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私立中高進学通信

2018年9月号

校長が語る自立へのプロセス

自由学園(男子部・女子部)中等科

自分の責任を果たす中で、社会を学んでいく6年間

1921(大正10)年に、女子校からスタートし、現在は、女子部、男子部を併せ持つ同校。今回は女子部中等科・高等科の部長を務める佐藤史伸先生に、同校で行われている「自治の生活」をベースにした自立のプロセスについて語っていただきました。

自分の頭で考え、仲間と話し合って解決する経験を
佐藤史伸(さとう・しのぶ)校長先生佐藤史伸(さとう・しのぶ)校長先生
1959年、東京都出身。86年より自由学園男子部中等科・高等科教諭になり、93年にデンマークへ留学。06年より女子部に異動し、2013年4月より女子部中等科・高等科部長、2018年4月より女子部中等科校長に就任。趣味はスポーツをすること(バスケットボール、テニス、スキー、登山、ランニングなど)。

「よく教育することは、よく生活させることである」という言葉を創立者・羽仁もと子が残しています。この言葉にもあるように、同校では、学科の勉強だけでなく、実生活のあらゆることが学びの対象となっているのです。

「本校は真の自由人、しっかりとした価値観を持って生きる自立した人づくりを目標にしています。そのために、『自治の生活』をカリキュラムとしているところが一番の特徴です」と話す佐藤史伸先生。

 女子部の生活は、各学年より50~60日交替で順番に任命される「委員会」を中心に運営されています。委員に任命されると「庶務」「食」「住」「農芸」の各分野に分かれて、一人ひとりの生徒が責任を果たしていきます。

「中高の6年間で最低3回は委員が回ってくるので、自然と責任感を持てるようになります。例えば、昼食でご飯が出る時には、校内の木々の薪で炊いています。燃料の委員になったらその薪を用意する、掃除道具の委員になったら、道具の管理だけでなく、消耗品、新しい道具の購入などを業者に発注する、といった仕事をすべて生徒たちで行っていきます。与えられた責任を果たしていく中で“社会が運営されるためには、一人ひとりがどう動かなければいけないのか? 社会に貢献する意味”を学んでいます。学年が上がるにつれて責任の範囲も広くなり、高3にもなると主任になって女子部全体のことを考えていくようになります」

 委員の仕事がうまくいかずに悩んだり、迷ったりすることも少なくありません。そんな時も自分の頭で考え、仲間と話し合って解決する……そうした経験を通して生徒たちは成長し、自立していく、と佐藤先生は言います。

「委員やいろいろなリーダーになったものの、具体的に何をすれば良いのかわからず、『先生、どうしましょう?』と担当教員に丸投げしてくる生徒もいます。そんな時は『君たちはどうしたいのか、まずそこを考えてほしい』と、必ず自分たちで考えさせるようにしています。“自分の頭でよく考える”習慣を中等科からつけていくことで、高等科になると『私たちはこういうふうに考えていますが、確認してもらえますか?』という形で相談できるようになってくるのです。与えられた自治から自ら考え行う自治へと変わっていきます」

積み重ねていく自治のシステムは女子の特性に合っている
自由学園の自立のための育て方
  1. 自尊心を養う
  2. 自分の頭でよく考えさせる
  3. 自治を通して一人ひとりに責任感を持たせる
  4. 仲間とともに良い社会を創造する(現代社会の課題解決につながる)実践を行う

 こうした「自治の生活」の一つとして、毎日の昼食を生徒たち自身が作る、という点も女子部の大きな特徴です。これは「生徒たちに温かい食事を食べさせたい」という創立者の意向によるもの。各学年が順番で昼食作りを担当し、女子部の全学年約240名が一堂に会して食事をするスタイルがずっと継続されています。

「調理の技術を学ぶだけでなく、仲間と協力し合って決められた時間までに食事を作るマネジメントスキルも磨かれます。また、食材の産地を知ることが地理とつながり、栄養素や材料費の計算が数学と関連するなど、教科の勉強とも結びついてきます。また、育てる→整える→いただく→片づける、という持続可能な『食の学びの循環』すべてを実践することで、物事の本質を見極められる力を育んでいます」

 昼食時にはお料理担当のリーダーがみんなの前に出て話をしたり、朝の礼拝時に一人ずつ順番に話をするなど、人前で発言する機会が多いのも同校の特徴です。

「人前で話すことが不得意で、最初は自分の名前すら言えない生徒もいます。でも、われわれ教員や上級生たちが見守ってあげることで、だんだんと話せるようになってくるのです。生徒たちが自立していく時に大切になるものは、自尊心=自分を大切に思える心です。そのためには『あなたはここにいていいんだよ、ここが居場所なんだよ』とわかってもらうことが必要。女子部が安心、安全な場所だとわかれば、『よし、やってみよう』と積極的になるのです。私たちは、そのようなしっかりした土台をみんなで作っていけるようにと心がけています」

 このように、さまざまな取り組みが行われている女子部ですが、「このカリキュラムは非常によく考えられていると思っています」と佐藤先生。

「男子は集中力があって、うまくはまると大きなパワーを出しますが、女子は日々コツコツと積み上げていくほうが得意なんですね。ですから、小さなところから始めて、学年が上がるにつれて責任の範囲がだんだん広がっていく自治のシステムは、女子の特性に合っていると思います。その上で、日常の中に、登山などの“非日常”を経験することで、日常のレベルが上がってさらに豊かに生きることにつながっています。この傾向は女子のほうがより顕著ですね」

 女子部のカリキュラムを活用して、「今後も、物事の本質を見ることのできる、新しい社会を創る女性のリーダーを育てていきたいです」

「80年使える机と椅子を考える」というプロジェクトチームのミーティング。2017年には教室の机と椅子を新調。その際のデザイン、木材の調達先(国産材)を決めることなども、生徒たちの学びとしています。「80年使える机と椅子を考える」というプロジェクトチームのミーティング。2017年には教室の机と椅子を新調。その際のデザイン、木材の調達先(国産材)を決めることなども、生徒たちの学びとしています。
女子部全員が食堂に集まり、みんなで昼食をとります。女子部全員が食堂に集まり、みんなで昼食をとります。
この日の料理担当は高等科1年生で、メニューは茄子のはさみ揚げ、食パン、サラダ、紅茶でした。この日の料理担当は高等科1年生で、メニューは茄子のはさみ揚げ、食パン、サラダ、紅茶でした。

(この記事は『私立中高進学通信2018年9月号』に掲載しました。)

自由学園(男子部・女子部)中等科  

〒203-8521 東京都東久留米市学園町1-8-15
TEL:042-422-1079(女子部)/042-428-3636(男子部)

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