私立中高進学通信
2016年11月号
The Voice 校長インタビュー
関東学院中学校
学外にも活躍の場を広げ
21世紀を生き抜く調整力を育む

冨山 隆 (とみやま・たかし)
1955年生まれ。青山学院高等部から大学を経て、1978年、関東学院中学校高等学校に着任。国語科教諭として教壇に立つ。2003年、中学校高等学校校長に就任。プロテスタントのキリスト教に基づく人間教育と男女共学校のあり方を模索し続けている。
学ぶ意欲に合わせて多彩な語学研修を用意
冨山校長先生が掲げる学校改革のポイント
- 一人ひとりの「気配を消す」授業から
「気配を出し合う」授業へ - 忍耐力・やり抜く力が合意形成を導く
調整能力のある生徒を育てる
キリスト教を建学の精神とする本校は、アメリカのパブテスト派宣教師が設立した神学校を源流に持つ、プロテスタントの学校です。学校の一日は毎朝の礼拝から始まります。生徒たちは、神の前に喜び生きる人、神によって遣わされ社会に貢献する人へと成長していくのです。社会に出た卒業生が校訓『人になれ 奉仕せよ』を社訓としたというエピソードが耳に届きます。キャリア形成のうえでも、中高6年間のキリスト教教育が大きく関わっていることを表した一つの証ともいえます。
キリスト教教育を基盤にした本校の学校生活には、志を同じくする多くの留学生も参加しています。積極的にコミュニケーションを取ろうとする彼らから刺激をもらい、「次は自分も」と決意する生徒が多く、心身の成長とともに、やがて自らの意志で語学習得の道を歩み始めます。
自立し、自ら学ぶ意欲が芽生えた生徒たちに有効活用してもらっているのが、多彩な海外研修制度です。約2週間の『オーストラリア研修旅行』をはじめ、科学と英語が融合した『ハワイ島理科研修』、姉妹校で異文化のクリスマスを体験する『台湾短期ホームステイ』、短期間で実践的な英語スキルを習得する『セブ島語学研修』などがあります。さらに、中国語と韓国語を選択して学べる課外授業もあります。生徒たちが、英語圏だけでなくアジア圏に目を向けるきっかけにもなっています。
それともう一つ、横浜YMCAとカリキュラムを共同開発した『グローバル・ビレッジ』も好評です。中3~高2までが対象で、週1回、年間25回開催する放課後の英語学習講座で、ネイティブスピーカーと日本人教師によるチームティーチングで、エッセイとクイックレスポンスを主にした内容はハードですが、がんばって乗り越えた先に、約2カ月間の『ターム留学』(オーストラリア)も待っています。多文化共生というグローバル社会に欠かせないキーワードを、五感を通して実践力に変えていく未来志向の英語教育です。
「気配を消す」授業から「気配を出し合う」授業へ
本校では今、各教科で授業改革が始まっています。あえて私の言葉で言うと、「人の気配を消す授業から、人の気配を出し合う授業」への転換を図っています。
従来型の授業では、先生の話を静かに聞くことが模範のスタイルとされてきました。極端な場合には、授業中の発言の多くは“むだ口”とされ、注意の対象となってきたといっても過言ではありません。これが私の言うところの「気配を消す授業」です。
しかし、このような一方的な学び方では、これからの社会に必要な合意形成のための調整力を育むことはできません。誰もが主役になりながら折り合いをつけていく授業、つまり「気配を出し合う授業」が重要なのです。英語におけるペアワークを採り入れた授業の導入もその一例で、せっかく40名前後の生徒たちが教室に集まっているのですから、そこでできる新しい学び方は何かという点に教師がこだわっていかなければ、これからの学校というものは成り立っていかないのではないでしょうか。
もちろん従来型の授業を完全に否定するつもりはありませんが、生徒一人ひとりの持ち味を遠慮なく出し合って、信頼関係をベースとした授業をつくり上げることを大切にしていきたい。それが人間観に焦点を当てたキリスト教教育に基づく本校の真髄と考えています。
学校は社会の縮図でもあります。お互いを認め合うからこそ、価値のある関係が成立するということの意味を、「気配を感じる授業」を通して、楽しみながら学んでほしいと思っています。
合意形成を導く調整力は 忍耐力から生まれる
本校には、部活動に熱心な生徒が大勢います。そんな生徒たちには「甲子園とオリンピック」を意識してもらいたいと思います。誰もが高校野球で甲子園をめざせとか、オリンピックに出場することを目標にせよと言っているわけではありません。全国レベルの大会や海外の大会やコンクールに、自ら果敢に挑戦する生徒を、学校をあげて応援していく雰囲気をつくりたいのです。
実はこの夏も、『フラガールズ甲子園』という文部科学大臣杯をかけた全国大会に、高校生が2年連続で出場しました。結果は、技術点と芸術点が評価されての努力賞でした。ほかにも、インターハイに出場した女子の少林寺拳法部、鶴岡で開催された高校生バイオサミットで活躍した生徒、韓国政府が23カ国60名の高校生を招待した研修に参加した生徒と、その活躍ぶりは枚挙にいとまがありません。
これからは『数学オリンピック』や『科学オリンピック』といった学外の活躍の場を積極的に生徒に紹介していくとともに、生徒自らが挑戦していくことができるような環境を整えていきたいと考えています。これからの大学入試や就職活動で、ぜひこの大学に入ってください、会社に入ってくださいと求められる人間力を育んでいく必要があるのです。
その人間力とは、これからの社会で求められている合意形成のための調整力・折り合いをつける力です。グローバル社会では、人も国もつながり合っています。その中で独り勝ちすることはできません。部活動を通してその合意を形成するための根気・忍耐力・やり抜く力のある生徒が増えることが、学校の魅力となるのではないでしょうか。
聖書の中で、「神は自分の姿に似せて人を作った」と表現されています。人間には計り知れない大きな可能性や才能が与えられているということです。それを原動力として、学内外の活躍できる場を通して、自ら『人になれ、奉仕せよ』の意味を理解し、行動することのできる人に育ってもらいたいと願っています。

[沿革]
1919年、パブテスト神学校と東京中学院を源流に持つ「関東学院」が、神奈川県より土地の払い下げを受け、現在地に開校した。初代院長の坂田祐が入学式で発した「人になれ、奉仕せよ」が校訓となる。来たる2019年には創立100周年の佳節を迎える。
(この記事は『私立中高進学通信2016年11月号』に掲載しました。)
関東学院中学校
〒232-0002 神奈川県横浜市南区三春台4
TEL:045-231-1001
進学通信掲載情報

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