私立中高進学通信
2018年10月号
校長が語る 自立へのプロセス
自由学園(男子部・女子部)中等科
徹底的な対話を通して、問題点を解決していく

女子部と男子部を併せ持ち、学科の勉強だけでなく「自治の生活」によって実生活のあらゆることを学びの対象としている同校。男子部中等科・高等科の部長を務める更科幸一先生にご登場いただき、生徒を自立に導くプロセスについて語っていただきました。
何か問題が起こっても反省はさせない!?

1971年、東京都出身。自由学園中等科・高等科の卒業生。私立高校の教員を経て、2003年、母校である自由学園に赴任。2015年4月から男子部・部長に就任。生徒と一緒に、東日本大震災などの被災地の支援活動も行っています。
各学年から選出された「委員会」が中心となり、自分のことは自分でする「自治の生活」を実践している同校。「知識を詰め込むだけでなく、しっかりと生きる人を育てる意味で、自治の生活はとても大切なことだと考えています。例えば、中1生は教室の鍵を管理し開け閉めを担当する、という責任を持つことで、『自分は社会の一員になっている』と自覚できます」と更科幸一先生は話します。
「生徒たちは日々葛藤や失敗を繰り返して頭を悩ませ、自分はどんな人間なのかを理解していきます。そのことが自立のためには重要なのです。その際、大人はできる限り手を出さないようにします。生徒が自分自身で考えることが大事で、その機会をどれだけ作れるかがポイントになります。生徒は最初こそ戸惑うと思いますが、自治の生活を経験すれば、高校を卒業する時、どこに出ても恥ずかしくない人間になれると思います」
同校の男子部では寮生活が人気で通学圏の生徒も入寮を希望し、7割〜8割の生徒が入寮しています。自治の生活と共に、「寮生活の中で学んでいく」ことも男子部の特徴だと言えるでしょう。
「中1生が最初に入寮する際、高3生1人、中3生1人、中1生5~6人の相部屋に入ります。上の2人(高3生、中3生)が両親の役割をして、生活に必要なことを教えます。いがみ合いをしている生徒がいれば声をかけて話し合いをするなど、親身になって下級生に付き添います」
学校や寮生活の中で生徒が何らかの問題を起こしてしまった場合、反省文を書かせたり謹慎処分にしたりといったことはせず、「その生徒と徹底的に対話をして、何が問題なのかを考えていく」ことを大切にしています。
「仮に、寮でお酒を飲んでしまった生徒がいたとします。その場合、“お酒を飲んだ”という事実は氷山の一角で、その下に隠れている深い部分を知らなくてはなりません。その生徒が『ノリで飲んだだけ』と答えたとしたら、そのノリに至った背景が必ずあるはずで、『悪いことだと知っていて手を出した君には、一体何があったのか?』と掘り下げていくのです。生徒はその期間をスペシャルスタディと呼び、最終的には自分自身の探求分野を見つけるまでに至ります。
中高時代はどんどん失敗していいのです。失敗して自分の弱い部分を知り、それを克服することができれば、今度は他人の自立をも促すことができるようになります。自分の弱さを知るということは、他人の弱さも受け止められるということですから」
こうした対話の際には、上級生も教員も一丸となって問題を起こした生徒に寄り添っていきます。「大変手間のかかる作業ですが、楽しいですよ。寄り添うことで、その生徒が変わっていく姿を見るのがうれしいんです」と更科先生は言います。
「担任以外の先生も面談をして、生徒に『君のことが大事なんだ』『信じてるよ』と伝えていく。そうすることで、その子が『たくさんの人が自分を見てくれているんだ』と気付き、愛情を感じ取り、それが成長につながります。私は日頃から『できるから愛されるんじゃない、愛されるからできるんだ』と言っていますが、これは自立の大きなポイントだと思っています」
毎朝約30分の面談でていねいに見ていく
自由学園の自立のための育て方
- 生徒自身が考える機会を多く作る
- 徹底的な対話で課題を解決する
- 生徒一人ひとりにていねいに寄り添う
この取材中も生徒たちと楽しそうにコミュニケーションを取っていた更科先生。「生徒たちを盛り上げるのが上手」だと評判ですが、その秘訣はどこにあるのでしょうか?
「普段から生徒をどれだけていねいに見ているか、が大事だと思います。その子はどんなことに興味を持っているのか? どこに行きたいと思っているのか? それこそ、その生徒の氷山の下に何があるのかを見るように心がけています」
毎朝、1人の生徒と約30分の面談を行い、そこで生徒の近況や今考えていることなどを把握している更科先生。誕生日を迎えた生徒がいると、個別のメッセージをカードに書き、校名入りのチョコレートと一緒にプレゼントしているそうです。そんな更科先生がこんな言葉をくれました。
「大人の作った社会構造を疑いもせず、また自分はどう生きたいのかを考えずに青年期を送ってしまう子どもがいるのは大きな課題だと思います。やはり中学、高校時代に、大人や社会に対して『これは違うだろう?』という問いを持ってほしい。その問いを解決するために学び、実践する人が、より良い社会を創る人になるのでしょう」


(この記事は『私立中高進学通信2018年10月号』に掲載しました。)
自由学園(男子部・女子部)中等科
〒203-8521 東京都東久留米市学園町1-8-15
TEL:042-422-1079(女子部)/042-428-3636(男子部)
進学通信掲載情報

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