私立中高進学通信
2017年7月号
校長が語る思春期の伸ばし方
東邦大学付属東邦中学校
難しい思春期も『ピンチはチャンス』豊富な体験で、大きく成長します

今年は「スペースイヤー」の同校。
「国際宇宙ステーションに滞在中の卒業生の金井さんと交信するというプロジェクトに向けて準備中です」(松本校長)
不安定な「思春期」こそ大きな成長が見られる

校長先生
早稲田大学第一文学部で西洋史学を専攻。1979年、東邦大学付属東邦高等学校に奉職し、世界史、倫理を担当。進路指導部部長、広報部部長などを経験後、2014年に高校教頭を経て、15年4月から現職に就任。
多感で心身ともに大きな変化を迎える「思春期」。保護者としても、子どもとの接し方について思い悩むこの時期の教育について、同校の松本琢司校長先生にお話をうかがいました。
「思春期は、第二次性徴を迎え、心身ともに揺れる非常に不安定な時期ですが、その分、大きく成長する時期でもあります。よく『ピンチはチャンス』と言いますが、思春期も同じで、不安定な時期でありつつも自立に向けて、人間的に大きく育っていく時期だと考えています」
『反抗期がない』または『遅れている』と言われる近年の子どもたち。松本校長は「反抗期が遅れていることを単純に喜んではいられない」と警鐘を鳴らします。
「最近の傾向で気になるのは、典型的な反抗期を中学時代に経験しない子どもが増えていることです。保護者の中には『うちの子、全然反抗しないんです』と喜んでいる方もいますが、学校としては、子どもたちの自立の準備が遅れているという意味において、むしろ喜べない、大きな課題の一つではないかと考えています」
子どもの自立を促すうえで、保護者としてはどのような点に気をつければ良いのでしょうか。
「転ばぬ先の杖をつかないことです。保護者が身の回りのことをしてあげていた幼児期の感覚を捨て、何でも先回りをしないこと。『小さなリスクを避けようとすると、けっきょく最後に自立しない人間を作る』という大きなリスクにつながりかねません。学校は失敗していい場なので、親が先回りして準備してしまい、小さなリスクをつぶさないようにしてほしいなと思います。生徒も失敗を恐れることのないように、本校としても『学校は失敗していい場だよ。何度でもやり直しがきく場だよ』ということを伝え、安心感を与えるようにしています」
松本校長は、各家庭で長期的な目標を立てることも推奨しています。
「保護者には、中学卒業時や高校卒業時にはこれくらいのことを自分でやれる人間になっていてほしいという目標を各家庭で立ててくださいという話をよくしています。明日の持ち物を自分で用意する、朝一人で起きれるようになるといったことでもいいと思うので、身の回りのことができるように導いていくことが必要だと思います」
自然体験や医療体験など豊富な体験型授業で導く
「思春期の育て方」保護者の心得
- 自立を促すためには、待ちの姿勢が大事
- 学校は失敗してもいい場所
子どもの失敗を親が恐れない - 「中だるみの時期」こそ豊富な体験で導く
多感な思春期の生徒たちを伸ばすために、同校ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。
「中学受験を経た子どもたちは実体験が不足しがちな面があるので、体験型の学習を積極的に行っています。中1では自然体験を中心にした宿泊学習、中2では農業や林業体験を中心とした自然体験を含む宿泊学習がありますし、理科の授業では実験を多く取り入れ、病院の協力の元、実際の医療現場で行われている手術などを擬似体験できる『ブラックジャックセミナー』という体験講座も行っています。このほか、家庭科、音楽、美術などの実技系の科目や部活、文化祭や体育祭も積極的に取り組むように導き、体を動かしのびのびと学ばせることを重視しています」
また、本年度は「スペースイヤー」として、特別な体験ができる貴重な年になるそうです。
「卒業生で宇宙飛行士の金井宣茂さんが12月に宇宙に飛び立つので、今年はスペースイヤーとして校内に展示をしたり、講演を聞いて『間接体験』をしたり、筑波のJAXAに見学に行ったりと多くの宇宙企画を計画しています」
「中だるみの時期」は待ちの姿勢で構える

中学後半以降の「中だるみ」と呼ばれる時期こそ、体験が重要であるとも話してくださりました。
「『中だるみの時期』というのは、机の上の勉強が進みにくくなる、少しだれてしまう時期という意味で使われていると思いますが、この時期はむしろ別の何かに取り組ませることで、子どものモチベーションをグッと上げることができます。保護者は無理に子どものに勉強を強いるのではなく、もう少しスタンスを変え、待ちの姿勢を持ってほしいなと思います。本校では、そんな中3の時期だからこそ、体験型のプログラムで2週間のホームステイをするオーストラリア研修を実施しています。自分の経験の中でそれまで当たり前だと思っていたことを疑う『自分探し』のきっかけをつくるのです。親元を離れて異文化と触れ合い、自分の足元を見つめ直す機会を得ることが、自ずと自立の第一歩につながると考えています」
「ブラックジャックセミナー」で医療体験

