私立中高進学通信
2016年1月号
カリキュラムを読み解く
共立女子中学校
読書感想文で培う自己発信力
小中高生の読書離れが深刻化する昨今ですが、同校では毎月1冊以上の本を読み、感想文を書く「読書教育」に力を入れています。読書の習慣が身につくだけでなく、感想文を書くことで文章力、国語力がアップし、論理的思考力や自己発信力も養います。

読書感想文コンクールで1位となった生徒は、授賞式で自身の感想文を朗読します。
その素晴らしい内容に、大きな拍手が贈られました。
毎月の読書ノートで論理的思考力や書く力を育む
中学全学年で行われる読書感想文コンクールは、今年で50回目を迎えました。同校は国語科教育にも注力し、論理的思考力と感性を磨くことを目的に、多くの小説や評論、古典を授業で扱っています。これに加えて重きをおいているのが、読書感想文コンクールをはじめとする「読書教育」です。
まずは、指定図書の中から毎月1冊以上の本を読み、感想文を書く「読書ノート」に取り組みます。国語科の先生が添削して戻し、またそれを踏まえて感想文を書くことを繰り返し行い、書く力をつけていきます。忙しい中学校生活の中で毎月1冊以上の本を深く読み込み、感想文を書くことは探究心や思考力を要する作業ですが、中1から「読書ノート」に取り組むことで本を読む習慣がつき、文章を書くことにも慣れていくそうです。
毎月の「読書ノート」で力をつけたら、夏休みには読書感想文コンクールに向けた読書が宿題として課されます。こちらは学年ごとに選定された図書2冊を読み、そのうち1冊に関して、原稿用紙4枚に感想をまとめて夏休み中に郵送で提出します。
国語科の先生方全員の厳正な審査によって、各クラスから2名ずつ代表が選ばれ、その中でさらに1位~3位を決定。夏休み明けの読書感想文コンクールにて壇上で表彰されます。
このコンクールには「友達から学ぶ」という大切なテーマも込められています。毎年、受賞した感想文や優秀な作文を優秀作文集『ともだち』にまとめて、読書教育の教材として使っているのです。生徒たちは優秀な感想文を読むことから感想文の構成や文章の表現力を学び、さまざまな物の見方にも触れて刺激を受けていきます。
「本校では、同世代の友達から学ぶことを大切にしています。それは読書感想文も同じ。教師が書き方を教えるのではなく、同じ学校で学ぶ同年代の優秀作品を読み、そこから学び取ることが大切であると考えています」
(国語科/金井圭太郎先生)
論理性と発想力を養うブックトーク

昨年からは「ブックトーク」も読書教育の柱に加わりました。夏休みの課題図書のうち1冊を、9月に行われる「ブックトーク」の題材に使います。
「課題図書は日本文学とその他に分かれており、ノンフィクションや海外文学の中から選ばれます。
読書感想文は文章で自分の感想や考えを人に伝えますが、ブックトークは名前の通り、話して伝えることに重点が置かれています。課題図書の内容から生徒が自分でテーマを決め、関連した書籍を中1生は1冊、中2生と中3生は2冊選び、2分間でプレゼンテーションします。
課題図書と関連付けた本を紹介するため、論理性と発想力が求められます。同級生の発表に『この本からこのテーマを導き出すなんて思いもよらなかった』と新鮮な驚きがある一方で、みんなの前で発表することで課題に気づくこともあります。
『もっと大きな声を出さないと聞こえない』、『原稿にばかり目を向けるのではなく、みんなの顔を見て話すほうが説得力がある』といった意見も寄せられました」(金井先生)
高校でも書評を競う「※ビブリオバトル」を行い、さらに読書の深さと幅、そして自己発信力を磨いていきます。思春期の6年間に身につけた読書の習慣と文章力は、大学受験で役立つのはもちろん、同校生徒の一生の財産となることでしょう。
※ビブリオバトルとは、1人5分間で好きな本を紹介し、参加者が投票でチャンプ本を決める知的書評合戦。

H27年度読書感想文コンクール課題図書(中学)
学年 | 作品名 | 著・訳者 | |
---|---|---|---|
1年 | 日本文学 | 楽隊のうさぎ | 中沢けい |
その他 | 走れ! 移動図書館 本でよりそう復興支援 | 鎌倉幸子 | |
2年 | 日本文学 | 楽隊のうさぎ | 中沢けい |
その他 | ガラスの地球を救え | 手塚治虫 | |
3年 | 日本文学 | 楽隊のうさぎ | 中沢けい |
その他 | おわらない夏 | 小澤征良 |
読書・表現についての学習内容
学年 | 基礎学力養成期 | 基礎力充実・ 応用力発展期 |
問題発見・ 解決能力養成期 |
---|---|---|---|
中1生・中2生 | 中3生・高1生 | 高2生・高3生 | |
内容 | ○『読書ノート』や朝の「読書タイム」による推薦図書読書・原稿用紙の使い方指導。 ○読書感想文コンクールにおける課題図書読書・表現指導。 ○作文添削指導。外部作文コンクール参加の奨励。 ○優秀作文集『ともだち』発行。 ○ブックトーク。 |
○修学旅行の紀行文指導。 ○『読書ノート』や朝の「読書タイム」による読書の奨励。 ○読書・LHRでの討議と関連させつつの表現指導。 ○優秀作品の生徒会機関誌等への掲載。 ○ブックトーク・ビブリオバトル。 |
○読書記録や朝の「読書タイム」による読書の奨励。 ○相互批評による表現・小論文指導。 ○ビブリオバトル。 |
(この記事は『私立中高進学通信2016年1月号』に掲載しました。)
共立女子中学校
〒101-8433 東京都千代田区一ツ橋2-2-1
TEL:03-3237-2744
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