私立中高進学通信
2017年2・3月合併号
Teacher's Lounge 先生たちの座談会
本郷中学校
「自分で考えて行動する」
生徒の自主性を引き出す指導が文武両道で活躍する生徒を育成


――部活動に精力的に取り組む生徒が多いにもかかわらず、難関大学への高い合格実績を誇る、貴校の指導の特徴には、どのようなことがありますか。
福島先生
1つ挙げるなら、生徒の主体性を大切にした指導をしていることかと思います。勉強面に関してなら、中学生のうちは指名補習などをして、教員がしっかりと面倒を見るけれども、だんだんと手を放していきます。昔は「面倒見の良い学校」で、補習を盛んにしていた時代もあったといいますが、思うような結果が出なかったために今のような方針にシフトしたと聞いています。

保健体育科教諭。中2担任。柔道部顧問。「『先を見通して自己実現をする』『人の気持ちをわかろうとする』『自分の軸を持つ』の3点を大切にできる大人になってほしいです」
久保先生
きちんとした生活習慣を身につけ、自学自習につなげようという考え方のもと、全生徒に手帳を渡して記入させる取り組みを行っています。私のクラスでは、前日の行動についてホームルームの時間に記入させ、1週間に1度か2度、集めるようにしています。
福島先生
手帳を使うのは、書くこと以上に、先を見て、すべきことを自分で管理して行動できるように促すためです。以前、なかなか手帳を書かない生徒に、「勉強の時間は書かなくてもいいから、ゲームをしていた時間は書くように」と指導し、1カ月間で何時間ゲームに時間を費やしていたかを計算させたことがありました。やりすぎだなということに生徒自身が気付くきっかけになってくれたと思います。
若生先生
成績が伸びたので、何をしたのかを聞いたら、「手帳を書き始めた」と答えた生徒もいましたね。部活動も相当がんばっている生徒なのですが、「手帳を書けば、成績なんてすぐに上がりますよ」と言っていたのが印象的でした。
久保先生
ホームルームの時間に「こんな手帳があるよ」とクラスメートの手帳を見せることもあります。友達の影響は全体の意欲を引き上げてくれるものだと思います。

国語科教諭。中2担任。サッカー部顧問。「困難に飲み込まれない、ゆったりとした豊かさを持った人間に育ってほしいですね」
若生先生
小学生の時に、大人に言われた勉強をただこなしていただけという生徒は、手帳を書くことはできませんね。人から言われたからという理由で勉強する姿勢であっては、大学受験には通用しませんので、そこを脱し、自分で勉強ができるように方向づけていく初めのステップが手帳の取り組みなのかもしれません。
――学習面の指導はどのようにしていますか。
若生先生
「教科の勉強だけでなく、別の勉強もしてごらん」と言う機会が多いです。毎朝、10分間の朝読書をしているのですが、小説を読んでいる生徒が多いので、「興味のある分野についての新書を読んでごらん。それは、自分の大きな財産になるはずだから」と伝えています。今のクラスでも、将来医師になりたいという生徒が医療に関する新書を読んだり、学者になりたいという生徒がとても難しい理系の本を読んだりしていますね。彼らの顔つきを見ていると、みんなが知らないことを知っているという自信がうかがえます。
久保先生
学年が終わるときに、「後輩におすすめしたい一冊」を作文にして冊子にまとめる『朝読書リレー』もしています。先輩が残してくれた冊子から、自分の興味のある分野の本を見つけたり、知っている先輩が読んでいるんだからと読み始めたりすることが、関心の幅を広げるのに役立っていると思います。

理科教諭(化学)。高1担任。野球部顧問。「生徒には、周りの人と調和を取りつつ、自分の個性を発揮できるような大人になってもらいたいです」
福島先生
中3で取り組む『卒業論文』も自分でテーマを見つける活動です。興味のある分野を自分で勉強し、3000字以上の論文にまとめます。
若生先生
『本数検(本郷数学検定)』『本単検(本郷単語検定)』という、数学と英単語の級や段が認定される本校独自の検定試験もあります。年に3回、始業式の日に行われるのですが、英単語は全学年が、数学は中3以降が、共通の問題に取り組むので、意欲が高い生徒は授業では習っていない問題をどんどん解いていきます。このレベルをめざしたいからと、自分で目標を設定して勉強をしてくるんですよね。普段の勉強をきちんとやるということが大切なのはもちろんですが、プラスアルファで何かをしてみるという経験が自主性を育むのに役立っている気がします。
久保先生
「自分は何に興味があるんだろう」「将来どんな仕事をしたいんだろう」などと思考させる機会も多いので、普段から結構考えていると思いますよ。自分の軸となるものを見つけた生徒は、勉強面もその他も急激な成長を遂げます。
若生先生
中2で英検1級を取得した生徒がいます。そうやって、自分の好きなことを追求して自分で勉強する姿勢は、評価していきたいですね。
――部活動に関して教えてください。
福島先生
部活動は、中1は全員参加、中2以降もほとんどの生徒が継続しています。活動の時間は、中学生の場合、平日は週に3日でそれぞれ2時間程度。週末に試合などがあるクラブもありますが、活動時間は他校に比べると少ないほうだと思います。
若生先生
生徒からはもっとやりたいという声も聞かれますが、勉強や基本的な生活も大切にしながら、短い時間だからこそ集中して取り組むようにしています。指導に関しては、ここでも自主性を大切にしていますね。中学サッカー部のキーパーの生徒たちには、自分たちで練習メニューを考え、その結果を見て、次の練習を考えようという方針で指導しています。結果を得る過程で学ぶ部活動こそ、アクティブラーニングの実践の場として最適だと思います。
久保先生
柔道部でも、技の研究の時間を設けています。自分自身で強くなる術を探して取り組んだほうが、意欲も出るし勝った時にもうれしいですよね。
福島先生
中学野球部でも生徒自身に考えさせることを大切にしています。すべてのことを、こちらがああしろ、こうしろと言ってしまうと、教員が考えるところまでしか伸びない。こちらがゴールを決めるのではなく、どこまでもやってもらいたいと思います。
久保先生
あいさつや礼儀など人間として大切な部分や、興味のあるところをとことん追求する力は、基礎として一番大切にしています。個人的には、将来も柔道をずっと続けてほしいという思いもありますね。
若生先生
「やるべきことはきちんとやろう」というのは、どの先生を見ていても考えていらっしゃることだと思います。勉強面でも部活動でも、それを普通に指導して、あとは「ちょっと背伸びしてごらん」「自分たちでやってごらん」と生徒の背中を押してあげることを最も重視しています。
(この記事は『私立中高進学通信2017年2・3月合併号』に掲載しました。)
本郷中学校
〒170-0003 東京都豊島区駒込4-11-1
TEL:03-3917-1456
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