私立中高進学通信
2018年7月号
私学の英語最前線
トキワ松学園中学校
質の高い指導力が生み出す“ハイブリッド”授業
豊富な語彙を定着させ、生徒の積極性を引き出す“考えさせる”英語の授業。
高い指導力で、国際的なコミュニケーションの場で実践的に“使える英語”を習得します。

実践的に“使える英語”を日々の授業で習得
1916年の創立以来、一貫して自立した女性の教育に力を注いでいる同校。30年以上前から外国人のネイティブ教員を配置し、英語を使いこなせる人材の育成にも努めています。教育目標の一つである『国際力教育』の柱として据えているのは、世界の人々とコミュニケーションするための“使える英語”を習得する英語の授業です。中1~中3では、教科書に沿った学習と別に、週に2時間、「聞く」「話す」に特化した同校オリジナルの授業『Listening&Speaking』(以下LS)を行っています。
在籍するネイティブ教員は、専任も含めて5人。『LS』の授業は、1クラス2人のネイティブ教員と、日本人の教員1人の3人体制のチームティーチング(※1)で指導。説明もすべてオールイングリッシュで行っています。
※1 チームティーチング……2人以上の教員が連携・協力しながら指導する授業形態。
無駄な言葉を使わず生徒がわかる英語で語りかける
取材した中3の『LS』の授業は、「better than」を使った「AはBより~だ」の構文をテーマに行われていました。生徒たちは、「リンゴはオレンジよりおいしい」など、自分の意見を英語で表現します。「電車よりも徒歩のほうが健康的だ」という例文では、「なぜならば~だから」と理由付けをするワークが与えられます。「なぜならば、歩くことはダイエットになるからヘルシーだ」など、女子らしい意見が出る場面もありました。
英語で自分の意見を話すだけでは終わらないのが、『LS』の授業です。
今回の授業では「この意見に反対か賛成か」と質問する言い回しと答え方を合わせて学びます。2人のネイティブ教員が、見本として英語で会話をしてみせ、その後、生徒たちは互いに英語で自分の意見を述べて、賛成か反対かの質問をし、その答えと理由を聞いて回りました。
こうしたオールイングリッシュの授業を本当に実のあるものにするためには、教員の高度な指導力が必要です。教員は英語をただ話すのではなく、学ぶべき語彙の習得につながるよう、無駄な言葉を使わずに、発話しなければならないからです。授業の途中、生徒が英語でつまずくと、すかさず教員が近寄り、習った単語を使って話しかけます。学習した単語を確実に定着させるようにと、常に心掛けているのです。
「こう表現したい」と生徒からわき起こった学習意欲は、見逃さずにキャッチします。2人のネイティブ教員が即興で会話のやりとりを実演するなどして、ライブ感のある授業で生徒たちを飽きさせることなく英語の世界へと引き込んでいきます。
タブレット学習も導入マイペースな学びで英検取得を促す
教科書に沿った英語の授業ではタブレット学習を導入し、学習の効率化を実現しています。
例えば、リスニングの学習。これまでクラス全員が一つの音源を聞いて問題を解いていたため、リスニングが得意な生徒も不得意な生徒も同じ回数しか聞けませんでした。しかし、1人1台のタブレットを使うことで、リスニングが苦手な生徒は、何度も同じ部分を聞くことができ、得意な生徒はどんどん先の問題へと進むことができます。生徒それぞれのペースに合わせて学ぶことで、次第に「聞く力」が上昇したそうです。このほか、タブレットに絵や動画を映して、英語でアフレコを行う取り組みなども行っています。タブレットを使うことで、グループや個人で自主的に繰り返し学習が行えるのです。
また、中1では800語レベルの本を10冊、中2では1000語レベルの本を15冊読むなど、学年ごとの目標を掲げて洋書の多読にも取り組んでいます。生徒たちは英語の授業に加えて、洋書にも触れることによって、使える語彙数を増やしていきます。
教科書やデジタルを多用した学習と、『LS』や多読といったアナログな取り組みの両方を活かした“ハイブリッド”な授業サイクルが功を奏し、昨年度は中3の特進クラスで90%以上が英検準2級に合格するという結果をもたらしました。
考えを持ち発信できる力を養う『English Day』
