私立中高進学通信
2016年2・3月合併号
Teacher's Lounge 先生たちの座談会
国士舘中学校
「文武両道」を支えるのは先生たちの熱意と愛情
「人としての心の在り方」を学ぶ学校生活

――貴校では、授業や部活動など、学校生活のすべての場面で、人としての在り方を学ぶ「心の教育」を行っているとうかがっています。その背景にある理念や考え方は、どのようなものなのでしょうか?

国語科教諭。中3担任。中学校進路指導部長。テニス部顧問。授業のモットーは「真面目に楽しく」。1時間の授業の中で、一度は必ず、生徒たちを笑わせることを心がけている。
綿貫先生
国士舘の「国士」という言葉は、「国のために尽くす人物」という意味です。つまり、「世の中の人のためになる人間」を育てるという教育理念があります。そのために、「誠意(真心をもって行動を起こすこと)・勤労(自ら率先し、労を惜しまない勤労奉仕の気持ち)・見識(広い視野を持ち、正しい判断ができる)・
川野先生
困っている人を助けるためには、真心を持って真剣に相手に向き合う姿勢や、物事をやり続ける行動力、正しい判断ができるだけの知恵、心が折れそうなことがあってもそこから立ち直ってひたむきに立ち向かう力などが、総合的に必要になります。このような力を、学校生活全体で育んでいこうというのが、本校の教育の大きな特徴かと思います。
志賀先生
そのために、教員がわざと叱ったり、注意をしたりする場面も多いですね。例えば、今日、私が担任する中1のクラスで、教室移動の際にイスを出しっぱなしで移動してしまうことがありましたが、全員を呼び戻して直させました。

英語科教諭。中3担任。放課後、クラスごとに行う補習で、学習に追いついていない生徒のフォローに尽力している。
柿沼先生
そういう意味では、学校全体に、体育会系の雰囲気が流れていると思います。とは言っても、「厳しさの背景にあるやさしさ」は、生徒たちも理解してくれていると思います。
川野先生
私が担当する武道科では、授業の約半分が、道徳の授業の要素を含んだ内容になっています。集団行動の中では人を思いやる力や自分がやりたいことがあっても我慢する力が必要であることを話したり、いじめなどをテーマに、「君たちならどうする?」と問いを投げかけたりすることもあります。また、礼法にも時間をかけて取り組み、テストでは、「礼」の実技をしたりもしています。同じ礼であっても、相手に合わせようとしてやっているのか、自分本位にやっているのかは見ればわかります。そのような指導を通じて、相手を思いやる気持ちを育てたいと思っています。
綿貫先生
私が担当する国語の授業では、相手に合わせることを「気配を読む」としたうえで、送り仮名の“り”を付け加えて、それは「気配り」であると教え、国士舘の精神である人助けは、これができたうえで初めてできることだと伝えています。
志賀先生
国語科から独立して「書写」の授業があるのも本校の特徴かと思います。そこでも、書写の先生は、「墨をすることは、心を磨くこと」と指導しています。このような指導を各先生が授業やホームルームで工夫して行っていると思います。
柿沼先生
中1の始めは、あいさつもぎこちなかったのに、しばらくするとちゃんとしたお辞儀ができるようになっていますね。私が担任をしている中3の生徒たちは、中1の時にはケンカをすることが多かったのですが、中2あたりから、周りのことがよく見えるようになってきて、今は互いを気遣えるとても仲の良い学年になっています。
川野先生
本校の生徒たちは、見た目は元気がよくても、心がやさしいことが大きな特徴ですね。毎年2回、生徒たちに『エゴグラム』診断を受けさせて、指導の参考にしているのですが、本校の生徒たちは、「心のやさしさ」の項目が突出して高い傾向があります。弱いものいじめをしないことや、困っている人がいたら助けることを、教員の共通認識のもとに徹底指導しているので、自然と身につけているのだと思います。
――学力を一層向上させ、「文武両道」を全うできる生徒を育てるために、今年度より体制が変わったとうかがっています。具体的にはどのような取り組みなのでしょうか?

武道科教諭。中2担任。柔道部顧問。「硬くならずにケジメをつける」メリハリのある指導を信条とする。ご自身も同校の卒業生。
志賀先生
今年度より週6日制となり、より多くの授業時間を確保できる体制に移行しました。また、朝、クラスごとに小テストを行って、点数が悪かった生徒たちを対象に、放課後の補習を行っています。2015年度の中1と高1からは、補習を専門で担当する外部の先生たちの手も借りていますが、小テストの作成や採点は担任が担当し、放課後の補習も、基本的には担任を中心に行っています。
綿貫先生
自分の専門外の教科も教えなくてはならないのでけっこう大変なのですが、せっかくなので、教員のほうも楽しんで取り組むようにしています。生徒たちも、「放課後、補習に残りなさい」と言うと、初めは嫌がるのですが、けっきょく補習の時間が楽しくなってしまって時間が延びてしまうのですよ。少し面倒を見てあげると、生徒のモチベーションも高まるようです。中3の生徒は、友達との教え合いもうまくなってきたので、こういう形で学力を向上させ、勉強のやり方を身につけてほしいと思っています。

