私立中高進学通信
2015年8月号
The Voice 新校長インタビュー
東邦大学付属東邦中学校
柔軟な想像力を得る体験に満ちた
中高6カ年の学校生活

松本 琢司 (まつもと・たくじ)
早稲田大学第一文学部で西洋史学を専攻。1979年、東邦大学付属東邦高等学校に奉職し、世界史、倫理を担当。
進路指導部部長、広報部部長などを経験後、2014年に高校教頭を経て、15年4月から現職に就任。
高い人間性を育む「過程」を重視した教育内容
本校は、東邦大学と共通した、「『自然・生命・人間』の尊重」が建学の精神です。それらを尊ぶ「人間性の育成」を教育の基本に据え、理系・文系を問わず幅広く学び、知識・教養を磨く、リベラルアーツ型の教育を実施しています。さらに、学習内容の幅を広げるだけでなく、できないことや疑問点があれば、その原因を深く考えるプロセスを最重要視するという教育内容です。実験や観察、実習や演習を豊富に用意し、生徒が発見や気づきに触れられる機会をふんだんに設け、我々教師は、それを見守りつつも子どもたちが抱えている問題を見つけ解決しながら、自立や成長を促しています。
中高で行っている「自分探し学習」では、「読書マラソン」、「数学トレーニングマラソン」など、成長に応じたさまざまなプログラムを用意しています。文理を問わない内容で、生徒が自身の可能性を探ることができるものです。またこの学習を通して、社会の中で生かされている自分を発見し、自分がどう社会へ恩返しをできるかという、社会と自分を見つめられる感性の育成もめざしています。
今の子どもたちは、体験不足のために心身のバランスが悪くなっていることに危機感を持っています。私が考える「人間性の育成」とは、「総合的な人間力」であり、自立性や主体性、多様性などを包括した柔軟な想像力が必要です。
現代は携帯電話の普及など、想像力の育成を阻害する要因が日常生活の中にあふれています。人間関係を築くことや他人との関わりを苦手とする子どもが増え、コミュニケーションが一方的になっているように感じます。 “思いやりの心を持つ” というのは、自分のことだけでなく、他人の立場を想像し、立場を変えて物事を考えられることです。
ビジネスや政治の交渉事でも相手の状況を理解することが必要です。中高の6年間では人間関係を構築できる力を強化することが急がれます。「想像力の育成」には、五感を使った経験が大切です。中学では、その経験を補うべく「自然体験学習」を2年間実施しています。
知識は体験を通じることで「智恵」となりますが、現代の子どもたちにとって、知識は単なる情報になっています。私は全校生徒に話す機会には、「生き方を問う授業」という意識で、生徒たちへ疑問を呈しています。例えば今の子どもたちは、情報の対処が非常に速く、関心事はより知ろうとしますが、興味が無ければ切り捨てます。「知らないこと」を恥じることなく、知ろうともしないことは由々しき事態です。生徒たちへ「すぐオン・オフを判断しない」、「自分が知らないことに謙虚になる」ことの大切さを伝えています。快適なことばかり追求していると、人間は成長しません。生徒たちにとって、私のことばは耳障りのいいものばかりではないでしょうが、気づきや考えるきっかけになるといいですね。
進路選択を支える教育と完全中高一貫校化の理由
東邦教育の3つのキーワード
- 「自然・生命・人間」の尊重(建学の精神)
宇宙や自然を畏敬し、その一部である生命を大切にして、科学技術の進歩を自覚し、人間の心の向上をめざして生きること。 - 自分探し学習
生徒自らが気づき、考え、行動することを身につけるため、中高で各種プログラムを実施。自分の身の回りを見直すことからはじめて世界へと視野を広げていく。 - 学問体験講座
中高大連携で行われ、最先端技術に触れる自由参加の教養講座。多くの体験の機会があり、得手不得手だけでない進路選択のきっかけとなっている。
本校では、研究職や医師、あるいは弁護士などの専門職を志望する生徒が多いことが特徴です。大学に医学部があることが大きな要因かもしれません。入学後の授業や「自分探し学習」、そしてそれに続く専門性の高い「学問体験講座」などのカリキュラム、医師志望の友人や先輩に影響されたりしながら、各々が希望を抱くようです。
高い専門性を支えるためには、山にたとえれば、広い裾野としっかりとした土台が必要です。
勉強だけでなく、部活や学校行事などに一生懸命取り組み、人間関係を鍛えることが重要です。特に宿泊行事などで、生徒たちが一緒に取り組むさまざまな体験は、本当に大事なものです。
中高時代はいちばん大切な時期であり、この時期のみんなで協力して成し遂げる経験が、裾野や土台となり、「人間性の育成」につながり、将来を支えるものとなります。
本校は平成29年度より、完全中高一貫校となります。時代の要請に応える人材の育成には、6年間という長い時間をかけて、じっくりと育てていくことが必要だと考えました。
これまで高校から2クラス増えていた分を増やさずに、教員の数はそのままで、ていねいに手をかけて生徒を見ていくことができます。人間関係の構築は、子どもたち自身が行っていかなければなりませんが、教員は見守り、時にはほんの少し背中を押すこともあるでしょう。大勢の目があったほうがいいのです。
また野球部などの高校にしかなかった部活動を「同志会」という形ではありますが、中学に取り入れ、現在の中学生から入れるようにしました。
新しいカリキュラムでこれまでといちばん大きく変わる部分は、中3から5教科が高校の内容に入り、高2で文理分けになることです。大学受験に対応できる時間を十分に取りながらも、プロセス重視で行っていくことは、今後も変わりません。
本校には60年を超える伝統があり、それを継承しながらも時代を見据えた、地に足の着いた教育を行っていきます。
[沿革]
1925年、額田豊、晉兄弟により設立された帝国女子医学専門学校を前身とする。戦後新制大学となり、52年に高校、61年に中学が設立された。伝統的に医・薬・理工など、理系の道へ進む生徒が多いが、近年は文系大への進学実績も伸長。2017年度より高校募集を停止し、完全中高一貫校化。
(この記事は『私立中高進学通信2015年8月号』に掲載しました。)
東邦大学付属東邦中学校
〒275-8511 千葉県習志野市泉町2-1-37
TEL:047-472-8191
進学通信掲載情報

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