私立中高進学通信
2018年9月号
実践報告 私学の授業
昭和女子大学附属昭和中学校
学び合いをベースにした理科の授業
自ら学んでいく生徒を育てるアクティブラーニング型授業

虫眼鏡を使ってレンズの働きを確かめる生徒たち。
自由に試すことで、レンズの仕組みが実感として理解できます。
アクティブに考える生徒たち
『世の光となろう』を目標に全人教育を行う同校。中学校・高等学校ともに、生徒の主体性や対話を大切にしたアクティブラーニング型授業の導入が、各教科で始まっています。
理科では山下兼彦先生が、グループワークや実験を取り入れ、生徒自身が答えを探る授業を展開しています。中1の理科「光の屈折」の授業では、座学は前回の授業の振り返りと発展課題をビデオで見るところで終わりです。あとはレンズを用いてさまざまなものを見る実験に多くの時間を割き、光の屈折やレンズの働きについて、生徒自身が気づきを得る流れを作っていました。生徒たちは、実験や話し合いで気づいたことを、自主的にプリントに記入していきます。興味を持ってイキイキと取り組み、クラス全体が活発に話し合う姿が印象的でした。
思い切ってやめた一斉授業
山下先生がアクティブラーニングを授業に取り入れ始めたのは昨年度のこと。高校の生物の授業で、講義形式の一斉授業をやめたのです。
「試験前には生徒が質問に来てくれましたが、どれも授業で説明したことばかりでした。つまり、“聞いているだけの授業”では教科内容が定着しにくいとわかったのです」
そこで、事前の説明を極力行わず、課題をグループで議論したり、先にわかった生徒が、ほかの生徒に教えたりする「学び合い」を授業に導入しました。最初は戸惑っていた生徒も、定期試験で良い結果が出ると、この授業スタイルを支持してくれるようになったと言います。
「『みんなで話し合った問題だから、よく覚えていた』『クラスメートが教えてくれた記憶がよみがえった』『考える授業は楽しい』と生徒たちは言っています。学び合いによる学習効果の大きさを実感しました」
試験前には、黒板を前に生徒同士で教え合う姿が見られ、「学び合い」が当たり前になるのと同時に、試験の結果も上向きになったそうです。
生徒の変化を目の当たりにして、アクティブラーニング型授業をより早い時期から体験させたいと、今年度からは、中1の理科でも導入しました。小学校ですでにアクティブラーニングが意識されている今、中1生はスムーズに学び合いのスタイルになじんでいるそうです。
話し合いながら授業を進めると、生徒から独創的な発言が飛び出し、印象に残ってクラス全体で共有・知識化できるのがアクティブラーニングのメリットです。この日も両手を上げた山下先生をレンズで見ると、先生が逆立ちしているように見えると発見した生徒たち。このようなエピソードが理科の授業を好きになる第一歩にもなるのです。
今年度は他教科でも「学び合い」を取り入れた授業が始まりました。授業のあり方が変われば、生徒の頭が活性化して知的な探究心が深まる、そんな瞬間に立ち会えた授業でした。
Step 1 導入
前回の授業で学んだことを確認する

コップに水を入れると、光の屈折で底にある10円玉が大きく見える原理をおさらいします。この知識を活用してこれから課題に挑んでいきます。アクティブラーニング型授業では、生徒が活動や話し合いに入る前に、前提となる知識をしっかりおさえることが重要です。デジタル教科書と電子黒板でビデオを観て、先生が解説します。
Step 2 課題に取り組む
目標を先に提示 考える材料を元に試してみる

「今回の目標」を先に提示してから、考える材料を与え、活動へと進みます。「なぜ、虫眼鏡で物をみると近くと遠くで反対に見えたり、見えなかったりの違いが出るのか?」という疑問の提示から始まり、虫眼鏡を使って
①友達の顔を見る
②遠くの景色を紙に映す
③天井の蛍光灯の真下にかざしてみる
、という3つのものの見え方を班ごとに調べます。
Step 3 学び合う
教え合いや話し合いで理解を深める

調べた結果から「光の屈折」の仕組みを導き出し、プリントに記入します。この授業では、生徒同士の教え合いや話し合いを大いに推奨しています。グループも自分たちで自由に作り、教室内を自由に移動しながら活動します。わかった生徒は「ミニティーチャー」となり、周りの生徒に教えます。
Step 4 振り返り
気づいたこと、学んだことを「見える化」するリフレクションシート

アクティブラーニング型授業では、学習の振り返りが欠かせません。毎回、授業の最後5分間に、「リフレクションシート」を記入しています。自分で進んでできたかを問う「主体性」、いろいろな人たちと活動できたかを問う「多様性」、クラスメートと一緒に力を合わせることができたかを問う「協働性」の3つの観点を自己評価し、わかったことや疑問に思ったことを記入します。
Active Learning Point
早い段階からアクティブラーニング型授業を

