私立中高進学通信
2018年特別号
注目のPICK UP TOPIC!
桐光学園中学校
棋士の羽生善治氏が中高生に向けて
「決断力を磨く」をテーマに語る
各界の第一人者が講義する「大学訪問授業」

運営スタッフの井上実樹さん(高3)が羽生氏の国民栄誉賞受賞をお祝いして花束を贈呈。
井上さんは羽生氏の講義をこのように振り返ります。
「天才と呼ばれる方なので、私たちとは違うのかなと思っていたのですが、お話がわかりやすく、
自分にも活かせるものがたくさんあると感じました」
これまでの学びや体験から「直感」が生まれる

「羽生善治先生は1970年、埼玉県所沢市のご出身。1985年に中学生でプロ棋士になると、その4年後の1989年に初タイトルとして竜王位を獲得。1996年には将棋界初となる竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖の全7タイトルを独占。そして、2017年、史上初の永世七冠を達成。その功績を讃えられ、今年、国民栄誉賞を授与されました」
司会進行役の清水太晴君(高2)が羽生善治氏をこのように紹介すると、会場の体育館に大きな拍手がわき起こりました。
今年で16年目を迎えた「大学訪問授業」。土曜日の4時間目を利用して実施され、大学教授や著名な文化人が来校し、学ぶことの意義について語る授業です。その分野は、科学、経済、医学、哲学、文学、芸術、教育など多岐にわたります。
中学生から高校生、ときには保護者まで自由に受講でき、会場は毎回満席。感動と興奮に包まれます。生徒は大学と同じレベルの、あるいはそれ以上の講義を体験できるのです。
今回来校した将棋棋士の羽生氏の講義のテーマは「決断力を磨く」です。氏はアスリートたちの活躍を例にあげながら、プレッシャーの克服方法などを述べた後、本題に入りました。
「では、棋士は対局のとき、どう考え、どう決断しているのかというと、最初に『直感』を使います。将棋は1つの局面で80通りくらいの可能性があるといわれています。私はその中から2つないし3つの好手を選びます。適当に選んでいるのではありません。自分が今まで学んだり、体験したりしたことが瞬間的に現れるものが直感です。
そこから具体的な『読み』に入ります。『読み』は先の展開をシミュレーションすることです。可能性は足し算ではなく、掛け算で増えていきます。3つの手を選んだ後、10手先まで読もうとすると、3の10乗で、約6万弱の数になりますから、そこまで先を予想するのは現実的ではありません。
『直感』の段階で膨大な可能性を捨てているにもかかわらず、判断ができない状況になったときに使うのが『大局観』です。大雑把に全体像を把握して、戦略や方向性を決めることです。『大局観』を使うと不要な力や考えをはぶくことができ、ショートカットできます。私は公式戦で『直感』『読み』「大局観』の3つを駆使して決断しています」
詩人の谷川俊太郎氏や作曲家の坂本龍一氏も講義

羽生氏は続いて、不調の乗り越え方から、将棋の歴史、人間の知能とAIの違い、人間の記憶、ミスとの向き合い方までを語りました。どれも中高生にとっては貴重なアドバイスです。
その後、会場の生徒たちが次々に質問。1時間ほどで羽生氏の「大学訪問授業」は幕を閉じました。
「大学訪問授業」の講演者は、主に各分野の第一線で活躍する大学の先生で、名前や作品が教科書に載っている方、一般の書店で手に入る本を書いている方などが数多く名を連ねています。昨年は詩人の谷川俊太郎氏、ノーベル化学賞受賞の根岸英一氏、作曲家・音楽プロデューサーの坂本龍一氏などが来校しました。これまでに講義をしたのは、ジャーナリストの池上彰氏や田原総一朗氏、評論家の立花隆氏、脳科学者の茂木健一郎氏、精神科医の香山リカ氏、思想家の柄谷行人氏、法政大学総長の田中優子氏、芥川賞作家の荻野アンナ氏などです。
今年の「大学訪問授業」は計30回を予定。小説家で法政大学国際文化学部教授の島田雅彦氏がすでに講演しました。テーマは「歩行と時間についての考察」です。「大学訪問授業」が桐光生の知的好奇心を大いに刺激し、学ぶ意欲や進路意識をさらに高めています。


中学生たちに感想を聞きました。

写真左から「ミスをしても同じミスを繰り返さなければ大丈夫だと聞いて安心しました」(中2・柳沼丞太朗くん)、「私はプレッシャーに弱く、決断力がないと思っていましたが、いろいろなことに挑戦すれば自分が変われるんだと思いました」(中2・野尻凜花さん)、「ユーモアをまじえてお話しくださり、気さくな方だと感じました」(中3・杉山紗彩さん)、「緊張することは悪くないと聞いて、ほどよく力を抜いてやっていこうと思いました」(中3・多賀雅史くん)
(この記事は2018年8月に掲載しました。)
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