私立中高進学通信
2017年6月号
アクティブラーニングで伸ばす新しい学力
サレジオ学院中学校
正解のない問題にどう向き合うか
オリジナル探究型学習『未来塾』
“25歳の男づくり”をめざして

社会的な問題に向き合い、「自分たちの手で、何かを変えることができるかもしれない」
という高揚感を抱いて取り組む生徒たち。
自分自身で問題を見つけ解決する力を養う
『25歳の男づくり』を使命に掲げる同校。奉仕する心を持つリーダーの養成をめざします。キリストの教えに基づき、社会的弱者やマイノリティーに手を差し伸べる心、さまざまな社会問題を解決する力を養っています。その一環として、2013年から始まったのが『未来塾』の取り組み。同校の卒業生が創立した次世代教育企業の協力を得て、中3から高2の希望者を対象に、全10回のプログラムで社会問題の解決策に取り組んでいきます。
「社会には正解のない問題が山ほどあります。正解のない時代を生き抜く力を身につけるために、このプログラムを導入しました。まず、社会にはどのような問題があるのかを認識するところから始め、生徒同士で話し合いながら解決策を模索していきます。導入当初は身近なところで校内の問題について考えましたが、2年目以降は地域の問題、社会問題へと徐々にテーマを広げています」(未来塾担当/榎本飛里神父)
自分たちの意見を多角的に考察する
10回のプログラムのうち、前半は講師が与えた課題について話し合い、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングの基礎、プレゼンテーションの技術と知識などを学びます。後半では、生徒たち自身で社会問題を発見し、チームに分かれて調査や研究を行います。プログラムの最終回では、他の生徒や先生、保護者を招いて発表会を開催し、1年間の研究成果を発表します。
「発表後には、質疑応答の時間も設けています。事前のリハーサルでどのような質問が来るか想定しますが、予想外の質問が飛んでくることも。それによっていろいろな視点を知ることができますし、批判される体験も次なる成長につながります」
『未来塾』を体験することで、自分に何ができるか、今何を学ぶべきかを把握する生徒もいるそうです。
「アジアの教育問題について1人で研究・発表した生徒がいました。将来はアジアで社会貢献をしたいと考え始めたようで、英語の学習に意欲を見せています。受験のためではなく、将来必要なツールだから英語力を磨くというように、モチベーションがシフトしたようです。
与えられた課題ではなく、自らが社会の中に問題を探し、他者に手を差し伸べてほしい」
と話す榎本神父。スタートからわずか4年ですが、すでに生徒たちは大きな成長を見せています。
「『25歳になった時、こうあってほしい』というひな型はありません。生徒一人ひとりを型にはめるのではなく、学校生活を通じて、それぞれの個性や資質を引き出していきたいと考えています」
先輩たちにも臆せず意見を言うのが楽しい!『未来塾』に参加した生徒にインタビュー

――参加した感想は?
中嶋悠人くん
中3から高2まで参加するので、先輩たちと同じ立場で意見を交わせるのが新鮮でした。
岩井紫皇くん
『未来塾』では、先輩や先生も「さん」づけで呼ぶので、対等な立場で発言できました。部活では、先輩に言われたことをそのまま吸収することが多いですが、『未来塾』はこちらからも意見が発信できます。互いの考え方にまで深く踏み込んで、意見交換できるところが楽しかったです。
佐藤厚己くん
これまでは自分から意見を出す方ではありませんでしたが、自分の意見をしっかりとした言葉にすれば納得してくれる人もいるし、「ここはこうじゃない?」と真剣に返してくれる人もいるのがうれしかったです。
─自主研究では、どのようなテーマを選びましたか?
岩井紫皇くん
「現代社会におけるAI(人工知能)を取り巻く課題と対策」について研究しました。囲碁でAIがプロ棋士に勝ったり、ロボットが東京大学の合格をめざしたりするニュースから、興味を抱いたことがきっかけです。
佐藤厚己くん
公民の授業でもタブレット端末を導入していますし、機械化の波は避けられません。AIは、将来の自分たちに直接影響を及ぼすテーマだと思います。
中嶋悠人くん
AIは、人間の仕事を奪うと言われています。近い将来、自分たちが社会に出た時、どう対応していくべきか考える必要があると思いました。
─将来はどんな男性になりたいですか?
岩井紫皇くん
上下関係を気にせず、違うと思ったら「違う」としっかり発言できる人間になりたいです。
中嶋悠人くん
上司にも怖気づかず、いろいろな提案ができる人になりたいです。金融系の仕事が将来の希望です。
佐藤厚己くん
立場に関係なく、自分の意見を堂々と言える人になりたいです。医療の道に進みたいので、今回学んだAIの知識も活かしたいと思います。
STEP 001
課題について議論を交わす

プログラムの前半では、外部の講師が与える課題について考察を深めていきます。論理的、批評的に物事を考えるための思考訓練、書籍やインターネットで調べ物をする際の注意点、プレゼンテーションのノウハウなどをじっくり身につけていくこの過程を通じて、後半で行うテーマ研究の下地ができていきます。
2016年度の参加者は約20名。中3から高2までの生徒が参加し、学年の違いを気にすることなく活発な意見交換が行われました。
STEP 002
生徒自身で研究課題を探し調査と考察を重ねて意見を発表

プログラムの後半では、チームに分かれ、それぞれのテーマについて研究を深めます。生徒自身が問題意識を感じたテーマ選びから始まり、本や新聞などを調べ、意見を交わしながら解決策を探っていきます。今年はチームではなく、1人で研究する生徒もいました。
プログラム最終回では、同校の生徒や先生、保護者など約100人の聴衆の前で発表を行います。事前に用意したスライドを使い、約8分間のプレゼンテーションを行った後は、質疑応答タイム。思いもよらない角度から質問が飛んでくるため、生徒たちの視野も広がり、思考の瞬発力も高まります。
2016年度の研究課題(一例) |
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保育士の待遇改善提案 |
引きこもりからの脱出方法への提案 |
東南アジアにおける教育課題と解決案 |
ローカル路線廃止による影響と対策 |
ベーシックインカム実現への提言 |
ココも注目
キリスト教の奉仕の心で社会問題を考える

「本校では、『他者の幸せのために生きる』というイエス・キリストの教えに基づく教育を行っています。『未来塾』のような総合学習を行う学校は他にもありますが、本校の取り組みは、その出発点となる動機が異なります。キリスト教的価値観を持った本校の生徒たちが、どのような社会問題を見出し、どのように解決するか。その背中を押すのが、『未来塾』なのです」(榎本神父)
(この記事は『私立中高進学通信2017年6月号』に掲載しました。)
サレジオ学院中学校
〒224-0029 神奈川県横浜市都筑区南山田3-43-1
TEL:045-591-8222
進学通信掲載情報

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