私立中高進学通信
2016年11月号
カリキュラムを読み解く
横浜創英中学校
少人数制で全員の能力を引き上げる
中学3年間を通して豊かな体験学習の場を提供している同校。
英語や数学の強化、放課後学習や補習の充実で全員の学力を高め、そこに体験学習が加わることで総合的な人間力を育てています。実際の取り組みや工夫についてうかがいました。

3年生全員参加のカナダ語学研修。正しい国際理解と人格形成をめざします。
英語・数学を中心に強化充実した内容の体験学習

77年の歴史ある高校のもと、中学校は14年前に開設されました。1クラス30名前後の少人数制で、「考えて行動できる人」の育成という建学の精神に基づき、豊かな学校生活を送れるようなカリキュラムづくりに取り組んでいます。
まず目をひくのが授業時数です。英語と国語は標準数より105時間、数学は140時間も多くなっています。
「中学入試から、本校受験生は算数が苦手な者が多いということがわかります。解答用紙に、途中の式や考え方を書いてもらうスペースを設けたことにより、どこまでわかっていて、どこで間違えたのかという過程を把握することができているので、数学の授業には特に力を入れ、ていねいに指導するようにしています」
(入試広報部長/稲垣勝二先生)
英語の授業では、週3回7時間目にEH(イングリッシュ・アワー)を設定し、20分間ネイティブの教師と英語のみのやり取りをします。
「英語を強化するのは語学力をつけるだけではなく、国際感覚の習得や人格形成がねらいです。日本で学びを重ねた後、3年生の10月には、全員がカナダへ11日間の語学研修へ行きます。生徒たちは、同年代の子どもがいる家庭にそれぞれホームステイし、現地の学校に通うのです。英語で数学、英語でフランス語を学ぶような授業もあり、夏休み期間中ではなく普通の授業がある時期に行くことで、カナダの中学生の日常生活を体験することができます」
(稲垣先生)
体験学習はカナダの研修旅行だけでなく、入学後すぐに行われるオリエンテーションから内容が充実しています。1年生では3泊4日でアドベンチャースクールに参加し、グループ単位でさまざまなミッションをこなします。ここでは仲間と力を合わせることでコミュニケーション能力の基礎をつくり、達成感から自信へとつなげていきます。
また2年生では、2泊3日で関西歴史研修に参加。ここでは京都大学で学んでいる外国人留学生に各グループ1人ずつ付いてもらい、一緒に神社仏閣を回るというユニークなプログラムを通して国際感覚を肌で学んでいきます。
「3年間の活動ごとにディスカッションやプレゼンテーションを繰り返し、そのつど、文章にして記録しておきます。卒業時には最も思い出深かった出来事を全生徒、教員、保護者の前で発表する“ポートフォリオ発表会”を開催します。1年生でパワーポイントの使い方をマスターしますので、その技術を活用して堂々と発表しています」
(稲垣先生)
学校の枠にとらわれず社会に出ても役立つ授業

中学での取り組みの成果は高校でも表れ、主要大学への合格実績がここ3年間で倍増しているのです。一人ひとりの学力差に応じてきめ細かく学習指導してきた成果が表れ始めています。
「学力差を縮めるための補習は積極的に行っています。少人数だからこそできることです。また、本校はハンドボール部やバトン部、吹奏楽部など全国レベルの部が多く、帰宅してからの学習が難しい生徒のために、放課後学習サポートを実施しています。長期休みの特別講座も好評で、希望者が多くほとんどの生徒が受けています」(教頭/本間朋弘先生)
また、中学と高校の枠の中だけで授業を考えるのではなく、大学や社会に出てからどのように役立つかを重視した新しい学習法を教員も常に模索しているといいます。
「一つの正解を探すのではなく、答えの導き方や他人とのつながりを意識するアクティブラーニングを、社会への入り口ととらえています。現在、アクティブラーニング型の授業を取り入れる教員は7割。来年度にはシラバスに組み入れる予定です。電子黒板も、この夏すべての教室に導入しました」(本間先生)
アクティブラーニングの実例を本間先生に挙げていただきました。担当する社会科の歴史の授業では、クイズ大会やグループディスカッションを実施して楽しく授業を進めるようにしているそうです。
「例えば『縄文時代に武器が槍から弓矢に変わったのはなぜか』というテーマがあったとします。これまでは『狩りの対象がナウマンゾウなど大型動物からシカやイノシシなど動きが速い動物に変化したから』という一つの答えしかありませんでしたが、もちろん違う答えがあってもいいですし、そこにたどり着くまでのいろいろな意見を大切にしています。さらに、槍が弓矢になり、やがてミサイルなどの武器が生まれたと、現在や未来へとつなげて発展させることもできるのです」(本間先生)
少人数制の新しい学校だからこそできる、改革しながら生徒とともに歩む同校。さまざまな工夫によって社会でも役立つための学習法をどんどん取り入れ、全員の能力を引き上げるように、さらに進化しています。


(この記事は『私立中高進学通信2016年11月号』に掲載しました。)
横浜創英中学校
〒221-0004 神奈川県横浜市神奈川区西大口28
TEL:045-421-3121
進学通信掲載情報

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