私立中高進学通信
2016年1月号
未来を生き抜く学力のつけかた
三田国際学園中学校
変革する社会で活躍できる力を培う
相互通行型授業を展開

授業を聞くだけではなく主体的に考える力を育成
「本校の教育目的は、グローバル社会で活躍できる人物の育成です。社会がいかに変わろうとも、力強く生きてほしい。そのために必要な考える力をつけるべく、『相互通行型授業』に取り組んでいます。本校独自の教育改革を進めていたところ、国が推進する2020年教育改革とも方向性が合致しました」
(学習指導部長・社会科教諭/田中潤先生)
相互通行型授業では、教員が投げかけたテーマについて生徒自身が考え、グループで意見を交換し、議論を重ねていきます。1人1台所持するiPadで情報を収集したり、自分の意見を発表したりすることで、判断力や表現力も養われます。
「中1生はみんなで意見を出し合うところから始め、学年を重ねるにつれ『正義とは何か』など答えの出ない問題に移行していきます。スタートから半年ですが、すでに学習の効果は表れています。例えば東南アジアの工業について学ぶ中1社会科の授業では、『君たちが洋服メーカーの社長なら、アジアのどこに工場をつくる?』と問いかけ、データに基づいて考えるように促しました。すると『タジキスタンは人口の多い中国やインドと近いので、生産性が高い。ここに工場を建設すれば、GDPやGNIが向上し、地域も発展するのではないか』など、興味深い意見が多数飛び出しました。ただ授業を聞くだけでなく、自分から考えることで学問的な好奇心が喚起され、主体的に学ぶ力もついています」
意見が飛び交う教員研修が授業の質を高める
相互通行型授業はすべての教科で実施され、学びの根幹を成しています。アクティブ・ラーニングを特別授業などとしてではなく、日常的に展開することができた背景には、全員参加の教員研修があると言います。
「研修には必ず模擬授業が組み込まれており、教師役・生徒役となって授業のロールプレイを行います。『良いトリガークエスチョンとは?』『思考を深める議論を促すファシリテーションとは?』といったテーマを毎回掲げて、教員同士が熱く意見を交わし合います」
研修は今年で3年目。教員同士が切磋琢磨することによって、蓄積された相互通行型授業のノウハウやICT活用のスキルが日々の教育に生かされていると言います。
「生徒の劇的な変化を目の当たりにし、確かな手応えを感じています。将来、国際社会で活躍するとき、その実力のルーツが本校での学びであってほしいと願っています」
未来を生き抜く
自ら考え、議論を重ねる力

この日取材した授業は、「気体の性質」をテーマにした中1の理科です。水素や酸素の性質について復習した後、先生は「水素の中に炎を入れたらどうなるか」という質問を投げかけました。「消えてしまう」「炎が大きくなって元に戻る」「消えて、再び炎がつく」の三択からグループで一つの答えを選び、その理由も考えるように促します。
こうした「トリガークエスチョン」を提示し、生徒たち一人ひとりが道筋を立てて仮説を考えるのが相互通行型授業の特徴です。4人グループになった生徒たちは、自分の意見を発表したり、友達の意見を取り入れたりしながら、議論を重ねて答えを導き出していきました。
他者の考えを受け入れ
ひとつの意見を導き出す力

各グループの意見は、回答別に色分けされて電子黒板に表示されます。その後、グループの代表者が意見をプレゼンテーションすることに。「水素と酸素が結び付いて水が発生するから、炎が消える」「水素は燃えやすいから、炎が大きくなる」などさまざまな意見が飛び出します。生徒たちは互いの意見を聞いてから、自分の仮説が正しいのかをもう一度考え直します。他者の意見を受け入れ、自分の思考を揺さぶることで、考える力はさらに深まっていくのです。その後、先生が「消えて、再び炎がつく」という正解を動画と共に発表すると、「そうだったのか!」と生徒たちから大きな感嘆の声が上がりました。
未来を生き抜く
主体的な学び

正解発表後は、もう一度グループで「炎が消えて、再び炎がつく理由」を考え、話し合いを重ねました。その後、生徒自身による実験がスタート。グループ内で役割分担し、「水が入らないように気をつけて」「もっとゆっくり」など声を掛け合って実験を進めていきます。「水素を集気びんに入れた時、爆発して音が出たね」「びんの中で炎が消えたのは、酸素がなくなるからかな」など、生徒たちは活発に意見を交わします。五感を刺激する実験、意見交換による思考の深化により、主体的に学ぶ姿勢が確かに養われていました。
(この記事は『私立中高進学通信2016年1月号』に掲載しました。)
三田国際学園中学校
〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-16-1
TEL:03-3707-5676
進学通信掲載情報

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