同校の豊富な「学問体験講座」の中でも、とくに力を入れているのが理科の授業。実験が豊富で、大学の施設を利用して、身の回りの物質から出る放射線を測定したり、自らプログラミングを行いロボットを製作するなどの体験講座があります。そんな体験講座の数々の中で異彩を放つのが「ブラックジャックセミナー」。東邦大佐倉病院の協力を得て、実際の医療現場で行われている外科手術などを擬似体験できる本格的な講座を展開しています。
(この記事は『私立中高進学通信2017年7月号』に掲載しました。)
東邦大学付属東邦中学校
〒275-8511 千葉県習志野市泉町2-1-37
TEL:047-472-8191
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 開学130周年記念式典 伝統を受け継ぎながら未来に向けて踏み出す新たな一歩三輪田学園中学校
- 頼りになる先輩と行動を共にして人間的にも成長する後輩たち足立学園中学校
- 自分を見つめ、友だちの新たな一面も発見する“成長の場”三田国際学園中学校
- 「他者理解」を深めるニュージーランド留学武蔵野中学校
- 未来への躍進を願って見栄えも、着心地も、デザインは“日本女性仕様”品川翔英中学校
- アイデンティティーを表現しながら上品さを兼ね備えた制服開智日本橋学園中学校
- 電子黒板の導入で変化する授業 電子黒板で授業効率アップ 質の高い授業で集中力も高まる共栄学園中学校
- 「本物の」アクティブラーニング 一生使える英語力を身につける白梅学園清修中学校
- フレンドシップ校協定締結 国際交流の新時代を開く地球サイズのたくましい人間力西武台新座中学校
- 新1年生宿泊オリエンテーション 入学前から育む友情と礼儀安田学園中学校
- 2018年度から始まる新たな「教育改革」 “50年後の幸せ”必要な力を養う教育改革横浜女学院中学校
- 【サッカー部/ダンス部】めざすは全国の頂点 夢が絆を強くする多摩大学目黒中学校
- 世界を考える『CLクラス』未来のリーダーを育成桜丘中学校
- 3つの柱を掲げた独自の国際教育東洋大学京北中学校
- 2018年春より男女共学化スタート八雲学園中学校
- 体系的な授業と多彩な講座で活きた英語力を磨く横浜富士見丘学園中学校
- 『育てたい生徒像』を土台にしたカリキュラム聖学院中学校
- 体験学習が思考力・判断力・表現力を育成東京農業大学第三高等学校附属中学校
- 英語のコミュニケーションを“考える”授業で育む東洋英和女学院中学部
- 図書室活用で言語技術アップ!中1の新授業『思考と表現』トキワ松学園中学校
- ゼミ形式の学びを中学から無学年制『探究ゼミ』を新たに始動八王子学園八王子中学校
- 育成 変化する世の中を生き抜き活躍することができる力を育む日本工業大学駒場中学校
- 自分で何でもさせる環境が子どもたちを育てる跡見学園中学校
- 『美術』はアイデアや表現力など今の時代を生き抜く力を育みます女子美術大学付属中学校
- 自分と出会い、人と出会う 柔らかい心で、自分の使命を見つける玉川聖学院中等部
- 難しい思春期も『ピンチはチャンス』豊富な体験で、大きく成長します東邦大学付属東邦中学校
- 教師は常に生徒に寄り添いながら6年間を共に学ぶという姿勢を貫く文京学院大学女子中学校
- 中学校生活の集大成として中3に行われるネブラスカ修学旅行が生き方を考える分岐点に専修大学松戸中学校
- 次世代に求められる「積極性」や「他者と協働できる力」精神面の育成を重視した教育富士見丘中学校
- 開講21年目を迎えた「芝柏絵画の会」芝浦工業大学柏中学校
- 親子で学校生活を謳歌!7種類のカルチャー教室立正大学付属立正中学校
- 少人数で、みんな仲良し♪アットホームな学校です。淑徳SC中等部
- 最先端の学びを、キリスト教学校ならではの全人教育に昇華普連土学園中学校
- 調べてまとめて発表する思考力型入試日本大学豊山女子中学校
- 八王子の豊かな自然に抱かれた美しい学校共立女子第二中学校
- 『グローバルリーダーコース』と『アドバンストコース』の2コース制で未来を切り拓く力を育てる大妻中野中学校
- 1泊2日のオリエンテーションが自立へのきっかけと仲間づくりに世田谷学園中学校
- 自ら気付き、考え、解決する自問自答の力を育む教育二松学舎大学附属柏中学校
- 自分のペースを崩さずにコツコツと歩み続けた中高生活実践女子学園中学校
- 自分の言葉で自分の考えを伝える喜びを知り一歩前に出る力を身につけた6年間東京都市大学等々力中学校
- 知性と個性を伸ばす豊かな学びの場で未来を切り拓く確かな土台を築く富士見中学校