こうした日々の英語学習により、中学の3年間で磨き上げたいと考えるのは「身近な話題から世界に目を向けていく力」です。日々の学習に加え、英語で調べて考え、発表する『English Day』を毎年開催することで、目標に向けての力試しを行っています。
中1の『English Day』では、日本の文化を英語で表現することにチャレンジ。自分の国について調べ、英語で発信する力をつけていきます。中2では、他者に目を向ける最初のステップとして、非英語圏のゲストを招いて英語でのインタビューに挑戦。中3では「世界で起きている問題」をテーマに、調べたことを英語でまとめて発表します。
中学で十分に実践的な英語力をつけた後、高校では世界の諸問題を英語で学び、英語で伝える『Global Studies』(GS)の授業へとつなげていきます。『GS』では海外で起きていることの背景や、世界にはさまざまな価値観があることを学び、より考えさせる授業を展開。ディベートも行い思考力や表現力を育てていきます。
中学では自分の意見を述べ、相手の意見を聞く力を培い、高校ではこれを発展させ、英語で議論できる英語力と社会的なテーマを論じられる知識と思考力を身につける。これを実現するのが同校の英語教育です。より確実な力をつけるためのたゆまぬ努力は続いています。
トキワ松学園の英語・国際交流プログラム
中1 | 中2 | 中3 | 高1 | 高2 | 高3 | |
---|---|---|---|---|---|---|
英検目標級 | 4級 | 3級 | 準2級(特進は2級) | 2級 | 準1級 | |
TOEIC目標 | 500 | 600 | 730 | |||
英語行事 | English Day 日本紹介 |
English Day インタビュー& プレゼン |
English Day リサーチ& プレゼン |
International Hour※ サマーチャレンジ |
GSプレゼン | GS英語 エッセイ |
多読(年間) | 800語レベル 10冊 |
1000語レベル 15冊 |
1500語レベル 15冊 |
2000語レベル 10冊 |
自由多読 | |
研修 | イギリス多文化研修 | |||||
校内留学 | アメリカ・グローバル 教養プログラム |
|||||
オーストラリア ターム留学 |
※International Hour…外国人ゲストを招き、英語で交流する行事。部活動の国際交流部の活動を合わせると年間で20カ国以上の人々と交流しています。
POINT1
ネイティブ教員2人+日本人教員のチームティーチング
『LS』は1クラスに3人の先生が入るため、細かい指導が可能です。会話テストも3チームに分かれて行えるため、生徒の待ち時間を削減、実践する時間を多く持てています。
POINT2
希望者制の海外研修海外大学特別推薦制度も
中3からチャレンジできる18日間のイギリス海外研修に始まり、高校ではオーストラリアへのターム留学(3カ月)もあります。学校が窓口になって海外大学への進学ができる海外大学特別推薦制度も整っています。
POINT3
ICT機器を活用、中学卒業時に7割が英検準2級以上を取得
使える英語の習得に力を入れる同校では、その力量を測るバロメーターとして英検の取得を目標として掲げています。電子黒板やタブレットの効果的な活用で英語力が急伸し、中学卒業時に7割の生徒が英検準2級以上に合格しています。

担当の先生より
テストが終われば忘れる英語力ではなく血となり肉となる英語力を

「生徒が興味のあることを常にキャッチするように心掛けています。教えたのにどうしてできないの? ではなく、なぜ習得させられなかったのかを考えていける教師でありたいと思っています。
テストが終われば忘れる英語力では意味がありません。血となり肉となったものが口から出てくる英語力をつけさせるため、生徒にたくさんの機会を与えていけたらと考えています。考えることや議論が楽しめるような仕掛けづくりを常に行っていきたいですね」
(英語科/平山朝子先生)
(この記事は『私立中高進学通信2018年7月号』に掲載しました。)
トキワ松学園中学校
〒152-0003 東京都目黒区碑文谷4-17-16
TEL:03-3713-8161
進学通信掲載情報

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