私立中高進学通信
2015年10月号
The Voice 新校長インタビュー
かえつ有明中学校
新しい時代を生きる子どもたちのために
これからの時代にふさわしい力を育てる
革新を続ける注目校の教育とは

石川 一郎 (いしかわ・いちろう)
7歳でアメリカへわたり、小3の夏に帰国し、暁星小学校に編入。中学・高校も暁星で学び、早稲田大学教育学部へ進学。
大学で教員になることをめざし、大学卒業後は暁星国際中学校・高等学校に社会科教員として勤務。
その後、『かえつ有明』の開校直前に、変革の担い手として赴任。
同校が10年の節目を迎える2015年春、校長に就任し、現在に至る。
「未来からの留学生」に持たせる力を考える学校

私たちは、一人ひとり大切な存在である生徒たちを未来へ送り出さなくてはなりません。だからこそ学校は、彼らが生きる時代に役立つことを学べる場でありたいと思っています。
私は生徒たちのことを「未来からの留学生」と言っています。彼らにどんな力を持たせて未来へ送り出してあげられるのかということが、これからの学校は求められているのです。
世の中の変化が激しく、子どもたちが社会に出ていくときには今とは異なる価値観・異なる社会となっているでしょう。既に言い古されている感もありますが、今ある職業の多くはなくなっているのかもしれません。人工知能が人間の脳を超える時代も間近でしょう。
確かにAIはビッグデータを駆使して、人間の代わりに世の中に役立つことを次々と提供してくれるでしょう。しかし、果たしてそれですべての人間が満足できるのかというと、私は疑問です。これからは、人が生きるということはどういうことなのかという問いと向き合わなければならない、これまでとは違う、新しい時代がやってきているのだと思います。
新しい時代の学校は、人間が持っている感性といったものを教育の中に組み込んでいくことで、存在価値を高めていけるのではないかと考えています。
論理的思考力 プレゼンテーション能力を育む『サイエンス科』『プロジェクト科』
論理的思考力を培うベースは
クリティカルシンキング
クリティカルに捉える
↓(受信)
クリティカルシンキング
↓(発信)
わかりやすく伝える
本校は2006年に有明キャンパスに新築移転後、共学化し「答えのない問いに対して答える力」「実社会に直結する力」を身につけることを教育目標に掲げ、新しい時代に向けた価値のある学びを実践してきました。
その一つが、論理的思考力を磨く中学の『サイエンス科』、高校の『プロジェクト科』という「クリティカルシンキング」をベースとした授業の導入です。
どんな困難な問題にぶつかった場合でも、自分なりに考える軸を育むことが目標です。例えば多民族国家のアメリカでは、共通の指標がないと紛争の火種になってしまいますから、学校で徹底的に「クリティカル・シンキング」を鍛えています。一方、空気を読んで調和する日本人はその必要性が薄く、学校教育でも軽視されてきました。
しかしネット社会の到来で、意見がぶれる傾向が強まっている観があります。ネットに大量にあふれている情報を、自分なりの指標に基づいて、きちんと精査できる力の育成が急務になっているのです。
中学での『サイエンス科』、高校での『プロジェクト科』では、自らの興味・関心に応じて課題を設定し、それを解決するための情報収集・分析を行います。次にグループでのディスカッションなどを重ねて、自分たちなりの仮説を立てます。その仮説に対して、全体を俯瞰して何らかの論理的な破綻がないか、整合性の取れない部分はないか検証します。この作業がまさにクリティカルに考えるということなのです。そして、何よりも大切にしているのが、レポート、ポスター、写真、グラフなどを使ったプレゼンテーション、作品制作など、最終的な成果物に結実させることです。
また、そうした「クリティカル・シンキング」を鍛える授業を海外で経験してきた帰国生の受け入れも積極的に行っており、すでに中学では5人に1人が帰国生となっています。
本校が「I think...because…」が言える生徒にと言っているのは、海外の人たちは幼少の頃からこのフレーズで物を言う習慣があるので、私たちも海外の人に物を言うのであれば、相手に寄り添う必要があるからです。国際的ルールと言っても良いかもしれません。
帰国生に対しては、彼ら彼女らがこれまでに築いてきたスキルをさらに向上させることを目的として、国際バカロレアを参考にした英語教育の充実や、海外経験者、自分自身が帰国生という教員が学年に1人はいる(中学期)サポート体制の充実も図っています。
男女別学だからふくらむ男女それぞれの可能性
本校では、男女の発達段階の違いを考慮して、中学期は男女別学による授業を導入し、高校からは進路に合わせた男女混合クラスを編成しています。キャッチフレーズは『共学だけど授業は別学』というもので、男子は、『大きな夢を描かせ、創意工夫してチャレンジさせる』ことが目標です。一方、女子は、『手に届く目標を持たせ、着実に階段を上がらせる』ことを目標にしています。
高校生になると、学習面における男女差は、かえって良い刺激になってきます。それまでのんびりしていた男子が、女子を猛追する段階に入るのです。そういった男子の集中力は、逆に女子をさらなる高みへと向かわせる原動力になっています。