「他者と議論したり実践による経験をしたり、学んだことを他者に教える能動性が高まると、学習の定着化が図れます。これがアクティブラーニングの良さだと思います。
アクティブラーニングが効果的に行われるためには、そのクラスや学習集団に合った課題や難易度の調整をしっかりと行うことが大切です。簡単すぎると飽きられてしまうし、難しすぎると避けられてしまいます。高校でアクティブラーニング型授業を行っていた時にそれを感覚としてつかめたので、中学でも同じように生徒の様子をよく見ながら調整しています。生徒はアクティブラーニングによって教科で身につけるべき『概念』をつかみ、実験・実習で『実感』してから『教科書』を読むと、本当に理解が深まります。そして自分が理解したことを『自分の参考書』としてノートにまとめさせています」
(この記事は『私立中高進学通信2018年9月号』に掲載しました。)
昭和女子大学附属昭和中学校
〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57
TEL:03-3411-5115
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 命の大切さを学び、心を育む『家政ビオトープ』の活動東京家政大学附属女子中学校
- 生徒のアイディアを積極的に取り入れ誇りを持てる制服に品川女子学院中等部
- 100周年記念式典 伝統ある教育を受け継ぎ次の100年へと進化城西大学附属城西中学校
- キャリア教育の集大成 シンガポール修学旅行 見る世界を広げ世界に羽ばたく女性へ東京家政学院中学校
- オープンスクール“英和の魅力を伝えたい”生徒からあふれる愛校心東洋英和女学院中学部
- アクティブ入試“得意なことを活かす”受験アクティブ入試がスタート!武蔵野中学校
- 第2回オープンスクール「課題を解決する力」を育み世界への扉を開く武蔵野大学中学校
- 日本大学準付属校へ 付属校だからこそ広がる進路選択新たなカリキュラムもスタート目黒日本大学中学校
- 部活動を通して成長を促し未来に向かって羽ばたく浦和実業学園中学校
- 感動を分かち合う仲間がここにいます!淑徳SC中等部
- 「生徒主体」で目標を設定し楽しみながら意欲的に成長富士見丘中学校
- 個人の目標やレベルに合わせて活用できる新テニスコート学習院女子中等科
- 理想の教育環境を追求し全天候型グラウンドを完備星野学園中学校
- 学力向上と豊かな人間性を育む教育で ノビシロのある生徒の潜在能力を引き出す昭和学院中学校
- 未来を見据え、他人のために行動できる人を育てる獨協中学校
- 学校の雰囲気がわかる!生徒たちが学校の魅力を伝える説明会日本大学第二中学校
- 生徒主体で行われた「学校説明祭」部活動体験や制服試着も!!文京学院大学女子中学校
- 先生に質問しやすい距離感だから勉強も部活動もがんばれる!八王子学園八王子中学校
- 「発信力」を育むアクティブな教育 自立した女性を育成する藤村女子中学校
- 英語に自信がつく!オンライン英会話 大妻嵐山中学校
- 使うことで伸びる英語力授業に“実践”の場を提供 関東学院中学校
- 異文化に触れ英語力を試す中3のカナダ修学旅行 東洋大学京北中学校
- 学ぶ力をつける『学び力伸長システム』安田学園中学校
- 学び合いをベースにした理科の授業 自ら学んでいく生徒を育てるアクティブラーニング型授業昭和女子大学附属昭和中学校
- 統計 “統計”教育によって社会で必要なスキルを身につける田園調布学園中等部
- 自分の責任を果たす中で、社会を学んでいく6年間 自由学園(男子部・女子部)中等科
- テーマ決めから発表まで役割分担して自主的に活動城北中学校
- 「英語を使うのって楽しい!」と意欲的になるプログラムが満載東京女学館中学校
- 学校行事を通じてクラスの結束力が強くなりました 春日部共栄中学校
- 先生も生徒も熱量が高くフレンドリーで楽しい学校です明治大学付属中野八王子中学校
- 英語圏への3カ月留学を実施し既存の英語教育をさらにパワーアップ 淑徳中学校
- 親同士のつながりが深くて濃い!!保護者が仲良くしている姿を息子たちに見てほしいです サレジオ学院中学校
- クリーン作戦で地域と密着!生徒だけでなく保護者も楽しんでいます 帝京大学系属帝京中学校
- 部活動を通じてたくましく成長でき友人関係も広がりました日本大学豊山中学校
- 神さまの前では教員も生徒も同等愛されている存在だと気づくことで人は人間として成長できる 玉川聖学院中等部
- 『誠・明・和』を校訓に生徒の夢を育て個性を大切にする伸びやかな教育を 日出学園中学校
- 自分らしく生き、自ら選び取る将来をじっくりと考える6年間をサポート 目黒学院中学校
- 「愛と誠の人間教育」人は人の中でこそ育つ 横浜女学院中学校
- GSCのプログラムを応用全クラスがグローバル化 実践女子学園中学校
- クラスメートとの濃密な日々を通して得た成長と気づきが、未来を切り拓く原動力に麗澤中学校


