私立中高進学通信
2018年1月号
私学だからできるオリジナル教育
東洋大学京北中学校
小説の執筆を通して生き方を考える時間
伝統の哲学教育を教育の基礎に置く同校。哲学の要素を取り入れ普段の国語の授業とは趣を異にする『国語で論理』を取材しました。

リレー小説の執筆がスタート。『僕は息を切らしながら、坂道をかけあがった』
『君に、昔話をしてあげよう』など、複数の“書き出し”のみ事前に与えられています。
哲学的教養を加味した独自の『国語で論理』
高名な哲学者・井上円了博士の遺した言葉『諸学の基礎は哲学にあり』を土台にした哲学教育を、同校は6年間の学びの根幹に据えています。
「“生き方教育”とも呼んでいる哲学を学ぶことは、豊かな人間性を育み、より良い生き方を探究することにつながるものです。
哲学と各教科の結びつきについても本校には独自性があり、論理的な思考力、表現力、哲学的教養を育むための必修科目として、中1から3年間、2時間続きの『国語で論理』の授業を実施しています」
(国語科主任/竹内正人先生)
『国語で論理』は、「論理的に考える力」と、「それを文章で表現する力」を実践的に学ぶ同校オリジナルの授業です。ここで養われる論理的思考力は、他教科でも活用できる思考のベースになります。また、中学から徹底して文章力を鍛えるため、数年後に訪れる大学受験でも強みになります。
「『国語で論理』では、物事を、分析・考察・表現の3段階で学ぶことを基本としています。例えば、『先生にインタビューをしてどんな人なのかを考える』というテーマなら【分析+考察】、『小論文を書く』『ディベートを行う』というテーマなら【分析+考察+表現】を用いて取り組みます。
一見するとハードルが高そうですが、物事を論理的に考えながら、それを文章化していく過程は実は楽しいものがあります。
心身の成長とともに大きく伸びる文章力、表現力をより確かなものにするために、段階的なカリキュラムで取り組んでいます」
修辞法を必ず入れてリレー小説を書く!
10月下旬、中2『国語で論理』の授業を取材しました。今日の課題は修辞法※を使った『リレー小説』の作成です。授業を担当するのは、国語科の金田 幹先生と柴田沙織先生の2名です。執筆開始にあたり、先生方からルールが伝えられました。
「執筆時間は45分間で、物語の『起・承・転・結』の部分を各自で分担しながら、リレーによって1本の小説を完成させてもらいます。
ただし、小説は1つの事件だけで終わるものではないからおもしろいのです。そこで今回は、『転』は1回だけでなく、2回入れた『起・承・転・転・結』からなる小説を書いてもらいます。準備はいいですか。“事件は2つ起こすこと”と、修辞法を必ず使うことがルールです。さあ、はじめ!」
“事件は2つ”と聞いて、「えーっ!」と驚きながらも執筆を始める頼もしい生徒たち。さてさてどんな小説が完成するのでしょうか。興味津々の授業が始まりました。
※修辞法 = 文章やスピーチなどに豊かな表現を与えるための一連の技法。
みんなと書くから意味がある
クラス全員で執筆する『リレー小説』

国語科/金田 幹先生(右)
『本当の教養を身に付けた国際人の育成』を教育理念とする同校。『国語で論理』の授業も、この理念に則り、哲学教育・国際教育・キャリア教育を融合した要素が加味されています。だからこそ、小説は1人で書くのではなく、他者と関わりあって書く『リレー小説』の形式が大切だと先生方は強調します。
「“文章”を作ることは1人でできても、“物語”は相手の気持ちが理解できなければ作ることはできません。誰かを傷つけるような書き方も、読み手が不快になるような表現も、どうしていけないのかを、他者と関わっていく中で学んでいくのです。自分の表現を相手に伝える喜びを、リレー小説の執筆を通して味わってほしいと思っています」(金田先生)
今はまだ与えられたテーマからの執筆段階ですが、『国語で論理』で磨いた論理的思考力と表現力をもって、次は全員が『哲学エッセーコンテスト』(中1~高3)に挑みます。
「エッセーを書くことでは、自らの生き方について思索を深めるとともに、他者の生き方と向き合います。自分の意見をしっかりまとめて相手に伝えていくという力こそ、まさにこれからのグローバル時代に欠かせない発信力となることでしょう」
(竹内先生)
自分から友だちへ。友だちから自分へ。クラス全員で取り組むリレー小説で、それぞれが未来につながる生きた言葉をつむいでいきます。
プリントを回して執筆する『リレー小説』
①プリント配布
『僕は息を切らしながら、坂道をかけあがった』などの書き出しと、『起・承・転・転・結』の執筆欄が設けられたプリントが配られる。
②制限時間を設ける
『起』は5分、『承・転・転・結』は10分と執筆の制限時間が決められている。
③執筆スタート
先生の合図で執筆スタート。全員一斉にまず「起」を書き、制限時間が終わったら、自分が書いたプリントをほかのクラスメートと交換。
④プリントを交換
他のクラスメートが書いた「起」を読んで、内容に沿うように「承」を書き、制限時間が終わったら、また他の人と交換。
⑤交換を5回繰り返す
これを5回繰り返し、クラス全員分の33通りのリレー小説が出来上がり!



授業に“多様性”をプラス『国語で論理』はTTで

共に授業を担当する柴田沙織先生(右)も拍手を送って労をねぎらっていました。
2名の教員が担当する『国語で論理』の授業。TT(チームティーチング)で行う理由を竹内先生に聞きました。
「1人の教員が担当していると、どうしてもその人の“くせ”が出てきます。現状を良しとするのではなく、常に『どんな工夫ができるか』『毎年同じ教材でいいのか』と2名の教員が議論し、生徒の成長に合わせてより良いやり方をブラッシュアップすることで、『国語で論理』が“生き方教育”となって定着していくことを期待しています」
生徒の成長を見つめて進化する、生きた授業がここにありました。
(この記事は『私立中高進学通信2018年1月号』に掲載しました。)
東洋大学京北中学校
〒112-8607 東京都文京区白山2-36-5
TEL:03-3816-6211
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