私立中高進学通信
2016年7月号
The Voice 新校長インタビュー
東京純心女子中学校
人を喜ばせることで自分も幸せになれる
“清く・賢く・やさしい”女性を育てたい

写真上部のルルドの聖母と呼ばれるマリア像は、フランスにあるキリスト教の聖地“ルルドの泉”を模したもの。
その前には四季折々の花が咲き乱れています。
松下 みどり (まつした・みどり)
長崎県出身。幼児洗礼を受ける。清泉女子大学卒業後、純心聖母会に入会。
3年間の修練期を経て、鹿児島や長崎の姉妹校に奉職。東京純心女子中学高等学校には2013年より国語科教員として勤務。
2014年4月から副校長。同年8月1日、前任者より校長職を引きつぎ、現在に至る。
手入れされた植物に触れ
自分の大切さを知る

私は鹿児島や長崎にある姉妹校を経て、本校に来ました。東京の子どもたちは鹿児島や長崎の子どもに比べて都会っ子なのだろうなと思っていたのですが、本校の生徒たちはイメージと違い素直で素朴なかわいい子どもたちだったので、うれしかったです。そんな生徒たちの心を育てているものの一つに、豊かな自然環境があると思います。校内には、四季折々のさまざまな植物が育っていて、専任スタッフの方が毎日、ていねいに手入れしてくださっています。そんなふうに手をかけられた植物を生徒たちが目の当たりにすることで、自分たちも大切にされていることを感じているようです。
世の中に出れば、その人ができることとできないことでランクづけされたりする場面もあります。時には、そのせいで苦しんだりすることもあるでしょう。でも、この学校にいる間だけは何かができるからではなく、存在することそのものがとても素晴らしい価値のあることだということを、生徒たちに実感してほしいと思っています。自然は人を差別せず、誰でも温かく受け入れてくれる代表のようなものですからね。
辛いことなしに何かを成し遂げることはできない
叡智と真心を備え、
社会に貢献できる自立した女性の育成
- 見えないものを見る力を養うカリキュラム。
- 思考力・課題解決能力を育むアクティブな探究型学習。
- 広く世界にこころを開き、他者とともに生きる力を育む平和教育。
本校では“清く、賢く、やさしい女性”を育てようとしています。ただやさしいだけではなく“賢く”やさしい女性です。創立者のシスター江角には、生徒たちを聖母マリアのような女性に育てたいという思いがありました。聖母マリアの生き方は、自分がやりたいことをやるのではなく、神さまが望むことをする人生です。「人を大切にし、人を喜ばせること」「周りをよく見て、その人が今、何を望んでいるかを考えて行動すること」。社会に出た時に自分が少々犠牲を払っても、周りの人が喜ぶ行いをすれば、自分自身も幸せな人生が歩めるということを知ってほしい。また、「辛いことを経験せずに何かを成し遂げることはできない」。そういうことが当たり前だと思ってほしいのです。それを伝えることが、カトリックミッションスクールの使命でもあると思っています。
先日うれしい出来事がありました。私たちシスターは自分の誕生日ではなく修道名のお祝いの日を祝います。その日は生徒会執行部からプレゼントをいただくんです。私は少し照れくさいのもあって「気持ちだけで十分ですから、生徒たちに還元してください」とお断りしていました。ですが、当日に生徒会執行部の生徒が校長室を訪ねてきて、「このスタンプを押すと、みんなが元気になるから使ってください」と渡されました。私は“滝山うさぎ”というオリジナルキャラクターを授業の時によく描くのですが、その滝山うさぎのスタンプを作って持ってきてくれたのです。生徒たちに還元してほしいと言った私の希望を受け入れ、私を含め、みんなが喜ぶものを考えてくれた。中2の時には反抗期だった生徒たちが、高校生になってこんなに人のことを考えられるようになったのだと、心の底からうれしくなりました。
中3生の保護者からの手紙
家庭の協力あってこその教育
中3の学年研修で奈良・京都に行くのですが、その時に保護者の方からの手紙を預かっていきます。保護者の方には事前に「いろいろ言いたいことはあるでしょうが、その手紙には“あなたのことが大切ですよ、愛していますよ”ということだけを書いてください」とお願いしています。親元から少し離れて過ごした最終日、親ってありがたいなと思っている時に手紙をもらうので、生徒たちはとても感動するのです。すべてのご家庭が手紙を書いてくださることは、本当にありがたいです。学校だけでなく、ご家庭の協力があってこその“純心教育”だということをつくづく感じています。そして、生徒たちが愛され、大事にされていると感じることが重要であると、教員が認識しているのも素晴らしいことです。少し難しい時期を過ぎた中3のタイミングでこれを行うことも、生徒が成長するきっかけとなっています。
図書館での探究型学習と長崎研修で平和を学ぶ
本校には、「探究型学習」という学習活動があります。国語、社会科、音楽、家庭科などの教科において課題設定、情報の収集と整理、発表までをグループごとに行います。探究型学習の拠点となるのが図書館です。図書館には司書教諭がおり、図書館の活用法から一人ひとりの作業の進み具合や内容を、各教科の教員と協力しながら指導してくださいます。探究型学習では、司書教諭の存在が本当に大きいと思っています。司書教諭には、教科だけでなく行事にも関わってもらっているのですが、現在、高1で行っている長崎研修を高2に繰り上げ、高1では探究型学習の中で平和学習を扱い、長崎研修の準備とすることを計画しています。
長崎には本校の母体となった姉妹校があり、1945年の原爆投下で生徒・教職員214名が亡くなっています。研修では、長崎の姉妹校を訪れ、被爆して亡くなった214名の校墓に祈りを捧げ、体験者の方から話を直接聞きます。そういう体験をすることで、生徒たちは命の大切さを強く実感して帰ってきます。世界では命が粗末にされている状況がたくさんあります。でも日本にいると、それを身近に感じられることはほとんどありません。長崎での研修は平和に対する思いも育むのです。卒業生の中にはNPOの海外支援団体や、医療系・看護系に進学している生徒も多く、これからも平和教育に、いちばん力を入れていきたいと思っています。
[沿革]
1934年、長崎に設置母体である教育修道会「純心聖母会」創立。1935年、長崎に純心女学院開設。1948年、鹿児島に純心女子高等学校設立。1963年、東京純心女子学園設立。現在、長崎・鹿児島・東京にそれぞれ大学・短大・高校・中学校を設置。幼稚園や老人ホームを設け、女性教育と福祉にあたる。
(この記事は『私立中高進学通信2016年7月号』に掲載しました。)
東京純心女子中学校
〒192-0011 東京都八王子市滝山町2-600
TEL:042-691-1345
進学通信掲載情報

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