神である「成徳」は「徳を成す」の意味で、社会人として自立した、あるべき人格の育成をめざしています。「自立した社会人」とは、「自分で最後まで考え抜き、責任を持って選択し、正しく行動し、その結果を次に生かすことができる人間」のこと。
 このような理念を象徴する取り組みが「実学重視の理科教育」です。教員が知識を説明し、生徒がそれを暗記するという従来の授業ではなく、生徒自らが能動的に取り組む機会を増やし、「知りたい」「なぜだろう」と考える知的好奇心や探究心を刺激することを重視しています。

科学を好きになる気持ちを育て、
興味を持ってもらいたい

「東京成徳大学深谷では、少なくとも週に1回、多いときは3回も実験を行います。教員が演示実験をすると、生徒はそうなるものだと考えてしまうので、あえて行っていません。実験を通じて科学を好きになる気持ちを育て、興味を抱いてほしいと思っています。
 ほかの教科では、失敗すると減点されたり、評価されなかったりしますが、理科は失敗することこそが大事な教科です。失敗することで、なぜうまくいかなかったのか、どうすればうまくできるのかを考え、再び挑戦する。これが学びを深めるうえで大切です。『実学重視の理科教育』の最大のポイントは、失敗をおそれさせないということです」(理科/山下太郎教諭)

 「実学重視」の方針は、生物の分野でも同じです。オオクワガタ、アゲハチョウ、メダカなどの小動物を飼育しますが、何を飼うかは生徒たちが決めています。骨格の勉強では豚足の標本をつくり、被子植物の勉強では果物の種を数えます。自分で見て触って体験することで、知識が定着するのです。
  また、発表の機会を多く設けることも意識しています。授業でわかったこと、自由研究で調べたことなどを、折りに触れて発信させています。ここでも失敗をおそれることはありません。最初はうまく発表しようと構え、みんなの前で話すことに臆してしまう生徒もいるそうですが、うまくできないことを受け止めてもらえるので、次第に慣れて、積極的に発表するようになります。

 理科教育で培った旺盛な探究心は、生徒たちに浸透しています。
「休日に国立科学博物館へ見学に行った生徒が、学芸員の方にいろいろ質問したようで、後日『先日受けた質問に、その場で答えられなかったので連絡しました』と電話がかかってきたこともあります。理科部に所属する生徒も多く、『恐竜が絶滅した時、プテラノドンのように空を生活圏としていた生物まで、その後絶滅してしまったのはなぜか?』といったマニアックな課題に挑んでいる生徒もいます」
 2020年度の大学入試改革では、「思考力」「判断力」「表現力」が重要になってきます。東京成徳大学深谷の生徒は理科教育を通じて、すでにその資質を身につけているようです。

失敗はマイナスではない
試行錯誤の材料にしよう

 取材した中2の理科では、実験によって物質の化学変化を調べるため、P.V.A.(ポリビニルアルコール)の洗濯のりとホウシャ(硼砂)からスライムをつくりました。前回の授業では、洗濯のりに食塩を混ぜて“持てる水”をつくる実験をしています。
 実験の授業では、生徒の実験の様子を見守り、質問に応じるなど、きめ細かい対応をするために、できるだけ2人の先生が担当するようにしているそうです。
  授業の冒頭に先生から説明があり、さっそく生徒たちは実験に取り組み始めます。実験中、先生方は洗濯のりとホウシャ液の比率について教えることはありません。生徒たちがいろいろな割合で混ぜて、どの比率の時に最もうまくできるかを、自分たちの手で見つけてほしいからです。

実験開始。洗濯のりの重さを測って容器に入れます。実験開始。洗濯のりの重さを測って容器に入れます。
食紅を混ぜて、好きな色をつけます。食紅を混ぜて、好きな色をつけます。
教員は生徒からの質問があればともに考え、思考の幅が広がるように導きます。教員は生徒からの質問があればともに考え、思考の幅が広がるように導きます。
洗濯のりとホウシャ液の割合を変えて、何通りも作ってみました。洗濯のりとホウシャ液の割合を変えて、何通りも作ってみました。

 生徒たちは、混ぜる割合をノートに記録しながら、何度も実験を繰り返します。最初から成功する生徒もいれば、なかなか成功しない生徒もいます。
  この授業では、プリントを用意したり、教科書を見たりはしません。予定調和的な“正しい”実験をすることにとらわれるあまり、自ら考え、判断することの妨げになってしまうからです。また、ともすればリーダー的な立場の生徒が実験の流れを決めてしまいがちですが、あらかじめ正解を示していないので、一人ひとりが実験に取り組み、うまくできた、できなかったという情報を共有しないと、正解にたどりつけません。

 試行錯誤を重ねるうちに、あちこちでスライムができたという声があがります。情報を共有することで、うまくできる割合がわかってきたようです。時間はかかりますが、体験を通して理解したことは忘れません。次のステップでは、洗濯のりとホウシャを混ぜると、なぜスライムができるのかを考えます。ここで、難しい化学式が登場しても、すっと頭に入っていくそうです。実際の体験と理論を結びつけることで、知識が身についているのです。

よく伸びるスライムができました。よく伸びるスライムができました。
洗濯のりとホウシャを混ぜるとなぜ固まるのかを考えさせます。洗濯のりとホウシャを混ぜるとなぜ固まるのかを考えさせます。
理科室には、生徒の自由研究をまとめた作品が掲示されています。理科室には、生徒の自由研究をまとめた作品が掲示されています。
積極的に自分の意見を発信できる人に
山下太郎教諭山下太郎教諭

「実学重視の理科教育」を通じて、体験に基づいて得た自分の意見をしっかり主張できる人になってほしいと願っています。「失敗した」と言える子ほど、次のステップへと進んでいきます。本人たちに自覚はないようですが、オープンスクールで小学生が来た時の彼らへの接し方を見ていると、実行力がついていると強く感じます。

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