自分の可能性を引き出す機会がたくさんあるところが学校です。新しい友達や先生方との出会いに感謝し、楽しく学ぶことによって自分を豊かにし、可能性を広げていってほしいと願っています。もちろん大学受験も重要なのですが、それを突き抜けていくところに、未知の世界を生きていく力が備わっていくものと確信しています。
[学校沿革]
1903年に嘉悦孝が日本で初めての女子を対象とした私立女子商業学校を設立。2006年に有明キャンパスに新築移転し共学化。現校名になる。2013年には『共学だけど授業は別学』をビジョンに掲げた学びをスタート。2016年には有明移転10周年を迎える。
(この記事は『私立中高進学通信2015年10月号』に掲載しました。)
かえつ有明中学校
〒135-8711 東京都江東区東雲2-16-1
TEL:03-5564-2161
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 2015年度より校名変更 生徒のやる気を支え伸ばす「夢をかなえる」6年間秀明大学学校教師学部附属秀明八千代中学校
- 伝統と先進を融合させた独自の中高一貫教育で未来を見つめ自ら力を発揮する女性を育成する昭和女子大学附属昭和中学校
- 初めて6学年が一堂に会し走り、飛び、躍動した体育祭 感動はドームを包み込みやがて心は一つになった!狭山ヶ丘高等学校付属中学校
- 勉強も行事も大切!生徒みんなの力を結集した元気いっぱいパワー全開の体育祭文化学園大学杉並中学校
- GMARCH合格者が前年度の2倍 新しいキャリア教育で進路意識を変革日本工業大学駒場中学校
- 美術を通して積極性と認め合う心を育てる自発的な行動に目覚め、感性を鍛える1年間女子美術大学付属中学校
- 「サイエンス部」が全国大会に出場日本大学豊山女子中学校
- 全クラスでグローバル教育を拡充 伝統の姉妹校交流で国際人を育てる城西大学附属城西中学校
- 高度なアクティブ・ラーニングで実現 深い理解と表現力の向上 6年をかけて育む学力と自己発信力八王子学園八王子中学校
- 「グローバル・サイエンス力」を育成する教育姿勢と校風が反映された学びの場芝浦工業大学柏中学校
- TTによる英語の授業 浴びるように英語を聞いて養われる言葉の感覚武蔵野大学中学校
- 英語 英語を学ぶ楽しさを経験し生きた英会話が身につく授業東洋英和女学院中学部
- 自分たちのことは自分たちの手で「自治」が育む、生き抜く力自由学園(男子部・女子部)中等科
- 新たな学習環境で知識と教養を身につける「25歳の男づくり」サレジオ学院中学校
- 文武両道の精神を育てる環境 内面を磨き、高い技術をめざす!多摩大学目黒中学校
- ボランティア研修 日々の祈りを行動に移し他者に手を差し伸べる目黒星美学園中学校
- 恩師に憧れていた中高時代 夢がかなって母校の教員に品川女子学院中等部
- スポーツ祭典、トキワ祭、音楽コンクールの三大行事は人間的成長のチャンス 「探究女子」が取り組めばアイデア満載トキワ松学園中学校
- 桐蔭祭への意気込みと学校の魅力東京成徳大学中学校
- 英語 ネイティブ講師による授業で耳と口を鍛え、心の垣根を取り払う品川翔英中学校
- “英語を話して当たり前”の環境で世界基準の英語力と国際感覚を身につける三田国際学園中学校
- 英語に“浸る”毎日で使える英語を身につける浦和実業学園中学校
- めざすは哲学を持って生きる 本当の教養を身につけた国際人東洋大学京北中学校
- 国際デイ 世界への視野を広げる交流玉川聖学院中等部
- 新しい時代を生きる子どもたちのためにこれからの時代にふさわしい力を育てる革新を続ける注目校の教育とはかえつ有明中学校
- 新しい自分を発見する 旧交を懐かしむ 来場者6000人に魅せる“エドジョ”の祭典江戸川女子中学校
- 先生との距離が近いからすぐ聞ける、よくわかる!活気あふれる学び舎大妻嵐山中学校
- ハワイ・オーストラリア修学旅行 グローバル社会への発信力を鍛える藤村女子中学校
- 富士登山 「日本一高い山」へのチャレンジで身につく精神力と自信 目黒学院中学校
- オープンキャンパス 多彩な学びを体験共立女子中学校
- 正しい国際感覚を身につけ、人格を形成 外国人留学生と歩く関西歴史研修横浜創英中学校
- 18年の積み重ねがあるから講師やスタッフとの絆は強い!「3カ月語学留学プログラム」八雲学園中学校
- 本年度より中1授業にiPadを導入 中1担任と専門支援員がタッグを組んで挑むオリジナリティあふれるICT授業聖徳学園中学校
- 失敗には寛容に接し挑戦の機会を与え続ける星野学園中学校
- 中・高・大連携のオープンスクール!玉川学園(中)
- 生涯を通じて輝ける人になる 『学力・人間力育成プロジェクト』始動跡見学園中学校
- ニュージーランド3カ月留学 実践を通して英語は“武器”になる武蔵野中学校
- 日本を、日本人であることを世界に向けて発信できる生徒を育てたい国士舘中学校
- 答えのない問いの「納得解」を探す力をつける21世紀型教育聖学院中学校
- 給食試食会 在校生の保護者が引率して学校生活を“味わう”駒込中学校
- 新校舎 交流と一体感が生まれる空間青稜中学校
- 学校からの信頼を得て、生き生きと活躍する生徒会本郷中学校
- 新入生全員がiPadを使って1年半 学校生活に不可欠なサポートツールとして定着 桜丘中学校


