私立中高進学通信
2017年4・5月合併号
こどもの自立を促す教育
淑徳中学校
グローバルな活躍をめざす留学コースの生徒が
1年間の留学を終え比較文化発表会で成果を披露

ディスカッションは、ただ主張をすればいいというものではありません。他者の発言を「聴く力」も要求されます。
25年以上の歴史を持つ留学コース。『比較文化発表会』はその生徒たちが帰国後に行う集大成のプログラム。留学コースの導入背景などについて英語科の澤田翔先生にお話をうかがい、当日の様子をレポートします。
ディスカッションで異文化体験を深める

英語科、留学コース担任。現地視察に行ったとき、生徒一人ひとりから手紙を渡されました。そこに書かれていたアルファベットをつなぐと、澤田先生への感謝のメッセージが現れたそう。
留学コースの生徒は、高1の夏から1年間、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアから留学先を選び、現地校で学習。休学や留年なく、3年間で卒業できます。現地の環境や文化に触れ、高い英語力や積極性、さらにコミュニケーション能力を身につけるスペシャルコース。帰国後は、「比較文化」という特別授業を受講し、高2の3学期には保護者を招待して発表会を行い、留学の成果を報告します。
1月28日に開催された留学コース26期生(留学コース2年生)の発表会では、新しい試みとしてプログラムにディスカッションが追加されました。
「発表会を報告だけで終わらせず、それぞれの異文化体験をソーシャルイシュー、グローバルイシューに落とし込むきっかけにできればと思いました」
真に自立し、グローバルに活躍するためには、豊富な知識を身につけ、そのうえで自分の意見を持ち、それを誤解なく伝える技術が要求されます。その力を培う取り組みとして選ばれたのがディスカッションでした。
6人の生徒がパネリストとして登壇すると、ネイティブの先生からその場でトピック(問い)が与えられます。
一つ目のトピックは、授業中や放課後に比較文化発表会の指導をされたイギリス出身のマイケル先生からです。“Do you think Japan values collectivism over individualism in the classroom?” 観客のために通訳担当の生徒が「日本の学校は、個人主義よりも集団主義を重視しているか、考えを述べてほしい」と訳したところでスタート。パネリストは現地でブラッシュアップした英語を用い、活発に意見を交わします。「日本の学校行事は、集団で行われるものが多い」との発言があると、「個性を伸ばす授業も多くある」と反論が出ます。議論は盛り上がり、終了のベルが鳴っても、パネリストは「もっと発言したい」とアピールするほどでした。
次のトピックはアメリカ出身で留学コース副担任でもあるルーカス先生からです。“Do you think Japan should do more to be an intercultural society?(日本の社会はもっと異文化交流を取り入れるべきか?)”
通訳を担当した柴さんと太田さんは「聞き取ること以上に、短時間で双方の意見をまとめ、訳して伝える作業がとにかく難しい」と、一言も聞き漏らさないようにメモを走らせていました。
発表会のメインであるプレゼンテーションは、国別に、People(人)・Education(教育)・Language(言語)・Expectation vs Reality(期待と現実)をテーマにして行われました。
「Expectation vs Realityでは、『思い描いていたものと現実は違った』という体験から学んだことを発表します。事前に知り得た情報、つまり、メディアが発信した情報との相違を体感したことで、メディアの在り方について考えを深める生徒もいます」
進行も発表もすべて英語ですが、ドラマ仕立ての映像を流したり、観客を巻き込んでクイズを出したりと、「英語が苦手な人にも楽しんでほしい」という気遣いが感じられ、工夫を凝らした内容ばかり。準備にあたっては、現地の友人やホストファミリーに連絡を取って最新の情報を集めるなど、留学でできたつながりも活用しました。
「異なる地域に留学していた生徒と情報交換をすることで、日本に戻ってからも、世界の多様性を知ることができます。先輩と同じ学校やホストファミリーにお世話になる生徒も多くいますので、留学を起点に、横にも縦にもつながっていく。これは本校の留学コースの特長の一つではないでしょうか」
学びは“地続き”
帰国後の研鑽も大事
「留学について『日本でうまくいかなくても、海外に行くだけで変われる』という誤解をしている場合があります。日本で勉強をしない人は、海外に行っても何も学びません。学びは留学の前から始まり、帰国してからも努力が必要。常に『地続き』なのです」
ディスカッションの練習中には、「難しい」「うまく言えない」と悩んでいた生徒も、繰り返すうちに「ためになる」「面白い」と見る見るうちに積極的に。自分の考えを伝える楽しさを知ることは自発的に学ぶ姿勢へと結び付きます。
「英語はただの道具。道具を使って伝えるのは自分自身の考えです。その考えの支えとなる内面をもっと豊かにできるように、この先も導いていきたいと思っています」






(この記事は『私立中高進学通信2017年4・5月合併号』に掲載しました。)
淑徳中学校
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