私立中高進学通信
2016年10月号
その先に備える キャリア教育
東洋大学京北中学校
哲学
哲学的に生きる生徒たちは主体的にキャリアを考える
学祖・井上円了が遺した「諸学の基礎は哲学にあり」の精神が息づく学び舎。
自らの人生を主体的に選び、切り拓くために欠かせない確かな指針が『哲学』にあります。

中・高ともに哲学教育を通して、考える力を育てる授業を行っています。

維新の動乱により日本人の価値観が一変した明治時代。新たに誕生した私学の多くが、法律や経済、あるいは農業・商業・工業といった実学を教授する専門学校でした。それに対して同校の学祖・井上円了が教育の中心に据えたものは『哲学』。世界一周旅行を3度経験し、海外の事情もよく理解したうえでの確信を持った決断でした。以来、哲学教育は同校の重要な柱の一つとして、キャリア教育にも影響を与えています。
「本校の哲学教育は、物事をしっかり考えられる人間をめざすという教育です。世の中の流れを疑うことをせず、それに従うことを前提とした生き方ではなく、“その流れがどこに向かおうとしているのか”を俯瞰する力をつけてほしいと思っています。中高の6年間に培った力で、受け身な自分から主体的に行動できる自分への脱却を図るもので、10代の生徒が立ち向かう将来の仕事や進路の選択に欠かせない重要な指針となることでしょう」(哲学教育推進部長/石川直実先生)

同校の哲学教育は、哲学の知識や既成の道徳観を教師が一方的に教え込むやり方は一切していません。学年ごとに与えられたテーマ、学期ごとに取り組む課題などについて、生徒自身が考え、意見交換をし、世間の常識や自己の狭い価値観を問い直し、常により良く生きることを求めて自問自答する力、すなわち『哲学的に考える力』を養っていくものです。
100年以上の歴史を重ねた男子校から共学校となって2年目。哲学に対して静かな反応を見せることが多かった男子に対して、女子が積極的に哲学教育をリードするような変化も生まれているようです。石川先生はこうした動きをポジティブにとらえ、誰もが気軽に取り組むことができる哲学教育の進め方を常に模索しています。
「生徒たちによく言うのは、哲学の賞味期限は少なくとも2000年以上はあるということです。仮に資本主義が立ち行かなくなったとしても、哲学は無くならないでしょう。『世の中にはこんな職業があるよ』というように、カタログを見せるかのような形で職業を選ばせるのではなく、自らのキャリアは自らの力で切り拓くという主体性のある生徒を、哲学教育によって育成することが本校の使命であることを強く確信しています」
中高6年間のキャリア教育Report
中1~中3
『哲学』は中学の必修科目

授業の中で扱うテーマは多種多様。他人の意見を聞くよりもまず、「自分ならどう考えるか」と常に自問し、思索を深めていきます。意見がほかの人たちと違っていても臆することなく、むしろ大切なこととして語り合っていく姿勢こそ、キャリアデザインの重要な第1歩になるようです。
中1・中2・高1・高2
自らを見つめ、他者理解につなげる『哲学の日』&『哲学エッセーコンテスト』

1年間取り組んだ『哲学』で考えたことをさらに掘り下げ、自ら立てた問いに対して、論理的に文章を構成して作成する「哲学エッセー」。2~3月に1次・2次審査を行い、3月の『哲学の日』で最終選考と表彰を行っています。
高2
良書と出合い視野を広げる『名著精読』

良書との出合いから、自らの視野を広げ、価値観を深めていくきっかけをつかむ『名著精読』。今年度の課題図書はV・フランクルの『夜と霧』です。
「読後感を記したノートを教師に提出する形にすると、生徒はどうしても優等生的なことを書こうとします。それでは哲学的なものにならないので、仲間同士で交換する形にして、上半分に自分の意見、下半分にほかの生徒たちの意見を記入させるようにしました。自らの人生に大きな影響を与える良書との出会いもまた楽しいと実感してもらえたらうれしいです」(石川先生)
高1・高2(希望者)
「罪と罰」「償いと更生」を体験を通して学ぶ『刑事裁判学習会』
今年で12回目の実施となった『刑事裁判学習会』。以前は平均15名前後で行っていましたが、共学後は50名以上の希望者が集まり、特に女子の関心の高さが目立つようになったと言います。実際に刑事裁判の傍聴に行くほか、弁護士や新聞記者を招いての学習会やディスカッションなどを通して、世の中の「罪と罰」「償いと更生」の意味を深く考えていきます。


刑務所の見学なども行われています。
(この記事は『私立中高進学通信2016年10月号』に掲載しました。)
東洋大学京北中学校
〒112-8607 東京都文京区白山2-36-5
TEL:03-3816-6211
進学通信掲載情報

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