私立中高進学通信
2018年4・5月合併号
アクティブラーニングで伸ばす新しい学力
三田国際学園中学校
主体的な学びを喚起する理科実験が論理的思考力を養う
自分で考え、自分の言葉で伝える

箔がなぜ開くのか、自分の意見をグループの仲間に伝える生徒たち。
人に説明することで、知識は着実に自分のものになり、考えが深まります。
意見が活発に飛び交う教室
謎解きにチャレンジするような楽しさ
「マイナス同士が反発するじゃない?」、「そうか、だから箔が開くんだ」―。
理科の授業で「静電気」について学んでいる中2の教室。3~4人ずつのグループに分かれた生徒たちが、「箔検電器」という実験装置を囲んで、それぞれ積極的に意見をぶつけ合っています。
先生からは最初に、「トリガークエスチョン」と呼ばれる問いかけが投げかけられています。その答えを探して、生徒たちはこれまでに習ってきた静電気の起こる仕組みや原子の構造と電気の関係、静電誘導といった知識を総動員。箔検電器の仕組みや、目には見えない電子の動きについて考えた「仮説」が合っているか、検証しているのです。いろいろな方法を試して、試行錯誤している様子からは、チームで謎解きに挑戦するような楽しさが伝わってきます。
指導にあたる理科主任の佐藤充恵先生は、授業の進行役であるファシリテーターの立場です。教室内を移動しながら生徒たちを見守り、生徒一人ひとりが自分で考えることをサポートします。
実験の過程はiPadで撮影し、その画像や動画を、ほかのグループとの違いを検証するときに見比べたり、自宅学習のときなどに後から見返したりするために活用しています。
論理的思考のプロセスをたどる「相互通行型授業」
同校ではこれからの時代に求められる5つの力として「英語」、「コミュニケーションスキル」、「サイエンスリテラシー」、「ICTリテラシー」、「考える力」を掲げ、従来の一方通行型ではない「相互通行型授業」をすべての教科で実践しています。主体的に学びながら「疑問・仮説・検証・結論」というプロセスをたどる授業によって、論理的思考が習慣化されていきます。
例えば、中2の理科の場合は週5時間のうち、2~3時間は実験を取り入れた「相互通行型授業」を行い、残りの時間で共通知識の獲得や、実験結果のまとめ作業などを行っています。
同校で今や当たり前のように行われている「相互通行型授業」。しかし佐藤先生によると、以前は実験の手順を書いたプリントを配布し、先生と同じ作業を生徒に試させて結果を確認、という流れだったそうです。
「教員の指示に従って実験しても、やり方や結果が見えるだけでした。今のように、どうすればこうなるのか、実験の方法を考えるところから取り組み、“失敗”を共有し乗り越え、人に伝えられるようになると、仕組みや理論がより深い知識となって身につきます」
「なぜ?」に始まり、問題解決の糸口を考察する力を育む、
中2理科「静電気」の授業
Step 1疑問
トリガークエスチョン「帯電棒を遠ざけても、箔が開いたままになるのはなぜ?」

先の実験で、「箔検電器の金属板に帯電棒を近づけると箔が開く」ということを確認し、仕組みについても各自で説明できるようになった生徒たち。
ところが先生は、帯電棒を近づけていないのに、箔が開いたままの検電器の動画を映し出し、「何をしたら、こうなるかわかりますか?」と問いかけます。
Step 2仮説
グループで互いの仮説を共有し「自分の考え」を深めていく

金属板に帯電棒を近づけたり、金属板を指で触ったりすると電子はどういう動きをするのか。トリガークエスチョンを解くため、これまでに獲得した知識や他者の考えをもとに、自分の考え(仮説)を構築していきます。
Step 3実験
グループで話し合い「トライ&エラー」

先生からは「何度でも再現できる方法であること。帯電棒を金属板に付けたままにはしない」という2つのルールが提示されています。「金属板に帯電棒を近づけたら、反発したマイナスが下に移動して箔が開くでしょう?」、「金属板を指で触ったら箔は閉じるし」…。生徒たちはいろいろな方法を試しながら、箔が開いたままになる状態を探ります。

方法がわかったグループは先生のもとへ行き、再現して見せますが、うまく実演できないグループも。先生から「なぜ、できなかったと思う?」と聞かれた生徒たちは、「静電気が足りなかった?」、「帯電棒と指を放すタイミングが悪かった?」など、少しずつ考えを整理していきます。
Step 4考察
プレゼンして「教室全体で共有」

再現できたグループは、なぜその状態になったのか。iPadを使って動画を撮影したり、実験結果の画像に図や文字を書きこんだりしながら、論理的に説明するための素材を作ります。

最後は授業支援アプリを使って動画や画像をクラス全体で共有し、自分たちの考えを発表します。ところが発表者によって、開いたままの箔がプラスとマイナスのどちらに帯電しているのか、意見が分かれます。先生からは最後に模範的な考え方が示されましたが、授業終了後も白熱した議論が続いていました。
ココも注目!
生徒が自ら動き、教え合うことで理解・考えを深める

「相互通行型授業」では、基礎的な知識を事前に身につけたうえで、生徒自身が頭と手を動かし、教え合いをすることにより、理解・考えを深めていきます。限られた時間内で密度の濃い内容を実践できるのは、ICT機器で過去に学習したことや、さまざまな単元や科目同士のつながりを確認できるという面もあります。
生徒たちはいつも活発に授業へ参加しています。今回の授業では初めての単元だったので、まだ腑に落ちていない生徒もいました。そのため次の授業では、生徒全員が自分の言葉で説明できるレベルまで引き上げていきたいです。
(理科主任/佐藤充恵先生)
(この記事は『私立中高進学通信2018年4・5月合併号』に掲載しました。)
三田国際学園中学校
〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-16-1
TEL:03-3707-5676
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