私立中高進学通信
2017年6月号
校長が語る思春期の伸ばし方
淑徳中学校
個性や失敗を認め、
多様な価値観に触れさせ自立心と思いやりの精神を育てる

海外での研修では、異文化に飛び込むことで生徒は飛躍的な成長を遂げます。
失敗を恐れず可能性に気付かせる

校長先生
徳島県出身。大正大学文学部日本史学科卒。1979年、淑徳中学高等学校に社会科(日本史)教師として着任。中学卓球部の顧問時代には、卓球台などの設備も十分ではなかった弱小クラブを、熱心な指導で全国大会の常連チームに育成。中学は9年連続で全国ベスト8の成績を残している。2017年4月から現職。
自分で考えて行動する自立心と、大乗仏教の教えに基づく利他共生の精神を、中高一貫教育で育んでいる同校。湊広賢校長先生は、思春期の教育において、その2つを培うことが重要だと考えているそうです。
まず一つ目の自立心については、自我に目覚める思春期において、挑戦する意欲を尊重すべきと言います。
「大人への途上である思春期は、反抗期でもあります。自己主張が強くなり、どうしても独りよがりな考え方に凝り固まりがちになります。あくまでこだわって、何度も失敗してしまうこともあるでしょう。しかしその失敗こそが貴重な経験で、成長の糧になります。つい軌道修正したくなりますが、本人が体験して初めて、気付くこともあります。もちろん他人を傷つけたり迷惑をかけるのは見過ごせませんが、思春期は社会に出るための準備期間であり、周囲が失敗に寛大であることで、伸びやかな自信を得られるのだと考えています」
自分らしさにこだわる思春期は、それを人に認めてもらいたいという承認欲求も強くなるもの。だからこそ個性を発揮したいという想いを意欲として尊重すれば、生徒の可能性を広げ、成長を助けると先生は言います。
「生徒が自身の個性に気付き、それを長所として伸ばしていけるよう、『自慢研究』という取り組みを実施しています。これは全生徒が自ら決めたテーマについて調べ、中3年次に卒業論文として発表し合うというものです。基本的にテーマに制限はなく、関心のある事を自由に選びます。昼食後に眠くなる生徒が睡眠のメカニズムについて調べたり、トップシェアの企業の優位性を探ったり、農業へのITの活用や、心理学、特定のスポーツ選手、映画作品と実に多彩。驚くことに200人近くいる生徒の間で、テーマはほとんど重複しません。興味があることを熱心に調べるため、発表内容も凝ったものが多く、生徒それぞれに個性があり、大きな可能性を秘めていることを再認識させられます」
将来を意識することで生徒は意欲的になる
思春期の子育て3原則
- 前向きな挑戦には、失敗も寛大に見守る
- 個性を発揮したいという想いを尊重する
- 可能な限り、多様な価値観に触れさせる
思春期の教育で自立心の育成とともに重視する、二つ目の利他共生の精神については、同校は人間の多様性に気付かせることから理解を促しています。
「他者への思いやりは、異なる考えを理解するところから始まります。ですから高校の1年留学コースや中3全員参加の海外語学研修は、単に英語の学力アップが目的なのではありません。異なる文化や価値観に触れることで、他者を思いやる気持ちを培う貴重な経験にしてもらうのです」
また、同校が強力に推進する多彩な国際プログラムは、多様な文化や価値観を知る以外に、もう一つの大きなメリットがあると先生は言います。
「海外の学生は早くから、社会に出てからの自分を意識しています。その影響を受けた生徒は帰国後に積極性が増し、自分の将来に目を向けて学ぶようになります。幼い頃に描いていた夢と異なり、思春期の生徒は夢を現実的なものとして捉え、そこに近づくために努力しなければなりません。前述の自慢研究は、自身の志向を把握し、そこから将来の方向性を定めるために有効な取り組みになります」
思春期の生徒に、将来を意識させるための同校のプログラムは他にもあります。『職業逆算講座』はその一環です。
「職業逆算講座は、保護者の皆さまに、ご自身の職業について生徒たちに講演していただくプログラムです。医師、弁護士、調理師、警察官など、毎回さまざまな職種の方にお越しいただいています。都市型水族館の職員である親御さんに、どのようにして都心に大量の海水を運んだのかを説明していただいたこともありました。不思議なもので、家族からの言葉には反発しがちな生徒も、友人の親御さんの話には熱心に耳を傾けます。そして自分の親が登壇した生徒は、最初こそ照れていますが、日頃は聞けない職場での活躍や奮闘を知り、誇らしさを感じるようです。表面上は反抗的でも、多くの生徒は心の底では親に対する尊敬の念を抱いています。そこを理解してご指導いただければ、生徒も言うことを聞き入れやすくなるのかもしれません」
個性を認め自立心を養い、人の多様性に気付かせることで他者への思いやりを促す、同校の思春期教育。そこには生徒との間に確かな信頼関係が築かれていました。


行事を生徒が運営し協力し合って成長する

体育際や文化祭は運営のほとんどを生徒が担い、競技や演目についても生徒のアイデアが採用されます。体育祭のチーム編成は中1生から高3生を縦割りで誕生月ごとに春夏秋冬の4チームに分け競い合います。中1生にとっては上級生とともに過ごし伝統を受け継ぐ貴重な機会で、また上級生にとっても後輩を指導することで自身の成長につながります。同学年の間でも交流が広がり、多様な人間関係が生まれます。
(この記事は『私立中高進学通信2017年6月号』に掲載しました。)
淑徳中学校
〒174-8643 東京都板橋区前野町5-14-1
TEL:03-3969-7411
進学通信掲載情報

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