国語科教諭。中1担任。グローバル社会の中でも、昔ながらの日本の良さを理解した生徒を育成していきたい。ご自身も同校の卒業生。
柿沼先生
週6日制になってから、時間数を増やしたのは「英語」の授業です。時代の流れの中で必要性が高まっているという点はもちろんありますが、それだけではなく、国士舘として、「外国人とコミュニケーションが取れれば、国内だけでなく外国の人も助けられる、そのためのツールとして英語教育に力を入れよう」という考えがあります。例えば、今度、中3の社会科の校外学習で浅草に行くのですが、そこで、必ず1回は外国人に声をかけるということを課題に出しています。道案内などの人助けができればそれがいちばん良いのですが、まずは「声をかける」ことを目標にしています。
志賀先生
このように、学校行事と各教科での学習が結び付いていることが多いのも本校の特徴です。歌舞伎などの芸術の鑑賞や文化を実際に体験してみる行事も非常に多いですね。
綿貫先生
普段の学校生活で学ぶ人や物事への姿勢や、行事の中での体験は、すべて「生徒たちの生きる力を育む」キャリア教育につながっていると考え、取り組んでいます。今後は、各教科の担当教員が連携しながら、このような行事への取り組みをより精査し、本校ならではのキャリア教育として、強化・推進していきたいと思っています。
(この記事は『私立中高進学通信2016年2・3月合併号』に掲載しました。)
国士舘中学校
〒154-8553 東京都世田谷区若林4-32-1
TEL:03-5481-3114
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 次代を見据え、さらなる飛躍を 創立百十周年記念式典麴町学園女子(麹町学園女子)中学校
- 日々の気づきから生まれた考えを正面から訴える 仏教主義学校連盟弁論大会立正大学付属立正中学校
- グローバル社会で躍動し 輝く女性になるために おそれることなく世界に飛び出そう!昭和女子大学附属昭和中学校
- 入試説明会 世界へ目を向けて真の学力を伸ばす6年間世田谷学園中学校
- iPad活用 積極的な活用で未来の可能性を切り開く光英VERITAS中学校(現校名 聖徳大学附属女子中学校)
- 本物の世界に触れる実験・実習でグローバルに活躍する日本女性を育成和洋国府台女子中学校
- 図書館が校舎の中心に! 豊かな想像力を育む充実のキャンパスライフ昭和学院中学校
- 校訓『正・浄・和』の 『和』の願いを込めた 新校舎『E棟』が誕生浦和明の星女子中学校
- 四季のいぶきを感じる緑豊かな環境に恵まれた新時代志向のキャンパス二松学舎大学附属柏中学校
- バルーンアート・ハンドクラフトクラブ/生態環境調査クラブ 好奇心を刺激する豊かな環境 興味分野を広げ、伸ばし、深める品川翔英中学校
- 家庭と学校が手を携えて生徒たちの食生活を支える女子聖学院中学校
- TPOに合わせた制服の着こなしから女性としての品性を養う京華女子中学校
- “競争しない教育”は直系付属校ならではの環境 英語と数学で生きる力を鍛える明治大学付属明治中学校
- 美術で磨かれる感性が普遍的な強さを生む力に共立女子中学校
- 独自の学習プログラムL.L.T.で 自ら考え、学ぶ探究心や共に生きる力を育てる聖学院中学校
- 人間力を高めるキャリア教育の成果跡見学園中学校
- 学年合同の行事が「他者理解」を促す武蔵野中学校
- 「文武両道」を支えるのは先生たちの熱意と愛情 「人としての心の在り方」を学ぶ学校生活国士舘中学校
- 豊富な海外研修プログラム 研修に参加した高1生と高2生が語る獨協の魅力獨協中学校
- 「哲学教育(生き方教育)」「国際教育」「キャリア教育」の柱のもと 本当の教養を身につけた国際人を育成東洋大学京北中学校
- 一人ひとりを大切に育み 独自の取り組みを通して世の役に立つ女性を育てる普連土学園中学校
- 「自主堅正」の校訓のもと自分の意志で判断し行動に責任が持てる生徒を育成高輪中学校
- 自分の夢を追いながら社会にも貢献できる人に麗澤中学校
- 建学の精神「自主自律」に基づき多様化する社会に対応できる女性を育成東京家政大学附属女子中学校
- 価値観が多様化する社会で必要となる自ら選択する力を育む横浜富士見丘学園中学校
- 文化や国境を越え他者を理解する心を育成する聖ヨゼフ学園中学校
- 社会で働くイメージに直結する 『デザイン思考』&『企業コラボレーション』品川女子学院中等部
- 完全中高一貫化で リベラルアーツ型学習を基本に自分探し学習をさらに推進東邦大学付属東邦中学校
- FUJIMURAノートと少人数クラスで学習姿勢と生活習慣を細やかに指導藤村女子中学校
- 「25歳の男づくり」への第一歩 友情を育み、学習習慣を確立する1年間サレジオ学院中学校
- 美術を通じて自分を知りやりたいことがみつかった女子美術大学付属中学校
- 報恩奉仕の精神で後輩たちの未来を共に考える専修大学松戸中学校


