私立中高進学通信
2016年8月号
校長が語る 思春期の伸ばし方
国府台女子学院中学部
本質を見極めるための自問自答の中で
未来を切り拓いていく力を養います

中学1・2年次では週に1度、国語科目の一つとして読書指導を行います。メディアリテラシーの学習の場でもあります。
自問自答を続けて未来を切り拓いていく

学院長
国府台女子学院3代目学院長。1952年生まれ、千葉県出身。成蹊大学を卒業後、株式会社三越に入社。その後、1983年に社会科教員として国府台女子学院に着任し高等部部長などを歴任。1996年より現職。浄土真宗本願寺派僧侶でもある。
今年創立91年を迎えた国府台女子学院。創立以来、女子教育に邁進してきた同校では、のべ2万人以上の生徒が学び、それぞれの夢に向かい巣立っていきました。
一人の少女から、未来を自ら切り拓いていくしなやかな女性へ――。成長著しい多感な時期を迎えた生徒たちの様々な悩みに、平田学院長は想いを馳せ、「大人が自分たちの都合のいいように子どもを扱ってはいないだろうか」と指摘します。
「私たち大人は『まだ子どもだから』『もういい年なんだから』と都合のいいように言葉を使い分けることがありますが、彼らにとっては大きなジレンマです。子どもには、純粋な子どもなりの正義感があります。その純粋な部分をうまく伸ばしてやることができたらと考えています」
昨年度は四年制大学への現役進学率が93.4%に達した進学校ですが、学力のみに重きを置くのではなく、仏教を反映させた心の教育にも力を注いでいます。
「週に1度行われる仏教朝礼の中で、イルカ漁や臓器移植など時事的なテーマを話しつつ、子どもたちに命とは何か、自分とは何かを考えるきっかけを作っています。私はこういった話をする際、テーマの是非や善悪を断定しません。答えを人からもらわないと動けないようでは困るからです。

仏教は答えをくれる宗教ではなく、問いをくれる宗教と言われますが、めまぐるしく変化する現代社会にあって、常に自問自答し、本質を見極めんとする仏教的思考を身につけることは、自らの未来を切り拓いていく大きな力になるのではないでしょうか。
子どもたちには難しいテーマかもしれませんが、わからなくても伝えておく必要があると考えています。それでも、生徒たちはよく話を聞いてくれています」
性別による役割分担が固定化されない女子校という環境も、何事に対しても自ら動き、人生を切り拓いていく強さを育むといいます。
健全な心身のためは日々の生活習慣が大切
「思春期の育て方」保護者の心得
- 密なコミュニケーションで親子の信頼関係を育む
- 時には本気で叱って打たれ強いハートを養う
平田学院長は、今の子どもたちの睡眠時間が減少していることに非常に危機感を持っています。
「文科省の全国学力・学習状況調査で、就寝時間の短い児童が増えているという結果が出ました。すべての基礎となる生活習慣がしっかりしていないと、健全な心身の成長は望めませんので、大変危惧しています。
今の子どもは忙しい。小学校での英語の必修化や、常用漢字の追加など学習面だけでなく、スマートフォンの登場は子どもの生活を大きく変えました。ある調査では、女子高生のスマートフォンの1日平均使用時間が3時間以上という結果も出ています」
スマートフォンとの付き合い方に関して、学校ではどのような指導を行っているのでしょうか。
「東日本大震災以降、保護者から所持の要望が高まり、現在は校内にいる間は電源を切るというルールのもとに許可しています。
依存させないためには、スマートフォン以上に夢中になれるものを提示してあげるのも一つの手です。同校では、カリキュラムの中に読書の時間を組み込むなど、小学生の頃から本を読む習慣がつくような指導を行っています。
3年前の新校舎建設の際には、図書館が中心にある学校にするべく、玄関正面に図書館を設計。街の書店のようなレイアウトを取り入れ、読ませる仕掛けを施しています。そのため、すぐに貸出率が上がったのです。
スマートフォン利用については、具体的指導も行っています。女子はコミュニケーションに対する志向が強いので、専門家を招き正しいSNSの利用法をテーマにした講演会も行っていますが、ご家庭での導きも重要です。
子どもに家族とのコミュニケーションを大事にする心があれば、SNS上のコミュニケーションに耽溺してしまうことはありません。ご家庭内のコミュニケーションを、密に、大切にしていただきたいですね。反抗期前の小学生から中学生の間で、何でも話せるような親子の信頼関係を築けたら良いと思います」
何でも話せるといっても、ただの“友達親子”ではいけないと平田学院長は言います。
「親は子どもを導く指導者としての役割も果たさねばなりません。基本は褒めて伸ばすことが大切ですが、もし悪いことをしたら本気で叱ってあげるのも親の役目。
怒られた経験のない子は、打たれ強さのないストレス耐性の低い人間になってしまいます。子どもたちは、褒められ、また本気で怒られるという経験を繰り返すことで、心の自己回復力を養っていくのです」
知的好奇心をくすぐる「書店のような図書館」

生徒たちが登下校のたび、本を目にするよう玄関正面にガラス張りの図書館を設置。入口すぐのカウンター前に平置きスペースがあり、月ごとにセレクトされた本が並びます。おすすめコメントが書かれたポップが添えられ、まるで書店の新刊コーナーのような雰囲気で、子どもたちの知的好奇心を刺激しています。過去には年間300冊以上借りた生徒もいたそうです。「人間の心は言葉でできていますから、大切な心の教育の一つです」(平田学院長)
(この記事は『私立中高進学通信2016年8月号』に掲載しました。)
国府台女子学院中学部
〒272-8567 千葉県市川市菅野3-24-1
TEL:047-322-7770
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