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私立中高進学通信

2017年10月号

先生の本棚

国府台女子学院中学部

こころの教育を大切に
独自の教科「宗教」の時間

国府台女子学院は、手厚い進学指導とともに、こころの教育を大切にすることで知られ、その中核を担うのが独自の教科「宗教」の時間です。宗教科主任である村上先生のお話は、一人の作家の世界観から同校の宗教教育へと広がっていきました。
おすすめの本を紹介してくれた村上泰道先生(宗教科主任)。

おすすめの本を紹介してくれた村上泰道先生(宗教科主任)。

自然の側から見ると人も動植物や精霊と同じような存在の一つになる

―ご紹介いただく2冊は梨木香歩さんの著書ですね。

『f植物園の巣穴』は長編、『家守綺譚』の方は連作短編です。『西の魔女が死んだ』が映画化されて話題になり、原作小説を手にとったのが、この作家との最初の出会いでした。文章は非常に綺麗で、伏線の張り方などは巧みで、文章技術の高い作家です。また、この作家は独特な世界観を持ち、その世界観に惹かれて、他の作品を読むようになりました。今回、紹介した2冊は梨木作品の魅力がよく出ていると私は思います。

―どのような世界観なのですか。

 少しだけ昔の、西洋文化が入ってきて東洋と混じり合い、活気の中に退廃が含む大正〜昭和時代が舞台のようです。『家守綺譚』の方でお話しすると、知的で気弱な語り手の青年(綿貫征四郎)のもとに精霊や妖怪、そして死んだ友人が現れ、彼と交歓するという内容です。ジャンルでいえばファンタジーですが、普通のファンタジーと違うのは、人間の側から見た奇異な世界ではなく、天地自然の側からすれば、それは常態の現象に過ぎないと見ているということです。

―それはどういうことですか。

 人間は本来動物や植物(精霊や妖怪)と同じく、自然の中では多くの存在の一つに過ぎないのです。その世界では境界はとてもゆるやかで、人間の狭い常識を軽々と超えて、生者と死者、過去と現在、有機物と無機物が普通に行き交い、それぞれが思いをもち能動的に動いています。

 この作品を読むと、私たちはたまたま人間としてこの世に生きているに過ぎないという気持ちになります。今存在している「生」は長い時間の中の一部だということですね。これはインド思想の輪廻にもつながる感覚です。梨木さんの作品は「生死」がテーマとなることも多いので、胸に迫る場面もありますが、そこには救いがあり温かみやユーモアが感じられます。こうしたとらわれのない世界観の中での出来事を、豊かな表現であらわす梨木作品は是非皆さんに読んでいただきたいです。

『世界についてたくさん知ろう』という思いが伝わってくる書架。司書の先生からは「入学して来た生徒が本により世界を少しずつ広げていってほしいという思いで選書しています」というコメントをいただきました。
『世界についてたくさん知ろう』という思いが伝わってくる書架。司書の先生からは「入学して来た生徒が本により世界を少しずつ広げていってほしいという思いで選書しています」というコメントをいただきました。

『世界についてたくさん知ろう』という思いが伝わってくる書架。
司書の先生からは「入学して来た生徒が本により世界を少しずつ広げていってほしいという思いで選書しています」
というコメントをいただきました。

宗教の授業では仏教だけでなくキリスト教やイスラム教日本の神道も学ぶ
先生たちのおすすめの本をコンパクトにまとめた『本の世界へ』が、毎年新入生にプレゼントされます。カラフルで魅力的な表紙はデザインコースの生徒が描いたイラストです。先生たちのおすすめの本をコンパクトにまとめた『本の世界へ』が、毎年新入生にプレゼントされます。カラフルで魅力的な表紙はデザインコースの生徒が描いたイラストです。

―村上先生は宗教の授業のご担当ですね。

 はい。本校は浄土真宗を建学の精神とし、知恵と慈悲を指導の二本柱としています。いわゆる知識や教養に留まらず、生きていくうえで軸となる「知恵」を持ち、他者の悲しみや苦しみを共有する「慈悲」の心を育てる一助として、6年間、週1コマの、宗教の時間を設けています。

―浄土真宗について学ぶ時間ということでしょうか。

 それも含みますが、本校の目的は信者を増やすことではなく、心を育てることです。宗教の時間は、浄土真宗や開祖である親鸞聖人についても学びますが、ブッダの生涯に遡って仏教を学びます。そしてキリスト教の『旧約聖書』と『新約聖書』、イスラム教の聖典『コーラン』、日本の神道など、世界の宗教について幅広く取り上げ、基本を理解してもらうようにしています。

―あらゆる宗教を扱うとは心が広いというか、懐が深いですね。なぜそうされるのでしょう。

 宗教とは知識や能力だけでは測れない世界の見方、生きる姿勢の問題であり、中高時代にそれと真剣に向き合うことで人生の深みが増すと考えるからです。宗教の授業では各宗教の教義を学ぶだけでなく、たとえば中2では「脳死」と「臓器移植」についてみんなで考える単元があります。重く深刻なテーマですが、仏教、キリスト教の基礎を勉強してきているので、「命」の問題と向き合う準備はできているのです。東洋と西洋の宗教観の違いが現代の死生観にも影響していることを知って、ものの見方が変わるというか、成長する生徒もいます。また、6年間の最後には反社会的なカルト宗教も扱いつつ、大学や社会のカルトへの勧誘についてあらかじめ知っておく意味もあります。

―世界の宗教について、これだけ多くのことを学ぶ機会は少ないのでは?海外の人々と接する際にも、助けになりそうです。

 そう思います。たとえば『旧約聖書』はキリスト教とイスラム教にとって大切なもので、その教えを信迎する人々にとってそれがいかに重要であるかを知っておくこと。たとえば、ジハード(聖戦)という言葉は本来自らの心の中の戦いを意味していて、決して宗教の違う他者に暴力を振るうテロのことではないと知っていれば、イスラムの人々に偏見を持たないで接することができます。相手が大切にしているものについて理解していくことはグローバル時代に必要な教養の一つではないでしょうか。

―ご紹介していただいた2冊が、国府台女子学院の教育にも深く関わっていることがわかりました。

 梨木さんの本を紹介したのは、私の好みだけでなく、他の方にもきっと楽しんでもらえると思ったからです。それは『歎異鈔』の思想とも通底するところがあります。それは心のどこかにそっと寄り添うという謙虚で優しい思いやりのことです。興味を持って読んでくださる人がいればうれしいですね。

紹介する本
『f植物園の巣穴』『家守綺譚』 梨木香歩

著者、梨木香歩について
1959年、鹿児島県に生まれる。1994年『西の魔女が死んだ』でデビュー。作家としての活動の背景に、イギリスへの留学とそこで出会った2人の児童文学者、ユング心理学者河合隼雄などの存在があると推測される。児童文学者の一人は『グリーンノウの子どもたち』の作者ルーシー・M・ボストンである。今回村上先生が紹介してくれたうちの一冊『家守奇譚』の語り手の綿貫が村田という友人について語る一節があるが、この人物は長編『村田エフェンディ滞土録』の主人公。こちらもすぐれた作品である。

(この記事は『私立中高進学通信2017年10月号』に掲載しました。)

国府台女子学院中学部  

〒272-8567 千葉県市川市菅野3-24-1
TEL:047-322-7770

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